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半年で14回保護された認知症の母、外出を止めた息子の暴行で死亡

11/24(金) 4:00配信

週刊女性PRIME

《外へ出ないでください》

 玄関のドアの内側には、そう書かれた紙が貼ってある。

玄関ドアに貼られた張り紙写真

何度も「うちに帰りたい」という母

 認知症の母親・武藤節子さん(86)に向けた注意事項だったが、この半年間で警察に14回も保護されるほど、節子さんは外出していた。

 今月12日、事件が起きたその日の午後も、節子さんは外出しようとしていた。

 翌13日に逮捕されたのは息子の契約社員、武藤清孝容疑者(60)。母親の外出を止めようとしたが言うことを聞かなかったため、左下半身を数回、足蹴りにした後、左側頭部を数回、平手打ちするなどの暴行を加えた疑い。

 自宅前を通りかかった通行人が「ケンカをしている」と110番通報。同県警中村署員が駆けつけ、住宅内で倒れている節子さんを発見。緊急搬送されたが、約1時間半後に病院で死亡が確認された。

 節子さんには、外出する“理由”があった。

 隣家の80代女性が明かす。

「しっかりしているときは、普通に会話ができるのよ。“うちに帰りたい”って、何度も話していたっけね」

 この“うち”こそが、節子さんの目的地だった。

 住宅地の一角にある平屋建ての長屋で、母子は暮らしていた。

「今年6月ごろに住み始めたばかり。あいさつには来たけどね」と近隣に住む男性。

 節子さんが帰りたいという“うち”は、この長屋ではなく転居前の“うち”のこと。

 介護問題に詳しい日本ケアマネジメント学会の服部万里子理事は、

「認知症の人にとっては、転居は一大事なのです。生活環境がガラッと変わり、不安で不安でしょうがなかった。前のところに戻りたい、でも途中でわからなくなってしまう。保護されて迷惑かけて……。(半年間の保護回数が)14回というのは異常事態です」

 前出の隣家の女性が預かったこともあるという。

「7月か8月かな、警察官が家の前をうろうろしているわけ。話を聞くと、また外に出ちゃうかもしれない。息子さんには電話がつながらないし、交番には僕ひとりで戻らないといけないから困ったっていうの。だからお母さんを2度ほど預かったことがあるのよ」

 隣家から「鍵をよこせ!」「出ていっちゃいかん」─そんなやりとりが時折、聞こえてきたことがあったが、普段の容疑者は、

「本当に腰が低くって、おとなしくて、いい人ですよ。午後3時くらいに自転車に乗って仕事に行ってね。深夜まで仕事をしていたんじゃないかなぁ。私がお母さんを預かっていると、“本当にすみませんでした。迷惑ばかりかけて申し訳ない”って、すっごく悔しそうな顔をしてね……」

 苦労する容疑者に、どこかの施設へ入れたら? と女性が提案したこともあったが、

「うちのお袋は脚も丈夫だし、言いたいことは言うし、どこも入れてくれないんですよ、って話していてね。

 警察から電話が来れば迎えに行かなければならないし、仕事も手につかないだろうよ。ひとりで悩んで苦しかったろうに。どっちもかわいそうにね……。ただただ悲しいだけだよ」

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最終更新:11/24(金) 4:00
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