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韓国の「慰安婦新方針」、どっちつかずで日本が無視したら終わり?

1/16(火) 12:21配信

Wedge

 韓国の文在寅政権は「積弊精算」というスローガンを掲げて、李明博、朴槿恵という保守政権の9年間を全否定することに一生懸命だ。たしかに問題があったとあばかれた過去の政権の行為には、問題にされても仕方ないと思えるものが少なくない。そうした意味では「やられる側」にもおおいに問題があるのだが、やはり強引さは否めず、どうしても「報復」という言葉を連想してしまう。

 そんな状況下で進められたのが、慰安婦問題をめぐる日韓合意についての検証であり、政権としての新しい立場の表明だった。ただ外交問題は内政とは勝手が違う。朴槿恵政権を否定するために走り出したが、よく考えてみたら対日外交に大打撃を与えかねないことがわかってきた。

 だから、合意を実質的に否定しているのに再交渉や破棄には踏み込まないという、どっちつかずの新方針になってしまった。日本では「新たな謝罪を要求してきた」と受け止める向きもあるが、それは違う。安倍政権が応じないことは百も承知なので、日本が自発的に何かしてくれることを「期待」するという弱含みだ。朴槿恵政権初期のように慰安婦問題を前面に出して日本を攻め立てようなどという気概は感じられない。

 しかも実は、韓国の世論が盛り上がっているということもない。そうした状況を考えると、日本が無視してしまえば外交問題として再燃することはないように思える。ただ、日本が過剰な反応をして韓国世論を刺激し、韓国政府が動かざるをえなくなって今度は日本世論を刺激するという負のスパイラルに陥った場合には様相が変わってくる。残念ながら日韓関係ではそうした事態が珍しくないので、実際の展開はしばらく推移を見守る必要があるだろう。

河野談話の検証と比較しての違和感

 韓国の当局者や研究者たちは、日韓合意の検証について「安倍政権による河野談話の検証のようなものだ」と釈明してきた。本当は破棄したいけれど、現実的には難しい。それでも支持者向きのガス抜きは必要だ、という意味だ。

 安倍晋三首相が河野談話を破棄したかったけれどかなわず、ガス抜きとして検証を行ったのは事実だろう。ただ、安倍政権は河野談話の継承を首相自身が明言してから検証に着手した。検証を行ったこと自体がまぎらわしいメッセージであったことは否めないが、検証結果の発表後に首相がことさらに談話の価値をおとしめる発言を繰り返すということはなかった。

 これに対して文在寅大統領は合意に対する批判的な姿勢を繰り返しながら検証を始めさせ、結果発表後には「合意で慰安婦問題は解決されていない」と主張している。この二人の態度を同列に論じることには無理があろう。

 二つの検証結果自体にも違いを指摘せざるをえない。

 河野談話の検証結果は、談話作成の過程で韓国との調整があったことを認定しつつ、結果として談話は客観的な認識に拠って作成されたものであることを裏付けた。検証チーム座長は結果発表を受けた記者会見で「日本は絶対に認められない事実は認めていない。韓国も立場は譲っていない」と語っているが、まさにその通りである。韓国では河野談話の価値を傷つけたという評価が強いけれど、検証報告書をきちんと読んでいるのだろうかと疑問を持たざるをえない。

 一方で日韓合意の検証結果には、かなり強い政治的配慮が感じられる。政権側が期待した大きな問題が出てこなかったという点では河野談話の検証と同じだが、日韓合意の場合にはそれでも問題だったという結論を導きださなければならないと無理をした感がある。

 検証結果は、正規の外交ルートを排除した青瓦台(大統領府)主導の「秘密外交」だったと合意を批判した。さらに、日本側に有利な「非公開の合意」があったと非難し、元慰安婦の意見を十分にくんでいない合意だったと結論づけた。

 どれも首をひねらざるをえない指摘だ。外交当局間の交渉が行き詰まった時に、首脳が信頼する側近に交渉させることは珍しくない。青瓦台が韓国外務省の意見を無視したという指摘もあったが、これは国内プロセスの問題にすぎない。報告書からは、朴槿恵政権の青瓦台にすべての責任を押し付けたいという思いしか感じられなかった。

 「非公開の合意」というのも、日本側が懸念を表明した点について韓国側が立場を説明したにすぎず、とても「合意」と呼べるようなものではない。朴槿恵政権が表明した立場に不満を持つことはできるだろうが、合意にケチをつける材料としては弱すぎる。

 元慰安婦の意見を十分にくんでいないというのも、そもそも何を基準とするのか不明確だ。報告書によれば、韓国外務省は2015年だけで15回も元慰安婦の支援団体に接触して意見を聞いたり、交渉の概要を説明したりしている。本当に機微な部分の説明はされなかったということだが、外交交渉というものの性格を考えれば仕方のない面があるだろう。

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最終更新:1/16(火) 12:21
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