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AIは著作権者になれるか―― 人工知能が生み出した創作物は誰のもの?

2017/12/18(月) 11:40配信

デイリー新潮

人工知能と人間の共創

 実は、著作権の権利主体を巡っては、AI以外にも注目を集めたニュースがある。AIが自動生成した創作物については現行法上、著作権は認められないが、それでは「猿」の場合はどうなのか。日本では、人間以外の動物(アニマル)には権利能力がないため、著作権の主体として認められない。ただ、米国では興味深い判決があった。

 2011年、イギリスの写真家であるデイビッド・スレーター氏はインドネシアの森林を訪れた。その際、持参したカメラを放置していたら、雌のクロザルが勝手に操作して自分で自分を撮影していたのだ。猿による「自撮り」である。スレーター氏がネット上に公開すると、愛くるしい猿の自撮り写真は、たちまち世界中に拡散。アメリカでも流行した日本の忍者漫画にちなんでこの猿は「ナルト」と名前が付けられ、大人気となった。だが、写真家と野生動物の微笑ましいエピソードは、後に意外な展開を迎える。

 発端は、この自撮り写真がウィキペディアに掲載されたことだ。スレーター氏は自身に写真の著作権があるとして、著作権侵害で訴えた。一方、被告となったウィキメディア財団は「人間以外は著作権を所有できない」と主張。結局、裁判所は、人間以外の動物による作品は著作権の対象とならないと判断した。ナルトの写真については、「人ではなく動物が撮影したものであることから、誰も著作権を有さない」との判決が下されている。

 現状、日米ともに人間を除く動物(アニマル)には、著作権の発生を認めないという結論に至っている。だが今後、バイオ技術が進んで動物が人間のような知性や創作能力を獲得したり、映画「猿の惑星」のように猿が進化を遂げたりしたらどうだろうか。まさにSFの世界だが、科学技術の発達によってAIやアニマルが人間に匹敵する、もしくは人間を凌駕する芸術性を持つ可能性は否定できない。(中略)

 AIを扱うこと自体は、もはや珍しいことではなくなっている。だが、AIに携わった方であればご理解頂けるであろうが、汎用的な人工知能技術は決して万能ではなく、それをカスタマイズできる優秀な開発人材と、人工知能に学習させる豊富なデータ量、さらに、データを処理する適正なアルゴリズムが必須となる。まだAIだけによる新たな発明を期待するのは時期尚早かもしれない。

 とはいえ、AIに過去の特許庁のデータベースを全て分析させることは可能だ。その上で、審査官がどのような出願を特許として認可するか、はたまた拒絶するかを学習させれば、より効率的に特許出願することもできる。

 AIが人間と足並みを揃えて芸術的な才能を開花させたり、まったく新しい発明をもたらす「共創」時代は、目と鼻の先まで迫っている。人工知能は更なる進化を遂げて人智を超えた作品、それこそ不老不死の創薬やタイムマシーンを実現してくれるかもしれない。

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 全文は、18日発売の「新潮45」1月号に掲載。AIの進化過程や、著作権の問題などをより詳しく解説する。

白坂一(しらさか・はじめ)弁理士。1977年大阪生まれ。防衛大学校卒業後、富士フイルムの知的財産本部に勤務。「知的財産管理技能検定」技能検定委員に就任。株式会社ゴールドアイピー代表として大手企業の特許取得業務に携わる。

「新潮45」2018年1月号 掲載

新潮社

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最終更新:2017/12/20(水) 15:05
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