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トヨタも出資する大学発AIベンチャー、「PKSHA Technology」に注目すべき理由

10/27(金) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 2017年9月22日、東京証券取引所マザーズ市場へ上場(IPO)した銘柄が注目を集めている。

 それは「PKSHA Technology(パークシャ テクノロジー)」だ。2012年10月に設立した同社は、従業員数30名(2017年6月)という少数精鋭で、人工知能技術分野のアルゴリズム(言語解析、画像認識、深層学習等)をライセンス販売するアルゴリズムライセンス事業を展開している。最先端のアルゴリズム開発から各種ハードウエア/ソフトウエアへの実装までをワンストップで行っているのが特長だ。

 パークシャのIPO初値は5,480円。公開価格(2400円)の2.3倍であった。その後、株価が14,000円を超えることが何度かあり、10月25日の終値は11,310円である。なお、PER(株価収益率)は、628倍である。このように、パークシャのIPOはこれまでのところ成功し、株価は爆騰している。

◆大学発の注目ベンチャー 

 株価のことはいったん横に置いておき、パークシャとは、どんな会社なのかをみてみよう。

 IPO以外で、同社にまつわる今年のニュースとしては、「大学発ベンチャー表彰2017」において「文部科学大臣賞」を受賞したことが挙がってくるだろう。

 「大学発ベンチャー表彰」は、国立研究開発法人科学技術振興機構及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構主催にて、大学等の成果を活用して起業した大学発ベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーを表彰し、かつ、特にその成長に寄与した大学や企業を表彰するものであるが、今年、パークシャは「文部科学大臣賞」を受賞した。

 受賞理由は、「様々な大学の研究室の知恵を結集し、人工知能領域のアルゴリズムサプライヤーとして、大手企業のインフラを活用しながら、各領域のトップ企業へアルゴリズムを提供するなど大企業との連携を元にした急速な成長等が高く評価された。今後国内のみならずグローバルな活躍を大いに期待する」とされている。(参照:大学発ベンチャー表彰事務局)

 また、8月にはトヨタ自動車が同社に対して10億円の出資をすると報じられたことも注目を集めた。(参照:日経新聞)

◆東京大学松尾研究室とは?

 パークシャの技術顧問は、東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊氏である。(参照:松尾研究室)

 パークシャ代表取締役の上野山勝也氏は、ボストン・コンサルティング・グループ出身でグリー米国法人にも関わった人物だが、松尾研究室の博士課程在籍時に、機械学習に関わる研究に従事した松尾研究室OBである。また、パークシャ取締役事業開発本部長の山田尚史氏も、松尾研究室出身で、上野山氏の後輩である。

 松尾研究室は、“人工知能、ウェブ、ビジネスモデルの研究を軸に、本格研究から社会実装まで一気通貫で活動を行う”ことを掲げ、。“ディープラーニングをはじめとする新しい人工知能技術で大きなブレークスルーを生み出すことを目指している”という。

 また、“知識を研究室に埋没させず、実社会の成果として結実させる事”を目標としており、パークシャだけでなく、グノシー、READYFOR、オーマなどのベンチャー企業に積極的に協力し、マネーフォワード、Finc、BAI(IGPIの子会社)に技術サポートをしているという。(参照:松尾研究室)

 一般のビジネスマンにとっては、上野山氏や山田氏よりも、機械学習や深層学習(ディープラーニング)の分野での著書がある松尾豊氏の方が知られているかもしれない。松尾氏には、「東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」」(塩野 誠氏との共著、KADOKAWA/中経出版)、「人工知能は人間を超えるか」(角川EPUB選書)、「人工知能はなぜ未来を変えるのか」(塩野 誠氏との共著、KADOKAWA)などの著書がある。

 こうした最先端の研究者がビジネスの最前線に立つことこそが同社の競争力の源泉である。「成長可能性に関する説明資料」(参照:パークシャ社資料)によると、パークシャは、自社の競争優位性は、筆者が意訳すると、「人」にあると言っている。

 エンジニア・研究者コミュニティへのアクセスをもとに、大多数が社員紹介による採用(リファラル採用)となっていること、また、デジタル技術に精通し、既存業界を巻き込み価値創造できるエンジニア的人材が、アカデミアと協働しつつその知見を社会実装し活躍できる場を構築しているとしている。

◆各界からの熱い視線

 パークシャは、機械学習/深層学習技術・自然言語処理技術を利用したアルゴリズムソフトウエア等を複数開発しており、顧客企業のニーズに応じたアルゴリズムソフトウエア等の開発・提供を行っている。

 パークシャの売上は、アルゴリズムソフトウエア等を顧客企業のソフトウエアまたはハードウエアに組み込む際の初期設定等に係る月額のイニシャルフィーと、初期設定後(顧客企業への導入後)のサービス利用料及び保守運用等に係る月額のライセンスフィーから構成される。(参照:「東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」)

 機械学習/深層学習技術・自然言語処理技術を利用したアルゴリズムソフトウエア等の活用ニーズは高まると一般に考えられている。このことに疑問を持つ人はいないだろう。

 富士キメラ総研「2016 人工知能ビジネス総調査」(2016年11月28日発表)によると、2015年度のAIビジネスの国内市場は1,500億円。2020年度予測が1兆20億円、2030年度予測が2兆1,200億円である。2030年度予測に関しては、その内訳は、規模が大きい順から、需要予測2,015億円、コールセンター1,870億円、映像監視1,600億円、コミュニケーションロボット600億円、ネットワークセキュリティ390億円となっている。

 従って、アルゴリズムソフトウエア等を開発・提供するパークシャが成長企業であることは容易に想像できる。実際、パークシャの売上は現在、小規模ながらも成長している。パークシャの売上は、2013年1,000万円であったが、2017年は第3四半期累計で7億400万円へと拡大している。

 注目すべきは、パークシャが第一期の2013年から継続して黒字企業であること。営業利益、当期純利益ともに増加を続けている。パークシャは機械学習技術・自然言語処理技術・深層学習技術を中心に複数のアルゴリズムモジュールを開発しているが、対話、推薦、画像認識、強化学習、エラー検知、予測などのアルゴリズムモジュールが具体例となる。

 アルゴリズムの進化、および、対象領域の拡大という2次元の事業領域の拡大余地は大きい。この「大学発ベンチャー」に注目したい。

<文/丹羽唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/27(金) 8:50
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