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中国で「深夜食堂」ブーム 新しい日本食が広がる

12/8(金) 7:00配信

日経トレンディネット

不人気だったドラマ「深夜食堂」がブームに!?

 中国では知る人ぞ知るコンテンツだった「深夜食堂」がブームになっている。「深夜食堂」とは、安倍夜郎による人気コミックを原作としたドラマのことだ。深夜0時から朝の7時ごろまでしか営業しない食堂のマスターと客たちとの交流を描く作品で、2009年に日本でドラマ化され、その後、中国でもネット配信されて話題になった。

【関連画像】レシピサイト「下厨房」には「深夜食堂」というジャンルができた

 このドラマが今ごろになって再び注目を浴びたのは、今年6月にスタートした中国および台湾向けのリメーク作品「深夜食堂(華語版)」がきっかけ。鳴り物入りで登場したものの、中国にはない小料理屋風の店が舞台となっており、物語も日本の食文化をベースとしているため中国人には違和感がありすぎたようで、評価サイトでもまれに見る低評価作品となった。ところが逆にその“違和感”が面白いと注目され、ドラマの認知度が上がるという皮肉な結果につながったのだ。

 しかも、話はそれで終わらない。「ふりかけ(だけの)ご飯」や「一手間かけた即席麺」は中国ではあり得ないという多数派の意見をよそに、そういった食文化に興味を示す中国人も少なからずいて、「深夜食堂」のレシピを真面目に紹介するウェブサイトなどが人気に。さらに、書店では日本の大衆食堂を紹介するガイド本などをよく目にするようになり、「淘宝網」などのECサイトでは深夜食堂“非”公認スマホケースをはじめ、作中によく登場する卵焼き器などの調理器具や、かつお節などの日本の食材を取り扱う店が増えたのだ。

「深夜食堂」をモチーフにした実店舗も急増!

 検索サイトの「百度」や、口コミサイトの「大衆点評」や「美団」で「深夜食堂」を検索すると、「深夜食堂」をモチーフ、または店名そのものにした食堂が中国各地にあることが分かる。また、それらの多くが「日式」または「日本」とうたっていることから、日本料理を提供する店であることも推測できる。

 そうした店には、マンションの一室をカフェ兼食堂にしたところが多いのも特徴だ。マンションの一室を改装してカフェにしたり、カルチャースクールにしたり、民泊用にしたりといった動きは近年の中国におけるトレンドだが、「深夜食堂」をモチーフにした食堂もそれらの1つと言えるだろう。確かに、即席麺にちょっと調味料や食材を加えるだけ、ご飯にかつお節としょうゆを振りかけるだけでよいので「深夜食堂」風の店は手っ取り早い。

 とはいえ、ウェブサイトの紹介画像をチェックしてみた限りでは、店内に日本風の中古家具を置いて、そこに日本の書籍を何冊か並べた程度の殺風景な店が多いように思う。実際に筆者が訪れた店も、「ねこまんま」や「お茶漬け」「カレーライス」がメニューにあったものの、内装からは「深夜食堂」を本気で再現しようという熱意が感じられず、ブームに乗って飲食店を始めてみただけという印象だった。

 「深夜食堂」は、すしやてんぷらといったステレオタイプの日本料理とは違う日本の食文化を伝えるコンテンツとして成功したと思う。多くの中国人にとっては受け入れ難いものでありながらも、手軽でトレンディーであることから出店ブームに結び付いたのは面白い。「深夜食堂」ブームがどこまで広がるのか、そして定着していくのか、興味深いところではある。