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若年化する盗撮常習者--スマホを持つこと自体が“トリガー”となる「行き過ぎた支配欲」の正体

2017/12/14(木) 6:00配信

週プレNEWS

スマホや小型カメラを使った盗撮事件が後を絶たない。“盗撮”でニュース記事を検索すると、この種の事件の多さに驚くはずだ。

直近では12月6日、長崎県・佐世保高等専門学校の40代の男性教授が女子学生のスカート内を学校備品の小型カメラで盗撮していたことが発覚、また神奈川県海老名市では駅構内のエスカレーターで複数回にわたり、通学途中の高校2年の女子生徒ふたりのスカート内をスマホで撮影した43歳の会社員が逮捕された。

さらに同日には、埼玉県内の市立小学校の教室内で1年以上にわたって児童の着替えなどを盗撮していた教諭(26歳)が懲戒免職されたほか、12月4日には群馬県内の消防本部の消防士(29歳)が勤務中に女子トイレに盗撮目的で侵入した容疑で逮捕されている。

なぜ彼らは、女性の下着を“撮る”という卑劣な行為に及んでしまうのか。

『男が痴漢になる理由』(イーストプレス)の著者で精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳(さいとう・あきよし)氏はこう話す。

「盗撮を繰り返し行なう行為は、窃視(せっし)障害と呼ばれるひとつの病気です。窃視障害とは、女性の下着や裸、または性行為を“のぞき見る”ことから得られる強烈な性的興奮が少なくとも6ヵ月にわたり、空想や衝動、行動に現れることを指します」

斉藤氏は大森榎本クリニック(東京・大田区)で12年前から痴漢、盗撮、強姦、強制わいせつ、小児性犯罪、下着窃盗、露出など1千人を超える性犯罪者と向き合い、再犯防止プログラムを施してきた。これまで治療に当たった盗撮常習者は300人を超える。その素性を知りつくす斉藤氏は「盗撮常習者の心理は万引きのパターンと似ている」ともいう。

「万引きも盗撮も『最初は犯罪行為をするつもりじゃなかったのに何かが引き金となって行為に及んでしまう』という例と、そもそも最初から犯罪行為を目的に行動するという例があります。また、共通しているのは“相手(商品)が目的ではなく、行為中に強烈に感じる非日常的なスリルとリスク”にハマってしまう点です。決して性的欲求を満たすためだけという理由ではありません」

11月上旬には、JR山手線車内で小型カメラが入った紙袋を20代の女性のスカート内に差し入れ、盗撮していた朝日新聞の記者(35歳)が現行犯で逮捕、「盗撮をやめられなかった。数ヵ月前からやっていた」と供述している。斉藤氏はこの盗撮行為に突発的な犯行ではなく入念に計画された“常習者の匂い”を感じるという。

「『紙袋にカメラを仕込んで…』という報道が事実なら、それはかなり計画的で日常的に盗撮行為に及んでいた可能性が高い。そもそも、盗撮は盗撮機器を介する行為なので撮影角度や撮り方など、ある程度、事前にシミュレーションしなくてはいけない“計画された上の犯行”であることが多いんです。

そんな準備段階の緊張感や行為前の葛藤や行為中の高揚感、犯行後の後悔や達成感、そして『今度はもっとうまくやりたい』という次への渇望感が相まってその悪循環から抜け出せなくなる傾向が見られます」



『犯罪白書』によると、盗撮の検挙件数は2012年の2408件から14年には3265件と、ここ数年で急増している。しかし「これは氷山の一角」と斉藤氏は言う。

「痴漢行為の検挙件数は年間4千件程度で、検挙に至らない潜在的な事案も含めれば年間10万件は起きていますが、盗撮の場合はそれよりも遥かに多いはず。具体的な潜在的件数は推測できませんが、推測できないほど“膨大な数”に上るということです」

それなのに、痴漢より検挙件数が少ないのはなぜか。

「まず、痴漢などの他の性犯罪とは違って盗撮は“非接触型性犯罪”なので被害者が撮られていることに気がつきにくい。そして、被害者が盗撮に気づいても被害届を出さないケースがほとんど。その後の警察の調書作成などにかかる時間的なロスを考えたら…と、声を出さずに立ち去ってしまうケースや、示談や罰金で済んでしまうことも多いんです」

盗撮による事件の報道を見ていると、マスコミ関係者や教師や大学教授、公務員など社会的地位のある加害者が目立つような気もするが…。

「どうしても社会的地位がある加害者のほうがニュースとしても際立つので目立ってしまうだけです。実際は20代の学生や社会人がもっとも多い。このクリニックに通う盗撮常習者も20代が大半を占めています。一般の若者による盗撮事件はニュースとしてもインパクトが弱いから取り上げられないだけで、中には大学側が揉(も)み消すケースもあります」

盗撮常習者に20代の若者が多い理由はやはり…「今、もっとも多い盗撮の手口はスマホによる撮影ですが、彼らはシャッター音が無音になるアプリや、盗撮目的のみでスマホを駆使している者もいる。スマホが身近にあった世代の特徴なのか、撮ること自体に抵抗がない若い盗撮常習者が多い気がします」

実際、『犯罪白書』によると14年の盗撮事犯の中で『スマホ・カメラ付き携帯電話』を使った犯行が全体の70.9%(2312件)と最も高く、次いで小型カメラが11%(359件)だった。ちなみに、犯行場所は駅構内(32.2%・1049件)やショッピングモールなどの商業施設(28.5%・929件)が目立つ。

「彼らにとってはスマホを持つこと自体が“盗撮のトリガー”になってしまいます。そして駅構内で好みのスカートを穿いた女性を見かけたり、あるいはエスカレーターや階段など犯行に及びやすい場所を通るだけで“反応してしまう”ケースもあります」

斉藤氏が再犯防止プログラムを実施する患者の中には「就職の内定が決まっているのに盗撮をしてしまう大学生も多い」という。

「盗撮で捕まったら内定も社会的な地位も一瞬で失います。しかし盗撮とは、いわば痴漢と同様、依存症という病気でもある。依存症における“優先順位の逆転現象”といって、どれだけ社会的地位がある人でも『事件が発覚したら』という考えは二の次で、『盗撮をしたい』という欲求や衝動が勝ってしまうのです。その異常な行動を抑える予防策として、自分でスマホのカメラ機能を壊す人や携帯会社に相談してカメラ機能を外す人もいます」



また、盗撮常習者にはこんな特異な一面もあるという。

「痴漢の場合は行為を繰り返す過程で『電車の女性専用車両に乗らない女性は触られたがっている』などと徐々に認知が歪(ゆが)んでいる傾向が見られますが、盗撮の場合は“根っこ”に問題を抱えている人が多いように見受けられます。

女性経験が乏しく、異性とコミュニケーションを取るのが苦手で、その場や集団の中でふさわしい振る舞いができなかったり、相手の気持ちを非言語的コミュニケーションから読み取るのが困難な人など、自閉症スペクトラムの傾向があるケースも少なくありません。私が出会った数多くの盗撮常習者の中には童貞の人も多かったです。

本人たちは『女性と付き合いたい』『コミュニケーションを取りたい』『女性の身体に触れたい』という願望はあるんですが、様々な生きづらさが重なってその欲求を満たすことができない。そうなった時に使う手段として出てくるのが“盗撮”なんです」

『盗撮って、相手に気が付かれずに見知らぬ女性の“日記を盗み見するような行為”なんですよ』――ある盗撮常習者は斉藤氏にそう呟いたという。

「彼の言葉が象徴的ですが、常習者たちは盗撮することで『相手に気付かれていないけど、僕はキミのことを全部知っているんだ』という“支配欲”や“優越感”を満たそうとしているのです」

女性と繋がりたいけど繋がれない。「盗撮行為はコミュニケーション能力の欠如からくる、『女性と接触したい』という欲求を満たせない不全感を埋めるための代理行為でもある」と語る斉藤氏。

しかしどんな理由があれ、盗撮される側の女性としてはたまったものではないはずだ。

★この記事の続き、後編は明日配信予定!

(取材・文/青山ゆか)

最終更新:2017/12/14(木) 15:25
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