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迷走する日本が、同じ島国アイスランドのサッカー強化に学ぶべきこと

2017/12/20(水) 11:41配信

webスポルティーバ

 桶狭間の戦いに備える織田家の心境にも近いだろうか。2018年6月のロシアW杯に初出場するアイスランドは、大会史上最も人口の少ない国(約33万人)だ。新たな歴史の舞台となるロシア大会ではグループDに入り、人の数では到底及ばないアルゼンチンやナイジェリアといった大国に挑む。

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 信長の率いた少数の精鋭たちが今川家の大軍を破ったように、奇襲は成功するのか。主将アーロン・グンナルソンのロングスローという飛び道具や、ギルフィ・シグルズソンの異才で相手守備陣に風穴を空け、守っては氷河のような厚い堅陣を築く。

 戦国時代に勇猛な武将たちを鼓舞した陣太鼓は、”バイキング・クラップ”に置き換えられようか。EURO2016(フランス)でフットボールファンの間に広まった、音も振りも大きな、統一された手拍子だ。この競技にマグマのような熱を捧げるバイキングの末裔(まつえい)たちは、腹の底から重低音を響かせ、目にも壮観な応援で進化した代表チームをサポートする。

「(EURO2016の)オーストリア戦後にファンと一緒にやることを決めた。その前の試合でも手拍子を聞いていたし、グループステージ突破をサポーターと共に祝うには最適なものだと思ったから。国、ファン、選手、スタッフ全員にとってスペシャルなものだ」

 キャプテンのグンナルソンは『FIFA.com』で今年1月に公開された『アイスランドの成功の秘密』というドキュメンタリー映像でそう語っている。EURO2016のラウンド16でイングランドを倒し、初出場で8強の壮挙を果たして帰国した後にも、大勢の国民と共に頭上で手を叩いた。

 一方、同代表を描いたドキュメンタリー映画『Inside a Volcano』は今年、ニューヨークで開かれたフットボール映画祭『kicking + screening』で最優秀賞の”金の笛”を受賞。同国史上初のメジャートーナメント、EURO2016本大会出場を決めるまでの彼らに密着した作品だ(機会があれば、フットボールファンにはぜひ観てほしい)。

 その冒頭に描かれていたように、アイスランドは2013年11月のプレーオフでクロアチアに敗れ、初のW杯出場を目前で逃している。2017年9月に現役から退いた、同国のレジェンドであるエイドゥル・グジョンセンは敗戦後のインタビューで涙に暮れた。

 しかし、アイスランドはもともと、W杯本大会出場など”夢のまた夢”と捉えられても仕方ないようなチームだった。前々回の南アフリカW杯が開催された2010年時点でのFIFAランキングは112位。現在でいえば、フェロー諸島、ジョージア、アゼルバイジャンなどと同等だ。予選で脇役の座を脱することはなかった。

 ところが、1990年代後半から国を挙げて取り組んできた長期的なプロジェクトが、10年余りの助走期間を経て実を結び始める。その間、北大西洋上に浮かぶ小さな島国はフットボールのインフラを整備した。

「長い冬の間、雪はそれほどでもないが、冷たい強風が屋外でのスポーツを困難にしていた」とヘイミル・ハルグリムソン監督が明かすように、それまでは初夏から秋口までしかプレーできなかったが、人工芝の屋内ピッチを多く作ったことで問題は解決された。しかも、国内リーグ1部のブレイザブリクUBKのユースヘッドコーチを務めるハコン・スベリソンが「性別、レベル、経験に関係なく、誰でもここを利用できる」と語るように、どんな人でもこれらの施設でボールを蹴ることができる。

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最終更新:2017/12/20(水) 11:41
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