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スポーツクラブが抱える日本の会社文化とのズレ。徳島が無名監督に賭けた理由

1/29(月) 19:57配信

footballista

岡田明彦 徳島ヴォルティス強化部長 独占インタビュー

「契約切れ→フリー移籍」が主流のJリーグで、あえて違約金を出して若い選手の可能性に懸けているクラブがJ2にある。柿谷曜一朗やドゥンビアのブレイクにも一役買った徳島ヴォルティスだ。J2では珍しい高卒重視、TCや連帯貢献金での収入確保、謎のスペイン人監督の招へい……。岡田強化部長にユニークなクラブ戦略の狙いを聞いた。


インタビュー・文 川端暁彦


投資文化と予算文化
Jのクラブは全体的な傾向として
収支をとんとんにして収めるというイメージ


── まずは岡田さんご自身のここまでのキャリアを教えていただけますか。

「話すほどのものでもないですよ(笑)。小中高と普通にサッカーをしていて、中京大学では指導者になりたくて、その勉強をしていましたね。最初は教員も考えていたのですが、やっぱりプロのコーチになりたいなと思って、いろいろな方に繋いでいただきながら、大塚製薬サッカー部(現・徳島ヴォルティス)がたまたまアシスタントコーチを募集していて、そこに滑り込ませていただきました。大学生でしたから、『どこも引っかからなければ、そのままバイトして海外とか行ってみるか!』くらいのイメージでしたよ。その後は育成年代の指導もして、徳島がプロ化するところで強化部に入りました。そしてクラブがJ1からJ2に落ちる2014年シーズンの後から、中田仁司さん(元横浜FC監督)に代わって強化部長をさせていただいています。普通です(笑)」


── ブラジルに留学されていたと聞きましたが。

「いや、行ってません(笑)。強化担当の時に通訳がいなかったので、ブラジル人選手のサポートを自分が担当したんですね。ポルトガル語の単語を繋げながら何とか話していて、エージェントともそうやって話していました。だから『ブラジルに行っていたらしい』とかいう話になっちゃうんでしょうね(笑)。強化と言っても最初は素人ですから、自分にできることは何だろうと夢中でやっていた感じです。でも今になってみると、そういうことも全部不思議と生きてきていますね。当時とは予算規模がまるで違いますからね。(年間予算が)6億くらいでしたから、今は16億くらいなので、クラブとしてできることの幅がまるで違ってきてますね」


── 強化の仕事を始められた当時と今ではJリーグの移籍市場も変わったと思います。

「(95年の)ボスマン判決以降の影響は大きかったですね。移籍係数の制度がなくなって、フリーになりましたから。ただ、Jリーグのクラブのありようが変わったかというと、そうでもないかもしれません。Jのクラブは全体的な傾向として利益を上げようとか投資していこうというよりも、収支をとんとんにして収めるというイメージでやっているところが基本ですから」


── 予算文化ですね。

「その良し悪しは別として、あると思います。そもそも、日本には移籍マーケットの文化というか、選手を『売り買い』して利益を得たり、投資したりという発想自体がないところもあります。契約年数があるなら、その間はまず頑張ってもらいましょうということですね。日本という国の文化でもあるかもしれません。限られた資源の中で節約してやりくりしていくことを是として、投資的な発想は好まれない」


── もったいない文化ですね。

「価値に対する判断軸が欧州とは違っている。例えば年俸の設定の仕方からして違いますから。『勤続年数』が評価されたり、『上げ率』とかの『調和』が重んじられる。マーケット文化があるのであれば、当然ながら『より高く売れる可能性のある選手の年俸が高くなっていく』のだと思いますが、そもそも売り買いする感覚がない日本サッカーでは、違う論理の方が大きくなっているのは事実かもしれません。海外の人と話すと、『それ、おかしくない?』と言われることも多いですが、でも単純に『世界ではこうだから』と言っても、日本では受け入れられないでしょう」


── ただ、そこに流されるだけでは始まらないですよね。

「だからケースを作っていくという考え方だと思います。親会社や大きなスポンサーの人からすると馴染みのない考え方かもしれないけれど、『こういうやり方でこういう利益が出せるかもしれない。強化ができるかもしれない』というビジョンや方法論を説明して納得してもらうのも強化の仕事でしょう。あとは利益が出た時の次の投資案件を準備できているかどうか。単に選手を1人売ることに成功して単年度の利益が出ただけだと、多くのJクラブでは次の年から親会社や大口スポンサーから『じゃあ、来年からスポンサー料減らしていいね』と言われかねない現実があると思いますから」


── でも「投資」も難しいですよね。

「僕らはJ2ですから、良い選手を獲ろうと思っても当然ながら簡単ではありません。J1クラブでも契約できる選手を獲ろうとすると、2倍、いや3倍のお金が必要になってきますね。でも、30歳くらいの『次に売れそうにない選手』に3倍のお金を出して獲るのが本当にいいのかという話になってきます。例えば、そのお金で海外で人を雇って選手を探してもらえば、20分の1の年俸で良い選手を発掘できる可能性もあります」


── 普通にやっても難しいという感覚でしょうか。

「J2で6番目か7番目の予算規模ですから、Jリーグ全体の24、5番目ですよ。普通にやっていたら運が良ければ上がれるくらいで、J1で定着するのは無理という感じですよね。フライブルクなどの話も聞くんですけれど、なんかちょっと違うことをやっていかないといけないとは思っています。マネーゲームでは勝てないけれど、でも予算6億の時代と比べれば、はるかにできることは増えていますから」

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最終更新:1/29(月) 22:29
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