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中国の「虎の尾」を踏んだ、ムガベ大統領の哀れな末路

2017/12/9(土) 14:18配信

ニューズウィーク日本版

中国からの孔子平和賞辞退が老朋友(古くからの友人)の亀裂の序章だった

かつて「孔子平和賞」にも選ばれた国家元首が中国の謀略によって失脚に追い込まれた。

11月21日、アフリカ南部ジンバブエのムガベ大統領が辞任。80年の建国時から37年間にわたって国を支配したムガベは、欧米から「世界最悪の独裁者」と呼ばれた。だが中国にとっては愛すべき、古くからの友人「老朋友」。「人類の平和構築に大きく貢献した功績」から、15年に孔子平和賞の受賞者に選ばれた。

ジンバブエ政変の裏に中国ダイヤ利権

孔子平和賞は、人権活動家・劉暁波(リウ・シアオポー)へのノーベル平和賞授賞に反発した中国が「欧米の粗暴な内政干渉に反対し、真の平和理念を実現する」として10年に創設。ロシアのプーチン大統領など強権的な政治家に「独裁奨励賞」として授与されてきた。

ただ、当のムガベは喜ぶどころか、最も価値のない賞とばかりに一蹴。受賞を辞退し世界の注目を浴びた。それでもムガベが失脚した翌日、中国外務省の陸慷(ルー・カン)報道官は定例記者会見で「各方面が国家の長期的な利益を考え、対話を通じて平和的に解決するよう求める」と述べ、中国とジンバブエの友好は変わらないことを強調した。

今回の辞任劇は軍部のクーデターから始まるが、その軍の高官が直前に中国の首都・北京を訪問し、常万全(チャン・ワンチュアン)国防相と会談していた。折しも、中国がジンバブエで巨額の資金を投じて運営してきたダイヤモンド採掘企業が国有化される危険にさらされたことから、ムガベ排除に動いたのではないか、との報道も欧米から出ている。

中国からジンバブエへの投資は13年に5億2000万ドルに達し、アフリカ最大規模を誇る。両国の貿易総額が13億ドルを突破した15年12月には、中国の習近平国家主席がムガベを訪ねて古くからの両国の友情を温めた。

ムガベも14年春から人民元をジンバブエの法定通貨に加え、16年から正式に流通させる法案も議会を通った。孔子平和賞もこのような「人類への平和活動の実績」が認められて、授けられるはずのものだった。

<革命思想輸出の果てに>

注目に値するのは、アフリカや中東で社会主義運動を率いてきた「中国の老朋友」がいずれも悲惨な最期を遂げている事実だ。イラクのフセイン大統領が06年末に首都バグダッドで、アメリカの意向に沿って死刑に処せられたのは記憶に新しい。

エジプトのムバラク元大統領もおよそ30年間君臨してきたが11年に失脚し、6年間もの軟禁状態に置かれた。「大リビア・アラブ社会主義人民共和国」の「最高指導者兼革命指導者」カダフィ大佐も11年に動乱で敵対する武装勢力に殺害された。

中国は60年代初期からアフリカや中東に積極的に革命思想を「輸出」。現地の青年将校たちを支援し、大勢の老朋友を獲得してきた。黒人解放運動を主導し、マルクス主義者を自任していたムガベが64年から約10年間投獄されていた時期も、中国は彼を「半植民地の旗手にして社会主義の闘士」と称賛した。

00年以降の土地の強制収用など白人敵視政策も、中華人民共和国成立直後の50年代に中国共産党が進めた反帝国主義運動の猿まねにすぎない。西欧列強の財産を没収して国有化した、社会主義の先輩・中国の「成功」をムガベは見習った。その結果、農地は荒廃し財政も悪化し、極度のインフレに陥った。

近年は中国の内政干渉がしたたかさを増しており、孔子平和賞を辞退したのもムガベのいら立ちの表れだろう。その頃、ムガベは経済利権を獲得しようとなりふり構わずダイヤ鉱採掘に突進。ついには中国の利権まで国有化しようとし、最終的には政治生命を絶たれた。

ムガベは古き良き友人・中国に突き放されて、失意の晩年を送ることだろう。かつてはムガベの忠実な部下だったムナンガグワ新大統領もまた、独立闘争時に中国で極秘の軍事訓練を受けていた経歴から、老朋友であることに変わりはない。

中国の利権を損なう行動に出れば、ムナンガグワも捨てられる運命にあるかもしれない。

<本誌2017年12月12日号掲載>

楊海英(本誌コラムニスト)

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