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社員が痴漢で逮捕「退職金なしで懲戒解雇」できる?

2017/12/28(木) 15:11配信

日経BizGate

起訴休職制度の活用

 もし、自社の社員が痴漢で逮捕されたら、その社員を退職金なして懲戒解雇できるでしょうか。「従業員が罪を犯して逮捕されたら、そんな困ったヤツは即解雇で放り出せばいい。そんなの常識的に考えて当たり前でしょ」と考えておられる経営者の方もいらっしゃるかと思いますが、実はそんなにあっさり従業員を強制的に辞めさせるわけにはいきません。

 無論、世間一般には、罪を犯して警察に逮捕されたような場合は、こっそり会社を去る、というケースも多いように見受けます。

 しかしながら、そんなケースばかりではなく、「犯罪は犯罪。そりゃ、悪いことをした。でも社員としては優秀だし、まだまだ働けるし、定年まで勤めたい」と言い張って来られた場合、この社員を、本人の意に反して、解雇したりできるか、というと、事はそう簡単には運びません。

 本人から自主的に辞めてくれるなら格別、本人の意思に反して、無理やり会社から追い出す解雇、その他の不利益処分を行うためにはかなり高いハードルがあり、乗り越えるには一苦労するのです。

 また本人が罪を犯したことを認め、自白して反省しているならともかく、「オレはやっていない! 裁判を戦う」と無罪を主張している人間に対して、「臭いものには蓋」とばかりにいきなり解雇するのは、無罪推定原則にも反し、人権上も問題になります。

 そこで、起訴休職制度というものが就業規則上定められています。「従業員が何かの刑事事件で起訴・拘留され刑が確定されるまで休職扱いとする」というものです。

 「普通の休職扱いと何が違うの?」という疑問の声が聞こえてきそうですが、本来的な休職制度は、従業員が勤務とは何の関係もない日常生活での傷病のため会社で働けないケースで、会社が一定期間の休職を命じ解雇を猶予するというのが趣旨ですから、両者は全く異なります。

 特に、顧客層に思いっきり反感を買い、会社の信用がガタ落ちになるような破廉恥な犯罪に関係したと疑われている従業員を、グレーな「病欠」扱いとしておくと、社内外から批判を浴びかねません。

 そこで、起訴により企業の社会的信用が失墜し、職場秩序に支障が生じるおそれがある、といった合理的要件の充足を前提として、起訴休職命令を発出する、という就業規則上の扱いが正当化されます。労働者サイドの都合による休職ですと、労働者自らの帰責事由による労務提供不能という状況になりますので、当然賃金は発生しませんが、就業規則においてもそのあたり明記しておいた方がいいでしょう。

 「混乱を避けるため、自宅待機あるいは当面は出社及ばず」なんていい加減な命令をすると、「オレは働けるし働く気マンマンだが、会社に来るなと言われたから会社の命令にしたがって、働きません」という状況ですから、当然ながら、会社は賃金を払わなければなりません。

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最終更新:2017/12/28(木) 15:33
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