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奇跡の乗り物スーパーカブ 実用の美、磨き続けて60年

1/5(金) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 「ロングセラーはデザインの良さだけでなく、作り手側の商品に対する愛、ストーリーこそが大切」と語るのはロングライフデザイン活動家のナガオカケンメイ氏。第1回のカルピスに続き1958年の発売以来60年の歴史を持つホンダのスーパーカブを取り上げる。

■ナガオカケンメイの目

 創業者の想いを受け継ぐ。簡単なことではありませんが、ホンダには創業者の本田宗一郎さんと藤沢武夫さんの傑作が今も改良を重ね、唯一の商品として存在しています。それが「スーパーカブ」です。この商品を作り、売るということは、2人の想いに触れることと一緒。その想いがホンダの社内から販売店、そして海外へ広がり、多くのファンの心を1つにしていると言えます。ロングライフデザイン商品の共通点は開発者の熱い想い。ホンダというブランド全体を見ても、やはりスーパーカブから伝わってくる創業者の想いで形作られていると感じます。

 老舗の多い京都の商売の原則は「あつらえ」。つまり、架空のターゲット設定で商品開発するのではない「あの人のため」に作る。スーパーカブにも「おそばやさん」という具体的なターゲットがあり、当時のカタログにも出てきます。業務用としての性能を意識していった結果、郵便局員の販売車として採用。その過酷な使用にしっかり付き合っていくことでますます性能を高め、最初は市販品と郵便局仕様を分けていたそうですが、今はほとんど市販品と差はないとのこと。業務用の強さと用の美とも言えるデザインは、民芸の思想に似た美さえ感じられます。すごいことです。

 大ヒットの裏にはユニークな販売網作りもありました。材木商や乾物屋などバイク販売の経験のない店の軒先を借りたのです。要するに、専門的なメンテナンスや設備にあまり頼らなくてもいいように作られた完成度のずば抜けて高いバイクと言えます。通常のバイクの発想をとことん超えて発想していったのでしょう。その頃ではおおよそ考えられないくらいの斬新な発想だったでしょう。

 スーパーカブは商品が常に少しでも良くなるよう、改良を繰り返しています。コクヨのキャンパスノートの開発と同じで、モデルチェンジの時期が決まっていない。新型を売りに「何代目」的に打ち出すことはせず、とにかく時代が求めればすぐに改良をしていく。そして荷物の積み下ろしがしやすい高さを守る。そうして作られていました。

 ロングライフデザインを持つ企業には共通して「会社の創業の想い」を、関わるすべての人たちと共有する工夫があります。カップヌードルの日清にある発明記念館のようにです。創業者の発案した未来を見据えた素晴らしい製品に改良を続ける様子は、ホンダという企業作りそのものだと思いました。

ナガオカケンメイ デザイン活動家。時代を越えて長く続くロングライフデザインの研究所「D&DESIGN」()を主宰。D&DEPARTMENTデザインディレクター。

 以下では「つくる」「売る」「流行」「つづく」の4つの観点からスーパーカブのロングセラーの秘密を解き明かす。

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最終更新:1/5(金) 7:47
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