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「深センすごい、日本負けた」の嘘――中国の日本人経営者が語る

2017/12/12(火) 17:40配信

ニューズウィーク日本版

<ニューズウィーク日本版12月12日発売号は「日本を置き去りにする 作らない製造業」特集。この特集では、「ものづくりしないメーカーの時代へ」と題する記事で深センの「エコシステム」についてレポートしている>

広東省深セン市が今、脚光を浴びている。未来感あふれる新たなサービスが続々と導入され、気鋭のベンチャー企業が次々と登場するイノベーション・シティ。停滞感漂う日本とは異なる世界が存在するという。

深センに行ってきた:物を作れる人類が住む街で

深センの何がそんなに「すごい」のか。深センでEMS(電子機器受託製造)企業のジェネシスホールディングスを経営し、自著『「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ――これからの製造のトレンドとエコシステム』(インプレスR&D)で深センの変化を描いた藤岡淳一にジャーナリストの高口康太が聞いた。

――日本では「深セン礼賛」が静かなブームになっている。

確かにわが社にも問い合わせや視察が増えており、盛り上がりを感じる。ただ、漠然とした「深センはすごい」というイメージばかりが先行しているように思う。キャッシュレス決済やシェアサイクルの普及、街中にドローンが飛んでいるといった表面的な事象ばかりを取り上げても意味がない。

「電子製造業を取り巻くエコシステム」「高度人材が集中する研究開発」「高額所得者が集まることによる不動産・商業の発展」「中国の中でも比較的緩い政府の規制」など、個々の側面に目を向けなければ実態は分からない。自著ではEMS経営者として、主に電子製造業について、自らがどのように深センの強みを活用しているかを具体的に描いた。

――その強みとは何か。

サプライチェーンとエコシステムだ。この数十年で日本から低付加価値の分野が韓国、台湾に移り、深センに流れていった。人件費が高い場所で付加価値の低い仕事はこなせないのだから自然な流れだ。その後、本来ならば深センからその先に流れていくはずだが、深センは後背地に膨大な人口を抱えている。そのため長きにわたりワーカーの人件費は低水準に抑えられてきた。

その結果、日本、韓国、台湾から流れてきた低付加価値の事業は、まるでダムにせき止められた水のように深センに溜まっていった。結果、電子機器製造業に必要な全てが車で1時間圏内に集まる都市が完成した。設計、部品、組立、金型、検査、物流、全てだ。こうなるとあまりにも利便性が高いため、少々人件費が高騰しても他地域に移ることは難しい。

また中国のサプライチェーンは徹底的に分業が推し進められている。そして、それぞれのカテゴリにおいての競争が激しく、各材料を低価格での材料調達が可能だ。個々の企業が必死に生存競争を繰り広げることで、全体としては製造業に最適な「森」が生まれた。それが深センだ。エコシステム(生態系)という言葉がこれほどしっくりする街はないのではないか。

――そのため「ハードウェアのシリコンバレー」になった、と。

書名には大手企業ではなく、IT企業やベンチャー企業にとって最適の場所だという意味を込めた。それというのも、中小零細事業者が多かった歴史から、小ロットでの製造を行うための仕組みが充実しているからだ。

「公板公模」が象徴的な事例だろう。これは汎用の基板、汎用のケースを指す言葉だ。電子機器製造では基板と金型の初期費用がかかるが、公板公模を使えば開発費ゼロで調達できるうえ、開発期間も短縮できる。これは電子材料のシェアリングエコノミーとも言える、新しい製造業のトレンドを生んだ。

わが社は日本のベンチャー企業などから法人向けタブレット、IoT(モノのインターネット)機器を受託して製造するのが主要事業だが、日本の競合企業よりも圧倒的な小ロット・低価格を実現している。わが社と日本企業ではMOQ(最低発注数)が10倍も違うということもあった。小ロットでも製造できるのは深センのサプライチェーンを活用すればこそだ。

ベンチャー企業には多額な開発費や在庫を抱えるための資金がない。多額の資金がなくともカスタム製品を作れる場が必要だ。また、最初から完璧に要求を満たすカスタム製品を作ることも難しい。トライ&エラーを繰り返す必要があるが、そのためには小ロットで製品を作れる環境が不可欠だ。

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