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デンマークの白人男性・モートンがイスラム教に改宗し、やがてスパイとなった理由[橘玲の世界投資見聞録]

2017/10/12(木) 21:00配信

ダイヤモンド・ザイ

 アンナ・エレルの『ジハーディストのベールをかぶった私』は、フランス人の女性ジャーナリストがジハーディストとの結婚に憧れる若い(白人)女性に扮し、インターネット上でIS(イスラム国)幹部と接触を試みた稀有な記録だ。

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 [参考記事]
●ヨーロッパの若い女性がISに渡ろうとする理由とその末路


 それに対してモーテン・ストームの『イスラム過激派二重スパイ』は、デンマークの地方都市に生まれた白人男性がイスラーム原理主義に傾倒し、ウサーマ・ビン・ラーディンとつながるアルカーイダ幹部と接触をもち、その結果、イギリスの情報機関MI5(軍情報部第5課)やアメリカのCIA(中央情報局)にスパイとして雇われることになった経緯を語った、これもまた稀有な証言だ。

デンマークの貧しい家庭に生まれたモーテンが犯罪者へと堕ちていく過程

 モーテンは1976年にデンマーク、シェラン島の西端にある人口2万5000人ほどのコアセーで生まれた。労働者階級の父親はアルコール依存症で4歳のときに家を出てしまい、母親の再婚相手は陰気な男で、妻や義理の息子モーテンに繰り返し暴力を振るった。

 13歳のとき、モーテンははじめて強盗を試みた。友人が父親の22口径のリボルバーを持ち出し、目出し帽をかぶって、安煙草を売る老人の店を襲ったが抵抗されて失敗し、近くのテイクアウトの料理店に押し入ったところ、カウンターにいたのは家族ぐるみでつきあっていた女性だった。たちまち「モーテンなの? 」と見破られ、慌てて逃げ出した腹いせに道端にいた年配女性のハンドバッグをひったくったところ、女性は転倒して腰の骨を折った。

 それが悪循環のはじまりで、学校でも問題児だったモーテンはADHD(多動性障害)の子どものための「特別支援学校」に送られた。教室での授業は1日2時間だけで、あとはチェーンソーで森の木を切ったり、へとへとになるまでサッカーさせたりして「障害のある」子どもを健全な市民に育てようとする施設だが、そこですら廊下にホースを引き込み放水するような悪行を繰り返すモーテンをもてあまし、生徒を退学処分できないはずの学校を退学させられることになる。

 16歳で学校から路上に生活の場を移したモーテンは、「レイダーズ」という不良グループに加わった。アメリカンフットボールのオークランド・レイダーズのロゴ入り帽子かぶったグループのメンバーは、主にパレスチナ人、トルコ人、イラン人などのムスリムだった。モーテンは彼らとつるんで、ありあまる時間を安ビールを飲むことと手当たり次第女の子をモノにすることに注いだ。ムスリムの友人たちは、反移民や反イスラームの主張には反発したが、戒律にはしばられていなかった。

 アマチュアのボクシングクラブに通っていたモーテンは、トレーナーから将来性を見出されたものの、女の子をめぐるトラブルで相手の男性を暴行したことで警察に捕まり、少年院に4カ月送られることになる。

 少年院で18歳の誕生日を迎え、出所すると運転免許が取得できるようになっていた。するとボクシングジムのトレーナーは、煙草の密輸ビジネスをやらないかとモーテンを誘った。デンマークは消費税率が高いので、税率の低いポーランドで3分の1に価格で購入した煙草をドイツやデンマークで売りさばくだけでかんたんに儲かったのだ。

 こうして金回りがよくなったのも束の間、バーで絡んできた酔っ払いを殴り倒したことでまたしても逮捕され、暴行で半年間、刑務所に服役することになる。服役中、モーテンはバンディドスという地元の暴走族の幹部と知り合い、出所後は地元コアセーの支部リーダーとなって、毎日のように路上やナイトクラブで乱闘沙汰を繰り返した。

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最終更新:2017/10/12(木) 21:00
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