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被害者の漁師は「全部、オレのだ!」と叫んだ――北朝鮮木造船“盗難事件”の全真相

1/8(月) 8:31配信

デイリー新潮

バイクまで海に棄てた

 吉田さん個人の被害だけでも100万円を超える。漁協などの被害を合わせると総額800万円近いという。しかも、その盗まれた品々のほとんどは――。

「あいつら、警察に見つかって逃げる時に海に棄てたんだよ。バイクも棄てていた。証拠隠しなんだろうけど、ひでえことをする」

 12月9日になって、いずれも自称の船長カン・ミョンハク(45)、船員リ・ヨンナム(32)、同リ・トンナム(59)の3人が北海道警に窃盗容疑で逮捕される。だが、他人様のジャンパーまで盗むような連中に補償を求めたところで無理である。かといって、彼らのバックにいるのはあの北朝鮮である。一体どこに話をつけたらいいのか悩むうち、同国の在日本大使館を自認する在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が交渉の席に着いた。

 12月25日のことだ。松島町内で行われた協議には、施設を所有する松前さくら漁協の佐藤正美組合長(73)や前出の吉田さんらが出席した。佐藤組合長が言う。

「総連側は、日本人の弁護士が代理人として出席しました。開口一番、総連はお金がなくてとても弁償できる状況にありません、と言うんですよ。そして、松前町にはお世話になっているとも……」

 松前町には、専念寺という浄土真宗では道内最古の寺がある。境内には、戦時中、旧国鉄松前線(すでに廃線)の敷設工事に従事して亡くなった人の慰霊碑が建っている。碑には朝鮮人の名も刻まれ、毎年、慰霊祭が開催されているという。韓国同様、強制労働で世話になったとでもいいたいのだろうか、もちろんこの場に持ち出す話ではない。

50万円で条件をつけた朝鮮総連

「そして“見舞金”として約50万円は出す、と。その代わりと出してきた条件というのが、逮捕された船員たちの刑事処分を軽減する署名に同意して下さいというわけです。お詫びすら言わずに、条件まで出してくるのですから、話になりませんよ。1時間も経たずに打ちきりました。総連が何を言っているのか知りませんけど、弁護士は日本人なんだから、私たちの気持ちぐらいわかると思いますけど、法律の世界ではそういうものなのですかね。それっきり、年が開けたいままで、何も言ってきませんよ」

 だが前出の吉田さんの考えは少し違っていた。

「こう言ってはなんだけど、実はオレはさ、50万円でも貰えないよりはマシかなとも思ったんだ。道所有の発電機や組合のものは、補償されるだろうけど、個人所有のものは補償するって話にもならないかもしれないしね。今日(1月5日)だって、もうじき漁が始まるから磯舟の巻き上げ機をやっと島に設置してきたんだけどさ……」

 心配はもっともだ。だが、そこは日本である。松前町には、全国各地から寄付金の申出が殺到。町と漁協は「復旧協議会」を立ち上げ、寄付金の口座を開設した。

岩のりのシーズンがスタート

「いただいた寄付金からは、吉田さんの被害を優先的に充てたいと思っています。小屋がないと漁に出たみんなが困りますからね」とは佐藤組合長だ。

 今年の漁も間もなく始まる。冬の松前は、松前小島の岩場で捕れる岩のり漁が盛んだ。小屋の復旧がまだできていないため、泊まりがけでなく日帰りでの漁が続く。そのため例年の量は期待できないともいうが、なんとかのりきってもらいたいものだ。

週刊新潮WEB取材班

2018年1月8日 掲載

新潮社

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最終更新:1/8(月) 8:31
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