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2度のがんを克服 建築家・安藤忠雄「夢と希望は尽きない。あと20年は仕事します」

2017/12/11(月) 7:00配信

文春オンライン

「胆嚢、胆管、十二指腸を摘出しても、今まで通り仕事ができました」

 ペースは一向に落ちない。

 安藤忠雄さんは常時、建築プロジェクトを無数に抱え仕事に邁進している。

 現在進行形の目玉プロジェクトとしては、2019年にパリで完成予定の「ブルス・ドゥ・コメルス」がある。商品取引所だった18世紀の建造物を、現代美術館として生まれ変わらせるというもの。

 今秋には、児童図書館をつくり大阪市に寄贈する計画も発表した。子どもたちが芸術文化に触れる場を提供したいと、大阪・中之島公園内に建てられる予定だ。

 12月18日までは、東京・六本木の国立新美術館で大規模個展を開催中でもある。会場は屋内600坪、屋外200坪に及び、建築をテーマとした展覧会としては破格のスケール。会期中、展示室内で開かれる本人によるギャラリートークが数十回も組まれ、事務所のある大阪と東京を行き来する日々だ。

 連日の盛況が続いているので気持ちの張りもあろうけれど、76歳にして、なんたるバイタリティであることか。

 元気そのものに見えるが、身体的にはそうではない。がんを患い、復帰した経緯を持つ。

「最初は2009年。病院で検査を受けた際、がんがあると言われました。がんは胆嚢、胆管、十二指腸に広がっているようだとのことで、医師はこれらをどれも摘出しなければいけないと。しかたがない。スケジュールを空けて、手術を受けました」

 時間のかかる大手術となったが、なんとか成功した。しばしの静養を経て復帰した。

「これが不思議なことに、今まで通り仕事ができました。ありがたいことです」

5年後にまさかの再告知

 経過は順調に見えた。しかし2014年、再度病院で告知を受けることに。

「今度は膵臓の真ん中にがんが見つかりました。膵臓、それにどうやら脾臓も取らなければいけない。手術をしたら回復しますかと問うと、これだけ臓器を取ってそのあと元気になった人は見たことがないといいます。でもまあ、なってしまったものはしかたがない。また手術を受けました。だから今は臓器が5つ、ないことになります。でも生きていられますね。仕事もできています。医師からは『不思議なことだ』と言われ続けていますが(笑)」

 5つの臓器を失ってなお元気でいられる理由として、思い当たる節はあるだろうか。

「医学的なことはわかりませんが、気づいたことはひとつ。人間、希望だけ持っていればなんとかなるのですね。希望を捨てないという気持ちのあり方。それが何より大切ですよ」

 もちろん、病前とすべてが同じというわけにはいかない。生活のペースは少し見直した。

「食事の時間を毎日、一定にしました。そして、時間をかけて食べる。以前は5分で食べるようなこともしましたが、今は1時間きっちりとります。食べたあとには、身体を休める時間も設けています。

 そうすると、いいこともありますね。本を読む時間ができました。大江健三郎や安部公房なんかを読んでいますが、前はどうもよくわからなかった作品も、この齢になってじっくり取り組むと、腑に落ちるところがたくさんあります」

 仕事面でもプラスが生じた。

「このところ、中国からの建築依頼がどんどん舞い込むのです。彼ら曰く、安藤さんは臓器を5つ取っても元気でいる、なんて縁起のいい建築家であることか、あやかりたくて仕事を頼んだとのこと。病気になってもいいことはあるものです(笑)」

 かくも前向きでいられる秘訣はどこに?

「私には建築でやりたいことがまだまだありますから、夢と希望が尽きることはありません。少なくとも、あと20年は建築家をやり続けるつもりですから」

山内 宏泰

最終更新:2017/12/18(月) 14:54
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