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“機動破壊”の衝撃から3年後……。前ロッテ脇本直人のリスタート。

11/15(水) 7:01配信

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 プロ野球合同トライアウトまで1週間を切ったある日。

 脇本直人は兄の祐樹さんと、その友人の2人を連れて、関東圏のある場所で自主トレに励んでいた。

 観客もいない、コーチもいない、どこか牧歌的な雰囲気の中、その雰囲気に飲まれず、己に厳しく、ひとつひとつに意味と緊張感を持って彼は練習に取り組んでいた。

 その全身からは「俺はまだ野球が続けたいんだ」という想いがひしひしと伝わってきた。

 打撃練習では右投と左投の2人がマウンドより5m前のところからボールを放った。

 コントロール面で多少乱れるところもあったが、それでも脇本は嫌な顔を一切見せずに、練習後は「やっぱり人が投げるボールは全然違いますね」と言いながら、2人に対し、感謝の意を忘れなかった。

 11月に入って、兄の祐樹さんは仕事の休みをとってまで、弟の自主トレに連日付き合っている。そうした兄や応援してくれる周囲の期待に応えようと脇本も必死だった。

「自分自身まだ若いから『これからだ』とも」

 ロッテ浦和球場に取材に行くと、脇本はいつも人懐っこい笑顔で近寄ってきて、挨拶をする気持ちの良い若手選手の1人だった。

 球場に詰めかけるファンに対してもそれは変わることなく、サインや写真を求められれば笑顔で応える気の優しい性格。その一方で野球に対する姿勢は常に貪欲で、試合前に早々と昼食を済ませると、室内練習場に向かってマシン打撃で一汗かいてから試合に向かう。それが彼のルーティーンのひとつにもなっていた。

 「戦力外になって、特に辛いとかはなかったですね。自分自身まだ若いから『これからだ』とも思っていましたし、地元に戻ったときも周りに弱い自分は見せなかったです。周りがなんと言って来ようがそこはぶれないように……」

「いつか自分もプロ野球の舞台で成りあがるんだ」

 プロ入り前に、知人に勧められて読んだ矢沢永吉の著書『成りあがり』は彼のバイブルになっている。幼き頃の矢沢の境遇と、自身のこれまでを重ね合わせ、「いつか自分もプロ野球の舞台で成りあがるんだ」と、胸の内に熱い想いを秘めている。

 10月3日に千葉ロッテから戦力外通告を受けると、その直後はさすがに落ち込む姿が見られたが、地元の群馬県沼田市に戻って、家族や友人、さらには健大高崎高時代の指導者やチームメイト達と会って、再び元気を取り戻した。

 「周りはいつも通り変わりなく接してくれましたし、そこがまた嬉しかったですね。逆に向こうから『あまり気にするなよ』とかも言ってもらったりしました」

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最終更新:11/15(水) 7:01
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