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結婚できない男3000万人超の中国で狂い咲くラブドール産業

11/11(土) 7:00配信

NEWS ポストセブン

 性産業、とくにAVや「大人のおもちゃ」といった分野では、日本は世界でも独特なポジションを築いてきた。日本のクールジャパンは、実はこうしたアダルトコンテンツにも支えられていたわけだが、昨今、その構図が崩れてきたという。ソフト戦略を重視し始めた中国共産党の進撃は、凄まじい。ノンフィクションライターの安田峰俊氏がレポートする。

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 パソコンに向かう青年たちと、机の上に置かれたロボットのサンプルや雑多な機械類。そんな研究室の一室で、セーラー服姿のコケティッシュな美少女が片膝立ちで微笑んでいた。

 透き通るような肌に、あどけない瞳と口元。膝上10cmのスカートから伸びる細い足。白衣の男が親しげに声をかける。

「宝貝、ニーハオ。君に彼氏はいるのかい?」
「面白い質問ね。ふふふ」

 表情を動かさない彼女の背後から人工音声が響いた。日本はどんな国、空はなぜ青いの……? 質問を次々と聞き取り、答えていく。

「君は人類をどう思う?」
「みんな敵です。すべてを滅ぼしちゃいますね」

 目を丸くした私に、「彼女」の開発元企業CEO・楊東岳氏(34)が笑いかけた。

「びっくりしました? わざとユニークな回答をするようプログラムしておいたんですよ」

 ここは遼寧省大連市の甘井子区。郊外の田舎町にある大連蒂艾斯科技発展股扮有限公司(EXDOLL)の研究室内だ。2013年設立の同社は、いまや中国で有数のラブドール(高級ダッチワイフ)製造企業として知られている。

 EX社は今年8月18日、中国の新興企業向け市場・新三板に、ラブドール業界では世界初となる株式上場を果たした。従業員数は130人で、約3000平方メートルの工場を自社で保有。1か月あたり400~800体を出荷する。各商品の価格は2980~2万3800元(約5.1万~40.5万円)ほどだ。

 一般的に言えば、モテない孤独な男性との親和性が高そうに思えるラブドールは、大人のオモチャのなかでも特に後ろ暗いイメージが漂う。そうした商品を扱う会社が、コンプライアンス面の制約も多い株式上場に踏み切り、「表の世界」におどり出たのはなぜか?

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