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算数が得意な富裕層の子どもと、家庭科が得意な低所得世帯の子ども

2017/12/13(水) 16:57配信

ニューズウィーク日本版

世帯所得の学力格差は教科ごとに異なっている

2013年度に文部科学省が実施した『全国学力・学習状況調査』では、年収が高い家庭の子どもほど教科の平均正答率が高い傾向が明らかになった。このデータによって「貧困と低学力」「貧困の世代連鎖」といった問題がはっきりと認識され、低所得家庭に対する通塾費の補助や無料学習塾などの取り組みが各地で実施されている。

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家庭環境と「学力格差」がリンクしていることは分かったが、勉強に対する意識にも同じような格差が見られる。2014年度の国立青少年教育振興機構の調査によると、「勉強は得意な方だ」という項目に「とてもそう思う」と答えた小学生(4~6年生)の割合は、年収200万円未満では10.0%だが、年収1000万円以上の富裕層では29.5%だ。「少し思う」までを加えると、前者は36.2%、後者は67.7%と差はもっと大きくなる。

これは両極端だが、6つの年収階層と勉強の得意意識の関連をグラフにすると<図1>のようになる。無回答は除いた有効回答の分布だ。

<図1>

年収が高い群ほど、「勉強は得意」と思う児童の割合が高い。否定的な回答の割合は、貧困層で高い。グラフに乱れがない、きれいな傾向だ。家庭の経済資本や文化資本の差が反映されている。

なお一口に勉強と言っても、内容は多岐にわたる。学校には複数の教科があるが、得意度が家庭環境要因と関連する度合いは、教科によって異なる。

上記の調査では、対象の小学生に対し、8つの教科と外国語活動が得意か否かを尋ねている。<表1>は、得意と答えた児童の比率が年収200万円未満と1000万円以上の家庭でどう違うかを比較したものだ。学年変化も見るため、4年生と6年生に分けている。

教科によって、差の様相は違っている。おおむね座学の教科では富裕層の方が高く、実技系ではその逆になっている。算数は前者、家庭は後者の典型例だ。

差が最も大きいのは算数で、4年生では1.73倍、6年生では2.01倍と、学年を上がるにつれて階層格差が開いていく。内容が高度化し、塾通いなどができる子が有利になるのだろう。外国語活動(英語)は、4年生よりも6年生で差が小さい。英語が始まる4年生では、幼少期の英語教育経験の違いが反映されるためと思われる。

家庭については、低収入層の子どもは自宅で手伝いをする(させられる)頻度が高いため、得意率が高いのかもしれない。あるいは、座学の教科で得意なものがなく、実技系を得意と答えた児童が多い可能性もある(自身の中での相対規準を適用)。

観察される格差は教科によって異なる。新学習指導要領では「個に応じた指導」が推奨されているが、とりわけ算数は習熟の程度がまばらで、その違いが家庭環境と強く関連している。この教科では、補充的な指導に重点を置くべきだろう。

子どもの教育達成の要因として家庭環境を取り上げることはタブー視されてきたが、最近は考え方が変わり、家庭の所得をキーに据えた調査もされるようになってきた。2013年度に続き、今年度の『全国学力・学習状況調査』でも、家庭環境の調査が含まれている。

家庭環境による学力格差、それによる貧困の世代連鎖を防ぐには、冒頭で述べたような実践(通塾費の補助や無料学習塾など)も大事だが、まずは「所得階層」をタブー視する教育界の風潮を変えなければならない。

<資料:国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」(2014年度)>

舞田敏彦(教育社会学者)

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