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北朝鮮が示唆する「電磁パルス攻撃」という脅威

11/15(水) 8:09配信

WIRED.jp

北朝鮮が示唆した「電磁パルス(EMP)攻撃」への懸念が増している。米上空で実行されれば送電網が破壊され、1年以内に米人口の最大90パーセントが死亡するという指摘もあるが、こうした予測はどこまで本当なのか。脅威の実態に迫る。

北朝鮮の核実験が示した「実力」と、限られてきた「選択肢」

北朝鮮が示唆した「電磁パルス(EMP)攻撃」への懸念が増大している。その理由を理解するのは簡単である。EMPの影響を研究してきた専門家たちによると、まさにこの世に終わりのような事態がもたらされる可能性がある。送電網が破壊され、1年以内に米国の全人口の最大90パーセントが死亡するというのだ。

北朝鮮政権は2017年9月、EMP攻撃の恐怖について警告してみせた。どうやら北朝鮮は、攻撃を成功させるだけの能力を備えているようなのだ。

その原理を大まかに説明すると、高層大気圏で核兵器を爆発させるとEMPが発生し、クルマから街灯まであらゆる電子機器が損壊する恐れがある。送電網そのものも被害を受ける。しかしその程度については、誰に聞くかによって答えが変わってくる。

冒頭で触れた「90パーセント」という恐るべき数字は、08年の議会公聴会で共和党下院議員(当時)のロスコー・バートレットが示したもので、EMPの権威でもある物理学者ウィリアム・グラハムも支持した。バートレットはこの数字をウィリアム・フォースチェンの『One Second After』というSF小説から引用した。

電磁波が襲ってきた場合、その発生源が北米上空で起きた水素爆弾の爆発だろうが大規模な太陽フレアだろうが、日常生活には確実に影響が生じる。ただ被害の大きさは不明だ。少なくとも北朝鮮からの攻撃に関して言えば、電磁波が実際にどのような事態を引き起こすのかよくわからないという事実は、われわれの不安を完全には消し去らないにしても、ある程度は和らげてくれる。

大停電か破滅か

まず、EMPが送電網に影響を与える可能性は低いということを理解すべきだ。電磁波攻撃の恐怖を叫ぶ人たちは、人口のほとんどが死に絶えると本気で信じている。一方で、そんなものはSFの世界の物語に過ぎないと切り捨てる意見もある。

しかし、両者の中間にある見方を忘れてはならない。重要なのは、基礎科学においては意見の不一致はほとんどないという点だ。

実際、米国とロシアは歴史上、これを証明してきた。米国は1962年、太平洋上空386kmで「スターフィッシュ・プライム」として知られる1.4メガトン級の核実験を行なった。爆発で生じたEMPによって1448km離れたハワイで数百の街灯が消えたほか、電話にも影響が出た。ロシアも同時期にカザフスタンで核実験を行なったが、482kmにおよぶ通信回線の混乱などが発生したという。証拠も残っている。

米国へのEMP攻撃の脅威をめぐる議会委員会のメンバーで、この分野の著作もあるピーター・プライは「EMPの危険性を理解するために高高度核実験をする必要はない」と言う。プライは地下核実験やEMPシミュレータから得られたデータはすべて、壊滅的な状況が起こる可能性が高いことを示唆していると指摘する。

プライは「クルマを運転中にラジオをつけていて、高圧線の下を通ると音が消えるが、電線の下を抜けるとまた聞こえるような経験をしたことがあると思います。これはラジオに障害を起こす電磁場を通過したわけです」と説明する。

「その電磁場が、例えば10億倍の強さだったとしましょう。何が起きるか想像するのにアインシュタインである必要はありません。ラジオが一時的に聴こえなくなるだけでなく、完全に壊れてしまいます。クルマのほかの電子機器も同様です。こうしたことが局地的ではなくアメリカ全土で起こると想像してみてください」

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最終更新:11/15(水) 8:09
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