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米国が突然エルサレムを首都に認定する事情

12/8(金) 5:00配信

東洋経済オンライン

 ドナルド・トランプ米大統領が、選挙公約を実現させる形でエルサレムをイスラエルの首都と認め、商都テルアビブにある米大使館の移転を指示した。

 米政権の歴史的な転換は、中東和平の最大の争点であるエルサレム帰属問題で、「東西不可分の首都」とするイスラエル側の肩を一方的に持つものだ。パレスチナやアラブ諸国からは批判の声が上がっており、中東和平の仲介役としての米国の信頼は揺らいでいる。

■トランプ政権の「読み」

 が、トランプ政権には違った読みがあるようだ。

 中東では目下、サウジアラビアやエジプトに代表されるイスラム教スンニ派諸国と、イランを軸としたシーア派の宗派間対立が主要な争点となっている。イランを宿敵とするイスラエルが、水面下でスンニ派との連携を深めているなど、アラブ諸国は、反イスラエルや反米で団結できない事情を抱えている。トランプ政権は、イスラム圏からの一時的な反発をやり過ごせば、和平交渉再開も可能と見ているのだろう。

 一方、中東諸国の指導者は一斉に批判の声を上げている。フェイスブックでもイスラム信徒やパレスチナ人らが、エルサレムにあるイスラム教聖地の写真を掲げるなどしてトランプ政権の決定に反発を強めている。パレスチナ難民を多数抱えるヨルダンは「新たな現実を押し付けようとする一方的な動きは無効だ」と指弾。

 トルコの レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は「エルサレムはイスラム教徒にとって越えてはならない一線だ」と反発した。イランの最高指導者アリー・ハメネイ師も「イスラム諸国はこの謀略に間違いなく決起するだろう」と非難している。

 エルサレム帰属問題は、同じ一神教のユダヤ教、キリスト教、イスラム教の融和を阻む心に刺さったトゲのような存在である。聖地が重なり合うエルサレム旧市街には、ユダヤ教の神殿が建てられていた場所に「嘆きの壁」が残り、約200メートル離れた場所にはイスラム教第3の聖地である岩のドームやアル・アクサ・モスクがある。

 イスラム教徒にとっても、エルサレムは特別な場所だ。コーラン第17章の「夜の旅」章には、「かれに栄光あれ。そのしもべを(メッカの)聖なるモスクからわれが周囲を祝福した至遠の(エルサレムの)モスクに夜間旅をさせた」と記されている。預言者ムハンマドは、天馬に乗ってエルサレムのモスクに至り、そこから昇天して歴代の預言者たちに会ったといわれる。

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