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財政破綻のベネズエラにロシアが接近。債務再編とのバーターでロシア軍艦入港が可能に

11/15(水) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 ベネズエラは財政破綻寸前にある。それを回避すべく、マドゥロ大統領は負債の再編の為のプランを担当省に依頼していた。その一方で、ロシアそして中国と交渉を進めて打開策を模索しているようだ。

 ベネズエラの外国からの債務は1500億ドル(18兆円)に達するという。今年末までに140億ドルから180億ドル(1兆6800億円から2兆1600億円)の間での返済が迫っているが、それを待つことなく近く支払い不能に陥ると予測している専門家もいるという。

 ところが、11月8日と9日に『EL UNIVERSAL』を始め数紙が30億ドル(3600億円)分の負債の再編にロシアが応じることを報じた。

 どうやら、この負債の再編と引き換えに、ロシアはベネズエラの港にロシアの軍艦が一度に3隻、15日間の停泊が出来るようになることを要望したようである。(参照:「El Mundo」)

◆米ロ双方に戦略的に重要なベネズエラ

 ロシアのアメリカ大陸における戦略上のプランはニカラグア、キューバそしてベネズエラに軍事基地を設けることである。ニカラグアは既にその希望が叶えられている。そして、ベネズエラも今回のロシアの要望を受け入れるようになれば、将来的にもマドゥロ大統領が政権に就いている限りロシア軍事基地の建設の可能性は高い。

 問題はキューバである。旧ソ連とキューバは強い絆で結ばれていた。ロシアはキューバを米国を睨む重要な軍事基地としていた。しかし、現在のキューバ政府は、ロシアからのプランに賛同する姿勢をまだ見せていないという。(参照:「Hispan TV」)

 ラウル・カストロ議長にとって、現在のトランプ大統領はキューバとの関係発展には関心は薄いが、一旦米国と国交の復活を果たした以上、カストロはロシアと米国との間でバランスを取った外交を展開したいようである。その意味で、ロシアの軍事基地をキューバ国内に建設することは都合が良くないと見ているようである。

 原油を豊富に埋蔵しているベネズエラは、米国にとって地政学的にも重要な国で、隣国ブラジルとコロンビアを介してベネズエラの政権の転覆を計りたいと望んでいるようであるが、オバマ前大統領の時からその実現を見ていない。

 ところが、ベネズエラに関連して米国にとって不安材料がひとつ浮上している。ベネズエラの地方紙「Panorama」を始め複数のスペイン語メディアが報じたところによれば、中東のヒズボラの隊員とイラン人がベネズエラに入国しているという情報をCIAが掴んでいるというのである。結局、ベネズエラは政情が不安で国内の治安統治に欠けていることが手伝ってロシア、イラン、ヒズボラらの巣窟になる可能性がある。それを米国は危惧しているのだ。

◆「ベネズエラ人になることは簡単にできる」!?

 タレク・エル・アイサミ副大統領の指示で2008年から2012年の間に173枚のベネズエラのパスポートが発行されていたというのが調査で判明しているという。その対象になったのは中東出身の人物で、その中にはレバノンのテロ組織ヒズボラのグループもいたそうだ。それを在イランのベネズエラ大使館の書記官だったミサエル・ロペスが2013年から2015年の間に調査して、パスポートとビザが売買されていたことを告発したのである。それが理由で彼は解雇されるという結果になった。

 彼の証言によると、ビザまたはパスポートが最高1万5000ドル(180万円)を払って手に入れていたそうだ。ベネズエラのパスポートはEUの26カ国を含め世界130か国でビザなしで入国できる。(参照:「Infobae」)

 2002年にチャベス政権を打倒すべくクーデターを起こした時、その一員だったマルコ・フェレイラ元将軍はチャベス政権時からパスポートの売買が行われていたと明らかにした。2001年から2002年にかけてフェレイラは彼が就いていた職務ポストから高官が無記名のパスポートを発行していたのを目撃していたそうだ。その経験から「ベネズエラ人になることや、ベネズエラで生まれたことにすることは大変容易なことだ」と言って米国のCNNの取材に答えたそうだ。

 CIAが懸念しているのは、ベネズエラから彼らが北上して米国に入国してテロ活動を開始することである。

 米州機構(OAS)の米国ロジャー・ノリエガ大使によると、アラブ人でベネズエラのパスポートを所持している者がチリ、パナマ、コロンビアなどの空港でスペイン語を喋べれないことが発覚して摘発された例もすでにあるそうだ。

<文/白石和幸 photo from kremlin.ru (CC BY-SA 4.0) >

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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最終更新:11/15(水) 8:50
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