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<目撃>ジャガーがワニをとらえた決定的瞬間、15秒の早業

12/7(木) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

強力な牙で一気に刺殺、泳ぎも得意、ブラジル

 大型のネコ科動物を専門とする写真家のスティーブ・ウィンター氏は、ジャガーを撮影するため、2016年にブラジルのパンタナール大湿原を訪れた。そこで、「スカーフェイス」という名のオスのジャガーが獲物をとらえる驚異の瞬間を撮影する機会に恵まれた。

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 ウィンター氏は、10歳になるスカーフェイスを4日間休みなく追い続けていた。映像カメラマンのバーティー・グレゴリー氏とともに、ブラジルの鬱蒼とした森を切り裂く川を船で下りながら、ジャガーが獲物に飛びかかっては逃げられる様子を何度も観察した。もう、狩りの瞬間を撮影することはできないのではないかと思い始めていた。

 何の進展もなく、気は焦るばかり。釣り竿用のホルダーに差した日傘の下、カメラを手に持ったまま座り、46℃という灼熱の気温に肌をじりじりと焼かれていた。

 もうあきらめようと思ったその時だった。「突然、ジャガーが水へ潜ったんです」

 その後、わずか15秒間の出来事をカメラがとらえた。

 水中に頭を突っ込み、スカーフェイスは顎でがっちりとワニ(カイマン)をくわえると、川から引き上げた。ジャガーはネコ科動物のなかでは世界で3番目に体が大きいが、ウィンター氏の写真をみると、ワニはその2倍近くはありそうだ。

 優雅な身のこなしで素早く水から上がったスカ-フェイスは、ワニを引きずりながら、深い森へ姿を消した。その後どうなったかはわからないが、ジャガーの牙がワニの背骨に強く突き刺さった時点で、ワニの運命は決まっただろうとウィンター氏は見ている。

「スカーフェイスがついに獲物をとらえた瞬間を見て、アドレナリンが体を駆け巡りました」とウィンター氏。カメラのシャッターボタンを押し続けた手には痛みを感じていた。

スピードではなくパワーが武器

 ジャガーの狩りの様子が撮影されることはめったにないが、ワニを捕食することはよく知られている。

 この地域では乾期になると、ワニやカピバラなどの動物が川の中や岸にたくさん現れる。

「ジャガーにとっては、スーパーマーケットのようです」と、ウィンター氏は言う。

 ジャガーが、ワニのように自分よりも体が大きく力も強い獲物をとらえることができるのは、狩りのやり方に特徴があるためだ。ほかの大型ネコ科動物は、獲物の首を顎で挟んで窒息させる。対して、ジャガーは頑丈な牙で相手を刺し殺す。

「ジャガーの武器は、スピードではなく力です。強靭な上半身と顎を持っています」

 ウィンター氏とそのカメラクルーは、エサを探すジャガーが川の流れに逆らって何時間も泳ぐのをよく目にしたという。ナショナル ジオグラフィックの動画にもワニを襲うジャガーを撮影したものがあるが、その中で協会付きエクスプローラーのルーク・ダラー氏が、大型のネコ科動物のなかでもジャガーは最も泳ぎが得意であると解説している。

 パンタナールのジャガーは、ウィンター氏の小さな釣り船にほとんど興味を示さなかった。アルゼンチンの北端から米国とメキシコの国境まで分布するジャガーだが、唯一完全に保護されているのは、ブラジルの自然保護区のみである。

 ウィンター氏は、いつかまたパンタナールへ戻って、もっとジャガーを記録するつもりだ。現在10歳を超えているスカーフェイスがその時まで生きているかはわからない。だが、もし見つからなければ、氏は新たなジャガーを追うことになるだろう。

文=Sarah Gibbens/訳=ルーバー荒井ハンナ

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