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ハリルJ、“欧州組偏重”はやむなし。惨敗の日韓戦に合格者なし、突きつけられた現実

2017/12/17(日) 12:06配信

フットボールチャンネル

 16日、E-1選手権最終戦の韓国戦に臨んだ日本代表。日本は引き分け以上で同大会の優勝となる日韓戦であったが、あらゆる面で韓国に上回られ、1-4と歴史的な惨敗を喫した。日本の良いところを探すほうが難しい一戦だったすら言える。国内組のみで臨んだ今大会であったが、ハリルジャパンはこの完敗で厳しい現実を突きつけられてしまった。(取材・文:元川悦子)

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●いいところを探すのが難しいほどのゲーム

 9日の北朝鮮戦、12日の中国戦に連勝し、E-1選手権制覇に王手をかけていた日本。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「この大会では韓国が一番強い」と16日の最終決戦前から警戒心を募らせていたが、勢いと一体感が生まれた今の日本代表なら十分戦えると目された。

 実際、開始早々には車屋紳太郎(川崎F)のオーバーラップから小林悠(川崎F)が飛び込む決定機を作り、直後には伊東純也(柏)がPKを奪取。これを小林が決めて1点をリードするなど、日本からは高いインテンシティーが感じられた。しかし、よかったのはここまで。直後から韓国の猛攻を受け、一方的に主導権を握られた。

「点取ったから守りに入ってしまうのもあるし、ポジション上なのか分かんないけど、全くプレッシャーがかかんなかった。やってて嫌な感じはすっとしてた」と国際Aマッチ93試合目の今野泰幸(G大阪)が言うように、日本は守備組織が機能せず、ことごとくセカンドボールを拾われてしまった。

 守備リーダーの昌子源(鹿島)が「頭を使いながら守らなければいけない」と強調していたキム・シンウク(全北現代)に競り負け1失点したのを皮切りに、日本は失点を重ねていく。

 23分にはチョン・ウヨンに芸術的FKを決められ、35分にはキム・シンウクの3点目を奪われる。前者の際にファウルを与え、後者をアシストしたイ・ジェソン(全北現代)のドリブル突破を止められなかった車屋の守備は特にいただけなかった。2失点に絡むミスをしていたのでは、6ヶ月後の2018年ロシアワールドカップへの生き残りは難しい。

 彼だけでなく、11月の欧州遠征(ブラジル&ベルギー)に帯同した昌子、井手口陽介、倉田秋(ともにG大阪)ら主軸が軒並み期待外れのパフォーマンスに終わったのも、後半にも1失点を追加し、1-4の屈辱的大敗を喫した一因だろう。

 ここまで2戦で好アピールを見せていた今野や小林、中村航輔(柏)らも救世主になり得なかった。日本サッカー協会の田嶋幸三会長が「ひと言、情けない。試合に負ける、デュエルに負ける、それも悔しいことだけど、日本代表選手としての誇りを持っているのか。私自身も久々にこんな(ひどい)試合を見た」と酷評したくらい、いいところを探すのが難しいゲームになってしまった。

●“欧州組偏重”もやむを得ない

 ハリルホジッチ監督も「代表候補を沢山見たかった」と今大会の狙いを口にし、後半には日本代表デビューとなる三竿健斗(鹿島)まで送り出したが、韓国戦だけで見ればロシア行きの挑戦権を得た人間は誰1人いなかったと言っても過言ではない。2015年3月の同指揮官就任以降、“欧州組至上主義”とも言えそうなメンバー構成がたびたび批判の的になっていたが、今回の日韓戦を見る限りでは、それもやむを得ないだろう。

 GKに関しては、中村が2~3本の決定的シュートを防いだものの、「優勝という結果が達成できなかった以上、自分たちは評価されるべきではない」と本人も言うように、日本のゴールマウスを22歳の守護神に託せるという絶対的信頼を与えられるところまでは至らなかった。

 とりわけ、ハイボールの処理には不安を残した。シュートストップやセービングは高く評価される彼も、高さの部分はどうしても物足りない。その穴をいかに埋めていくかが課題として突き付けられた。

 守備陣もハリルホジッチ監督がここ最近、固定している酒井宏樹(マルセイユ)、吉田麻也(サウサンプトン)、槙野智章(浦和)、長友佑都(インテル)の牙城を崩す人間の出現が求められたが、彼らに一番近かったはずの昌子でさえキム・シンウクに好きにやられてしまった。

「1失点目はいろんなことで迷ってしまった。何を言われようと明らかに僕の力不足」と本人も自戒を込めて語ったが、このままではロシア行きが危うくなる可能性すらゼロではないかもしれない。

 中国戦で新境地を開拓した植田直通(鹿島)にしても、競り合いではよさを見せていたが、右サイドバックとしてはどうしても不慣れな印象は否めなかった。ロシアで戦うセネガルなどにはキム・シンウク以上の高さとパワーを誇る選手もいるだけに、植田をどう扱うかは今後に向けて検討すべき1つのテーマかもしれない。

●W杯メンバー滑り込みには、半年間でよっぽどのインパクトが必要

 中盤3枚もこの日は及第点を与えられなかった。国際経験豊富な今野も、今年の代表戦11試合出場2得点の井手口陽介(G大阪)も修正力を示せなかったのは特に悔やまれる点だ。

 今野は長谷部誠(フランクフルト)と併用可能なくらいの能力は備えているはずだし、それが中国戦でも明らかになったが、韓国にはデュエルでも競り合いの部分でも負けていた。井手口に至っては消える時間が長すぎた。

 彼らのような欧州組同等のトップ選手が自らアクションを起こし、流れを変えていくようなアプローチができなければ、日本代表は本当に厳しくなる。「ハリルの申し子」と言われる井手口は特に短期間での劇的な成長が強く求められるところだ。

 FW陣も伊東と小林の2人がかすかな希望を示すのみにとどまった。伊東は冒頭のようにPK奪取に成功し、持ち前のスピードある仕掛けで何とか状況を変えようとしていたが、肝心なところでボールを受けられなかったり、キープできないなど、国際経験の少なさを垣間見せた。

 そのあたりは同じ右FWを争う浅野拓磨(シュトゥットガルト)や久保裕也(ヘント)、本田圭佑(パチューカ)に比べると見劣りする部分だ。小林にしても真ん中と右の両方をこなせる万能性は武器だが、国際舞台でのゴール数がいかんせん少ない。大迫勇也(ケルン)や岡崎慎司(レスター)と競争するとなると、そのマイナス面は否定できないだろう。

 こうした現状を踏まえると、ロシア本大会は“欧州組偏重メンバー”で挑むしかないのが現実か。日韓戦で惨敗を喫したメンバーが最後の最後で滑り込むためには、残された半年間でよほどのインパクトを残さなければならない。

 たとえば、井手口であれば、噂されている欧州移籍に踏み切り半年間でトップレベルの経験値を引き上げる、小林であれば来季Jリーグでの開幕からのゴールラッシュを見せる、中村であれば課題のハイボール処理も含めて公式戦で完封を続けるといった目覚ましい働きが求められる。

 いずれにしても、今回の屈辱を生かすか殺すかは個人個人の意識と取り組み次第だ。ハリルホジッチ監督体制でこのままロシアへ行くことにも大いに不安は残るが、体制が変わらないのであれば、プレーする側が変わるしかない。指揮官の戦い方だけに捉われず、自己判断できる選手になるべく、彼らにはより強い自覚を持ってもらいたい。

(取材・文:元川悦子)

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