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神保町の新ランドマーク「ドンキ」が僅か半年ほどで閉店!その理由は?

10/9(月) 16:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 書店街・古書街として全国的に有名な「神田神保町」にあのディスカウントストア「ドン・キホーテ」が誕生したのは今年の2月のこと。24時間営業のドンキ出店は多くの書店主や神保町ファンにとって衝撃的なニュースとして捉えられ、賛否両論を巻き起こしたことも記憶に新しいが、その「ドン・キホーテ神保町靖国通り店」が早くも10月13日で閉店してしまうという。

⇒【写真】「神保町の歴史」コーナー

 わずか半年ほどでの閉店。その裏には一体何があったのか。

◆使いづらい店内に加えて「昼型の街」が仇?

ドン・キホーテ神保町靖国通り店(以下、ドンキ神保町店)は今年2月17日に開店。駿河台下交差点の「ヴィクトリアゴルフ神田店」跡(ヴィクトリアゴルフは御茶ノ水店として移転)への出店で、向かいにあった大型書店「書泉ブックマート」跡が靴店「ABC-MART」になったことと合わせ、書店街やスポーツ用品店街として長年親しまれた街の「大きな転換点」として話題となった。ドン・キホーテは建物の1~6階に売り場を擁し(7階はトイレとバックヤード)、売場面積は999㎡で、24時間営業であった。

 閉店の理由を探るため、実際にドンキ神保町店へと足を運んでみた。

「ドン・キホーテ」の看板は駿河台下交差点に面する建物の屋上(8~9階レベル)に取り付けられており、まさに地域の新たなランドマークと言えるほど目立つ存在だ。

 いざ店内に入ると、かつてのゴルフ用品店時代の面影は一掃されており「古書の街」に因んだ装飾が多くなされている。階段には「神保町の歴史」コーナーなども設置され、明るく整然とした店内のようすも相まって、従来の「都心のドンキ」のイメージとは一線を画す印象を受ける。

 しかし、閉店セールが行われる店内を巡っていくうちに、いくつかの「問題点」が浮かび上がった。下層階は多くの客の姿があったものの、(閉店セールで一部売場が閉鎖済みとはいえ)上層階に向かうほど客はまばらだ。実はこのビル、エレベーターはあるもののエスカレーターが全く設置されておらず、上層階へのアプローチが良くない。これでは目的買い以外の客を上層階へと呼び込むことは難しく、売場間の回遊性も良くなかったであろう。

 また、ワンフロアの狭さもその使い勝手の悪さに追い打ちをかける。ワンフロアあたり売場面積は僅か100㎡前後で、これは一般的なコンビニ程度。イートインを併設した近年の郊外コンビニと比較すると狭く感じられるほどだ。かつてのドンキはこうした狭小店舗において「圧縮陳列」を用いることで品数の豊富さを印象づけていたが、「21世紀型」の明るい店内であるドンキ神保町店ではそうした手法はあまり用いられておらず、買い物がしやすい反面、品揃えがいいとは言えない状態である。

 さらに、神保町は夕刻を過ぎれば多くの書店やオフィスから人波が消えてしまう。「深夜営業」をウリにすることでコンビニなどの客層を奪ってきたドン・キホーテにとっては、こうした「昼型の街」を攻略すること自体難しかったことは明白だ。終電間際にもう一度同店を再訪してみると、見事に1~2階以外には客の姿が見当たらなかった。

◆「経営判断が早い」ことが特徴のドンキ、過去にも早期閉店が

 僅か半年ほどでの閉店が話題となったドンキ神保町店であるが、ドン・キホーテが「出店後すぐに閉店」した例はこのほかにも複数ある。例えば、2008年2月に開店した「ドン・キホーテ ウエルタ新宮店」(福岡県新宮町)は開店からわずか8ヶ月後の同年10月に閉店。今年に入っても、2016年4月に開店したばかりの「ドン・キホーテ大曲店」(秋田県大仙市)を開店から約1年後の2017年6月に閉店させている。また、都内においても、経営破綻した寿司チェーン「びっくり寿司」本店跡地に出店した「ドン・キホーテ等々力店」(世田谷区)を開店から1年半後の2012年1月に閉店させており、こうした「経営判断の早さ」は同社の特徴の1つであるといえる。

 一方で、ドンキ神保町店の建物は現在ドン・キホーテグループが所有しているということで、今後は別業態の店舗や同社のオフィスとして活用される可能性も高い。折しもドン・キホーテは今年2月より一部エリアで注文から58分以内に配達を行う有料サービス「マジカ・プレミアム・ナウ」(majica Premium Now)を開始したばかりであり、ドンキ神保町店跡を都心における配送事務拠点として活用する可能性もあるほか、人通りの多い交差点に面する下層階には業務資本提携を結んでいる「ユニー・ファミリーマートHD」のコンビニ「ファミリーマート」や小型スーパー「ミニピアゴ」を出店させることや、全く別業種の店舗へと貸与することも考えられる。

 神保町では「書泉ブックマート」(ABC-MARTが居抜き出店)や「岩波ブックセンター信山社」(破産)、「ブックハウス神保町」(規模を縮小してスタッフが再興)などといった、地域を代表する有名書店の閉店が相次いでいる。そうしたなかでの「24時間営業のドンキ出店」は変わりゆく神保町の象徴的な出来事であり、賛否両論を巻き起こした訳であるが、僅か半年ほどでの撤退となれば閉店を惜しむ声も少なくない。

 駿河台下交差点のランドマークは今後どうなるのか――古書街の期待と不安を背負った「不夜城」は、10月13日にその幕を下ろす。

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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最終更新:10/9(月) 16:00
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