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綾野剛、“命の選別”に葛藤ーー『コウノドリ』第10話で向き合った現実

2017/12/16(土) 12:29配信

リアルサウンド

 出生前診断とは、赤ちゃんが産まれる前の子宮での状態を診ることを指す。『コウノドリ』(TBS系)第10話では、出生前診断を受け、21トリソミー陽性の検査結果が出た妊婦2組の家族が登場した。21トリソミー陽性は、生まれてくる赤ちゃんがダウン症候群である可能性が高いということ。家族にはそれぞれ事情がある。その上で、生まれてくる赤ちゃんをどのように受け止めるか。命について、担当する医師も思い悩む中で、サクラ(綾野剛)はペルソナメンバーに自身の思いを告げる。サクラの“命の話”に、ペルソナメンバー、そして多くの視聴者が心を打たれた。

 明代(りょう)と信英(近藤公園)の夫婦は、ダウン症候群の診断を受け「私たちには育てられない」と中絶を決める。店を切り盛りするのにも精一杯の現在、さらにお腹の子を生んだ時、生活が成り立たなくなる。また、ずっと先の未来、両親がいなくなった時にダウン症の子の面倒を見るのは、その兄弟姉妹となる。ダウン症は、知的障害だけでなく、心臓病や呼吸器疾患を抱えて生まれてくるケースもある。けれど、ダウン症のある人々の多くが毎日を幸せに生きており、健常者と変わらない生活を送っている人もいる(参考:ダウン症のある人「幸せに思う」90%以上)。

 「最後にこの子を抱いてもいいですか?」。中絶を選択した明代は、サクラにそうお願いする。もう一人の夫婦、透子(初音映莉子)と光弘(石田卓也)も生まれてくるダウン症を持つ赤ちゃんを受け入れるか、選択に迷っていた。透子は、不妊治療の末にやっと子供を授かることができた。しかし、ダウン症の子供を育てることの大変さも分かっていた。そのあとに続く赤ちゃんと家族の物語が一人一人にある。透子と光弘は、悩んだ末に中絶を決めた。しかし、次の子供を見据えるのではなく、今お腹にいるこの子に寄り添おうと、透子は超音波検査を希望する。中絶の時を迎え、透子は手術室を前にして崩れ落ちてしまう。「この子、私の赤ちゃんなの」「産みたい……でも怖い、自信がない」。赤ちゃんには、母親だけではなく、父親やその祖父母も含めて“家族”がいる。赤ちゃんに寄り添うこと、そしてその子を授かった母親に対しても周りの家族が寄り添ってあげることが、出生前診断を受けるということなのかもしれない。

 「家族が幸せになるための選択」、サクラは出生前診断での中絶をそう言い聞かせる。「命の選別」に対して吾郎(宮沢氷魚)が質問をぶつけると、サクラは話しだす。

 「命は尊い。平等なはずの命を選別してはいけない。そのとおりだ。けど、僕はずっと迷ってる。命の選別。その言葉にみんながとらわれていて、お父さん、お母さん、家族、その事情には目が向けられていない。それぞれの事情の上に命は生まれてくる。育てていくのは家族なんだ。出生前診断を受けた結果、中絶を選ぶ家族もいる。心が重くなる。いつまでも慣れることはない。けれど、悩みに悩んでその選択をして、僕たちに助けを求めてる。その手を払いのけることはできない。中絶を決めたお母さんが最後に赤ちゃんを抱きたいと願う。たしかに矛盾しているかもしれない。だけど、その葛藤に僕たちが寄り添わないで誰が寄り添う? 検査を受けた人、受けなかった人、赤ちゃんを産んだ人、産まなかった人、どの選択も間違ってない。いや、間違ってなかったと思えるように、産科医として、家族と一緒に命と向き合っていく。それが僕の、僕たちにできることなんだと信じて、僕はここにいる」

 『コウノドリ』では、“命に寄り添う”というテーマが何度も描かれてきた。その中で、主人公であるサクラの胸中にある思いは多く出てきたが、ここまでの長く、熱い思いは過去最長であったように感じる。命の選別。それはこのドラマ、現在の医療において向き合うべき、一つの現実なのだろう。

渡辺彰浩

最終更新:2017/12/16(土) 12:29
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