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スタンフォード大学が患者の余命を予測する人工知能システムを開発

1/29(月) 19:40配信

ニューズウィーク日本版

患者の余命予測は、慎重を期して行われるべきものであり、実際、複雑で難しいものだ。医師は、患者の年齢、家族や近親者の病歴、薬剤反応性(薬剤の薬理効果と副作用の発現の程度)など、数多くの要因を考慮しなければならず、自身のエゴや先入観を最大限に排し、ときには、ありのままに患者の余命を見立てることへのためらいなどとも葛藤しなければならない。

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■ 余命3ヶ月から12ヶ月の患者をおよそ90%の精度で予測

米スタンフォード大学の研究プロジェクトは、患者の余命を予測する人工知能システムの開発に成功した。

ニューラルネットワークによって膨大な量のデータを振り分け、学習する「深層学習(ディープラーニング)」の手法を用い、サンプルデータとして、1995年から2014年までにスタンフォード大学またはルシール・パッカード小児病院で治療を受けた約200万人の患者の電子健康記録を読み込ませ、学習させたところ、疾病の種類やその進行度、年齢などをもとに、余命3ヶ月から12ヶ月の患者をおよそ90%の精度で予測できるようになったという。

■ 終末期医療に切り替える適切なタイミング

この人工知能システムは、終末期医療(ターミナルケア)を適切に提供する上で役立つと期待が寄せられている。

終末期医療とは、患者とその家族の心身の苦痛やストレスを和らげ、生活の質(QOL)の維持・向上を目的として行われる医療や介護のことで、治癒の見込みのない患者が残された生活を心穏やかに過ごすうえで重要なものだが、そのためには、患者の余命があとどれくらいなのかを医師が知ることが不可欠だ。

この人工知能システムを活用できれば、終末期医療が必要と思われる患者を自動で選びだし、医師による診断なども総合的に勘案して、より適切なタイミングで、延命のための治療から終末期医療に切り替えることができる。

■ 余命予測の根拠が“ブラックボックス化”する懸念も

ただし、この人工知能システムは、深層学習の特性上、余命予測の根拠が“ブラックボックス化”してしまうという制約はある。たとえば、なぜ、その患者の余命を12ヶ月と予測したのか、医師はもちろん、この人工知能システムを開発した研究者さえも、わからないのだ。

しかし、疾病の根治を目指す治療とは異なり、患者の症状に対応して処置をする対症療法が中心となる終末期医療においては、必要となる医療や介護が、患者が病にかかっている理由によって影響されることはない。ゆえに、この人工知能システムは、終末期医療が必要な患者を特定するという目的においては有効に活用できると考えられている。

ある調査結果によると、アメリカ人の約8割が「自宅で生涯を終えたい」と望んでいるにもかかわらず、実際は、6割の人々が延命のための積極的治療を受けている間に病院で亡くなっているという。この人工知能システムは、人工知能と医師の力を組み合わせることによって、従来の治療だけにとどまらない、患者の本来のニーズに合った医療への道をひらく一歩としても注目に値するだろう。

松岡由希子

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