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田原総一朗「『安倍退陣論』まで出た小池劇場の失速」〈週刊朝日〉

10/11(水) 7:00配信

AERA dot.

「希望の党」を立ち上げた小池百合子東京都知事。ジャーナリストの田原総一朗氏がこれまでの「小池劇場」を振り返る。

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 9月29日付の朝日新聞の社説は、安倍晋三首相による衆院解散についてこう批判した。

「そもそも臨時国会は、野党の憲法53条に基づく召集要求を、3カ月余も放置した末にようやく開いたものだ。なのに議論を一切しないまま解散する。憲法を踏みにじり、主権者である国民に背を向ける行為だ。首相の狙いは明白である。森友学園・加計学園の問題をめぐる野党の追及の場を消し去り、選挙準備が整っていない野党の隙を突く。今なら勝てる。勝てば官軍の『権力ゲーム』が先に立つ『自己都合解散』である」

 野党はもちろん、多くの国民が今回の解散を、このようにとらえただろう。

 民進党は議員が次々に離党しまとまらない。一方、若狭勝氏、細野豪志氏らの「小池新党」もビジョンらしきものがなく、有権者の関心を呼びそうにない。それに民進党と「小池新党」が票を食い合えば、自民党にとって有利になる。安倍首相は、このように判断したのだろう。

 ところが、安倍首相が予想しなかった事態が生じた。小池百合子東京都知事が「希望の党」を立ち上げ、その代表になると宣言したのだ。安倍首相が解散を表明したのと同じ9月25日のことだ。この瞬間からメディアは小池一色になった。

 小池百合子という存在は余人にはないカリスマ性があり、小池氏の存在自体がビジョンとなる。都議選のとき、都民ファーストの会には具体的な政策らしきものは何もなかった。それでいて、知名度も実績もない候補者たちが、小池都知事が率いているということだけで、なんと49人も当選したのであった。自民党は23議席と惨敗だった。

 26日の夜には、小池都知事と民進党の前原誠司代表が極秘会談をして、事実上、民進党が希望の党に合流することを決めた。つまり、民進党の衆院議員はすべて希望の党から出馬することになったのである。

 小池氏は衆院の過半数である233議席を確保するための候補者を擁立すると表明した。民進党が希望の党に合流することは、安倍自民党にとって大きな脅威になる。安倍首相も強い衝撃を受けたはずだ。

 自民党内部でも「公明党と合わせても233議席の獲得は無理かもしれない。220台に落ちれば安倍退陣も起き得る。そのとき、安倍氏に代わる首相は誰が良いか」という話題まで出たということだ。安倍首相は公明党と合わせても233議席を獲得できなかったら辞任する、と表明しているのである。

 ところがその後、小池代表は「(民進党から)全員を受け入れることは、さらさらない」と言い切った。候補者を選別するというわけだ。

 希望の党は集団的自衛権の行使にも憲法改正にも賛成している。だから、こうした基本的な考え方の異なる議員は受け入れない。つまりリベラル派は外すということだ。そこで民進党内で混乱が生じ、枝野幸男氏は立憲民主党を立ち上げると宣言した。同党には数十人が参加するのではないかとみられている。

 立憲民主党が社民党や共産党と連携することで、衆院選は三つの勢力が争う構図となった。安倍自民党には大義なき解散という疑惑がつきまとい、希望の党は政策が明確でなく、自民の補完勢力になるのではないかとの疑いが生じる。さて、有権者はこの選挙に、どのような判定を下すのか。

※週刊朝日 2017年10月20日号

最終更新:10/11(水) 10:10
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