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中国対アメリカの農業大戦争が始まった

1/13(土) 14:14配信

ニューズウィーク日本版

外国企業を買収して農業大国の座を目指す中国

これまでアメリカは、世界最大の穀倉地帯だった。広大で肥沃な農地と最先端の農業技術によって、世界中に食料を提供してきた。

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だが農業におけるアメリカの主導的な地位が、いま重大な試練に直面している。中国が農業部門の活性化を目指し、積極的な取り組みを行っているためだ。

世界の総人口は、50年までに100億人近くに達する見込み。それに伴い、食料生産量を70%増やす必要がある。農業が世界経済に占める地位は、ますます大きくなる。米農業界は中国の挑戦に対抗するため、競争力を維持しなくてはならない。

中国の指導層は農業の近代化を、最優先課題の1つに掲げている。中国共産党が重要な政策課題を記す新年最初の文書「1号文件」は14年連続で、農業を重点的に取り上げた。

中国は人口では世界の19%を占めているが、農地ではわずか7%だ。国内の食料需要を満たし、国際市場でアメリカに対抗するには、農業生産の質と量を改善する必要がある。

この目標を達成するには、高度な農業技術が必要だ。技術開発能力で後れを取る中国は、外国で積極的な投資を進めている。農業生産技術に関する知的財産を入手するために、過去10年間で1000億ドル近くを投じた。

昨年には国有化学大手の中国化工集団が、スイスの農業大手シンジェンタを430億ドルで買収。過去最大規模の外国企業買収となったこの一件は、農業大国を目指す中国の本気度を示している。

バイオテクノロジー大手6社(ビッグ6)の1社であるシンジェンタを買収したことで、中国は農業関連分野で世界の知的財産のかなりの部分を手に入れただけでなく、欧米に対抗するという国家的使命を追求する強大な企業も抱えることになった。

欧米の農業大手各社は、中国の全面的支援を得ている競合企業に対抗する準備をしておくべきだろう。そうしないと中国が欧米企業を次々と買収し、重要な知的財産を握ることになりかねない。

<欧米各社の連携が重要>

研究開発能力では、アメリカが中国よりもはるかに優位にある。この地位を維持するために、アメリカの政府と民間部門は新たな革新的技術を開発する取り組みを改めて強化すべきだろう。

さらに中国に対抗する1つの方法が、統合戦略を通じて革新を加速させることだ。米農業会連合と米上院農林委員会の主任エコノミストを務めたロバート・ヤングは、専門分野の異なる農業関連企業を統合することが革新的な研究プロセスの追求につながると提唱している。

昨年9月には、アメリカの農業・化学大手であるダウ・ケミカルとデュポンが対等合併。ドイツの医薬・農薬大手バイエルも、農業バイオ技術大手の米モンサントを買収することで合意している。

こうした動きはアメリカで新たな研究開発関連の雇用を創出し、中国が貴重な知的財産を握るのを阻止することにつながりそうだ。各規制当局は、欧米各社が中国に対抗するための取引を邪魔しないようにするべきだ。

世界の食料需要が高まり続けるなかで、アメリカは農業をこれまで以上に経済の重要部門として位置付けるべきだろう。トランプ政権と米農務省は、今こそ農業部門の強化策に乗り出すべきだ。

方法は2つ。1つは農業の革新を支持し続けること。もう1つは、民間部門が現在の力強い立場を維持できるよう市場の力を損なわないことだ。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年1月16日号掲載>

フラン・タウンゼント(元米大統領補佐官)

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