ここから本文です

シンガー氷川きよしの力量を「ドラゴンボール」で思い知る――近田春夫の考えるヒット

11/15(水) 11:00配信

文春オンライン

『限界突破×サバイバー』ドラゴンボール超(スーパー)×氷川きよし/『未来の僕らは知ってるよ』Aqours



 氷川きよしがアニメのオープニング曲を請け負うに至った経緯などなど、無論この欄のあずかり知らぬところではあるが、拝聴した結果、作品そのものに関しては、率直にいってなかなか興味深いものを覚えた私なのだった。

 第一は、これがまったくもってアニメ側に寄り切った作りになっていたことである。

 ハイレベルだが匿名性の強い――案内がなければこれを誰が歌っているか当てられる人が何人いるか――まさに“アニソンマナー”とでも呼びたくなるようなスタイルに徹した、専門職顔負けな氷川きよしのボーカルしかり、この曲はそういったジャンルの音楽として、実に普通に大変によく出来ているのだ。とにかく、氷川きよしの最新シングルである以前に、何かである以前にこのCD、まごうことなき「アニソン」なのである。

 という訳で、聴き進むうち色々と思うことが俺の脳裏には渦巻いていった。

『限界突破×サバイバー』と、一般に演歌と認められるような音楽を、楽典的に比べたとき、二者間に目立つ大きな違いといえば、ひとつはビート、リズムといった時間軸にまつわる要素の重要性であろう。

 ただただ演歌を歌うだけなのであれば、おそらく歌い手もこの楽曲に求められるほどの厳密なタイミングのスキルなど要求されまい。

 瞠目せずにいられないのが、そうした、普段の舞台ではほとんど発揮されることもない、ポップスやロック、洋楽のフィールドといって構わぬ部分での、演歌歌手氷川きよしの表現コントロールの力量である。その、むしろ水を得た魚といっていいかもしれない歌いっぷりに、そういえば過去にはたしかこの人はロックびとだった? とかいう逸話を思い出した。

 聴けば聴くほど今回の氷川きよし。あのお馴染みの、クセのある歌い方/発声とは相当にかけ離れた、自然体というのかなんとも素直な唱法披露である。実はこちらがシンガー氷川きよし本来の姿なのかも知れぬ……かどうか、そのあたりのことは、他に詳しい方もおられるでしょうから検証その他譲るとして、さて俺には素朴な疑問が残る。

 これって氷川きよし秋の新曲ですよね? てぇことは、これからしばらく、いわゆる営業てか公演でやらない訳にはいかないナンバーである。その場合、アレンジなども含め、ステージ構成的には一体どういった位置付け、扱いになるんだろうか。それこそ、正しい用い方として、俺にはそのことが大変“興味深い”。

 もうひとつ。氷川きよしのお客さん、九割ぐらいはホンモノのおばあちゃんだよ。彼女達、果たしてドラゴンボールの世界なぞ受け入れてくれるんだろうか? あっ! ひょっとしてこの曲、これからは高齢者は切り捨てますよっていう宣言なの? いやはや興味深いプロデュースである。

 Aqours(アクア)。

 曲も歌詞も歌唱も、アニメ好きの心を直撃だね(笑)!

近田 春夫

最終更新:11/16(木) 18:30
文春オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

世の中を驚かせるスクープから、
毎日の仕事や生活に役立つ話題まで、
"文春"発のニュースサイトです。