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夢の海外就職なのに手取り11万円のブラック労働…イジメ、盗聴も!? 日本人女性に待っていた過酷な現実

12/6(水) 16:00配信

週刊SPA!

 先日、ブラック企業大賞が発表された。長時間労働なうえに低賃金、パワハラ、セクハラ、過労死……。聞こえてくるのはネガティブな要素ばかり。これ以上日本にいたらおかしくなってしまいそう。

⇒【写真】香港の街並みの様子

 いまグローバル社会が叫ばれて久しい。念願の海外就職。休みの日には観光名所を周ってブログを執筆。それが人気を呼んで本が出版されたりなんかして。ついでに現地で運命の出会いまで果たして国際結婚!

 そんな夢物語、なかにはあるかもしれないが……。妄想の範囲でとどめておくのも賢明な選択かもしれない。

「とりあえず海外で働いてみよう」

 思い立ったが吉日とはよくいうが、軽い気持ちで行動に移すと痛い目に遭うこともある。現在、日本で働く女性会社員・相川さん(仮名・36歳)は香港の日本語学校で教師として働いていた経験がある。当初の予定では永住権が取れるまでの7年間を香港で暮らすはずだったが早々に去年帰国した。まずは海外就職をした動機を聞いてみよう。

「海外で働くことが昔からの夢だったんです。海外旅行なんて年に1、2回しかできないのに、お金を貰いながらそこに住めるなんて、楽しいに決まっていると思いました。それと、ちょうどそのころ夫と離婚したんです。周りからはかなり反対されていたので、人の目から逃れたいという気持ちもありました。タイミングが重なったんですよね、移住するなら今かなと思いました」

 いたって単純な動機である。自営業の場合、新しいビジネスに目を付けて、ということもあるだろうが、そうでもない限りほとんどは彼女と似たような動機ではないだろうか。

◆日本語教師になるための条件とは?

「日本語学校の教師ってわりと気軽になれるんですよね。あとは幼稚園の先生。そこまで特別な知識や経験も問われなければ、専門性もいりません。私自身も英語はそれほど喋れるわけではないですし、広東語や中国語なんてさっぱりです」

 文部省によると、日本語教師になるためのガイドラインは以下の通り。

・文化庁基準の日本語教師養成420時間講座を修了

・日本語教育能力検定試験に合格

・大学または大学院で日本語教育を主/副専攻

・上記と同等以上の能力があると認められる者(所定の日本語教育機関で教員歴3年以上等)

 このうち1項目でも満たしていれば日本語教師にはなることができるそうだ。海外就職の場合はビザ取得のために四大卒が追加条件となることが多いが、たしかに敷居は低めである。

◆ついに始まった海外生活

 彼女が就職した日本語学校は、香港では大手の部類に入る。名の知られた学校ならば大丈夫だろうと、ほとんど下調べもせずに香港へと移り住んだのだが……。

「就職先で働いていた日本人数名が給料未払い・サービス残業の強要で裁判を起こしたらしいんです。でも裁判中にみんなバタバタ倒れて総退職。私はその埋め合わせだったんですよね」

 相川さんは住み込みのような形で働くことになった。しかし、その環境はお世辞にも良いものではなかったという。

「マンションの1階と2階が校舎と事務所になっていて、その4階に私は住んでいました。でも1人部屋ではなく日本人スタッフ同士でルームシェアです。同居人もあらかじめ学校側が適当に決めています。男性スタッフに関しては3人くらいまとめて詰め込まれていました」

 さらに彼女の部屋の隣は連れ込み部屋として機能していたそう。玄関の前で売女と間違えられジロジロと見られながら値踏みされたこともあるという。

◆ブラック労働の末、手取りは11万円

「同じ考えを持った日本人同士は気が合うし、はじめのうちは楽しかったです。でも契約時に聞いていた労働条件とは全く違いました。まず残業代なんて1ドルも貰ったことはありませんでした。授業時間以外は事務作業の手伝いを延々させられます。

 決まりとして授業の準備や答え合わせなど自分の仕事は出勤中にしてはいけなかったんです。朝8時に出勤して夜の11時まで授業や事務作業、帰宅してから深夜2時まで翌日の授業の準備をするという日もありました」

 それでいて彼女の手取りはたったの11万円。家賃こそ払ってくれるものの、物価は日本とほぼ変わらない香港。これでは休日の観光どころか、もともとあった貯金を切り崩す生活だ。

「校長の娘さんが海外のある大学で日本語を専攻していたんですが、大学の論文はなぜか私が代わりに書いていました。日本語学校とはもう何も関係ありません。論文の内容などは娘さんの意見を聞くのですが、向こうの時間に合わせてスカイプ通話です。香港は深夜3時とか。さらに香港に帰省しているときは家庭教師もやらされました。はじめは報酬を出すということで引き受けたのですが結局1ドルも貰っていません。挙句、言われた言葉は『日本人なんだからやって当たり前でしょ』でした」

◆陰湿な嫌がらせ…挙げ句の果てには盗聴まで

 ブラック労働に加えて、香港人スタッフからの執拗な嫌がらせや監視行為にも耐えられなかったという。職員のうち約1割が日本人。とにかく彼女たちには自由がなかったそうだ。

「生徒の中に香港人スタッフの“犬”が混じっているんです。教師の授業レベルはどうか、準備を怠っていないかなど逐一報告されるんです。報告されたら罰として受け持つ授業を増やされます。生徒は『せんせー! せんせー!』とつたない日本語で慕ってくれますが、正直誰も信用なんてできませんでした」

 授業が終われば“犬”による監視からは逃れることができた。しかし、香港人スタッフからの監視はプライベートにまで及んでいた。

「校舎には盗聴器がいくつも仕掛けられていました。日本人が溜まりそうな休憩室や女子トイレ、さらには私の部屋まで聞かれていました。ある日自分のデスクのPCを開いたら同時に録音アプリも起動したこともありましたよ。盗み聞きしていないと分からないようなことを私たち日本人にチクチク言ってくるんです。

 しかも、こそこそ盗聴するのではなく、当たり前のようにするんです。お前たちは常に監視されているんだぞってことを伝えるかのように。数少ない優しい香港人スタッフが直接教えてくれました。『全部盗聴されているから下手なことは話さないほうがいい』って。不満を言えば授業時間が増えるだけです。もうどんなに嫌がらせをされても構わないので、授業が増えることだけは避けたい。そんな気持ちだったので、一切文句は言わずに黙々と仕事をしていました」

◆海外就職は甘くない…

 同僚の日本人スタッフたちの目にはクマができ、顔がドス黒くなってきたころ、日本にある知人の会社から声がかかり相川さんは迷わず帰国を決意した。

「香港人は日本文化と日本人に強い憧れを持っているんです。でも自分たちは日本人には負けていないというプライドもあり、それを見せつけてやりたいという気持ちが働いているように感じます。はっきり言ってしまうと、とても幼稚ですよね。イギリスとの再統一運動にも見られるように、香港人は中国人を明らかに差別しています。それは普段の生活の端々からも見て取れます。そのような国民性というのは根強いのもので、私が辞めた日本語学校でもいつまでたっても同じことが繰り返されるのではないでしょうか」

 あくまで彼女の個人的な見解ではあるが、夢だった海外就職が異国文化への嫌悪感を生むきっかけになってしまうこともあるかもしれない。

 日本での生活が嫌になったとき、「ここじゃないどこかへ」という気持ちは分からなくもないが、安易な海外への移住は、そう甘いものではないのだ。

<取材・文・撮影/國友公司>

日刊SPA!

最終更新:12/6(水) 16:00
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