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新介護報酬で介護現場に「医療の介入」が高まることへの懸念

1/31(水) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

● 老化を逆行させる「医療」

 3年に1度の介護保険制度の改定内容が明らかになった。1月26日に開かれた第158回社会保障審議会介護給付費分科会で、厚労省が各介護サービスについて事業者に支払う報酬を示した。

 報酬は全体としては0.54%の引き上げだが、介護の基本的な考え方を揺るがしかねない新しい加算報酬が広がりつつある。

 社会保障費の伸びに危機感を抱く財務省から多くのサービスへ費用の削減要望が強い。そこで、厚労省は特定のサービスに加算して事業者を誘導することで、全体の費用を抑えていく方針を採った。

 事業者や利用者を納得させる手段として、取り込んだのが「医療」である。患部を元通りに戻す、すなわち治すことが医療の目的と言われる。もしも、要介護者がこの医療の手法で、介護保険を使わなくてもよくなるほどに「回復」すれば、総費用は下がる。こうした医療の発想を介護の場に持ち込むことへの疑問はないのだろうか。

 加齢とともに老衰の過程に入り、心身の機能が弱まっていくのが普通の人間であり、生物だろう。死に向かう日々が続くのは間違いない。ゆっくり進む老衰と寄り添いながら高齢者たちは日々の暮らしを営む。そこに「介護」が手助けすることで、生活の質が維持される。

 介護の基本は暮らしやすさを支援することである。一時的に「回復」が訪れても、死への歩みは避けられない。自然の摂理である。無理矢理、自然の摂理に逆らえば、摩擦が生じる。耐えられない苦痛、苦役を伴いかねない。

 普段の生活を重視する「介護」と、老化を逆行させて回復を目指す「医療」との間には、深い溝がありそうだ。「介護と医療の連携」は一筋縄では行かない。

● 「医療」がリハビリを通じて介護現場へ

 今回の改定のキャッチフレーズは、「自立支援」であり「重度化防止」、そして結果としての「適正化・重点化」である。

 最もわかりやすいのがリハビリだ。訪問リハビリと通所リハビリで、「医師の詳細な指示に基づく」マネジメント加算が大幅に増額された。従来の要介護者に加えて、要支援者にもマネジメント加算が新たに設けられ、訪問リハで月2300円、通所リハで月3300円となった。

 また、「自立支援」「重度化防止」の代表として、「生活機能向上連携加算」が幅広く適用されることになった。医師とリハビリ専門職の活用である。自前の事業所に専門職がいなくてもいい。

 外部の医療機関に所属する医師や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)が通所介護事業所などを訪問して、助言(アセスメント・カンファレンス)を行い、個別機能訓練計画を作成すると、1人につき月2000円の報酬が得られる。従来は1000円だったから2倍になる。

 これまでは訪問介護だけだったが、通所介護(デイサービス)をはじめショートステイ、地域密着型の特養や介護付き有料老人ホームなどに適用される。PTやOT、STが活動するには必ず医師の指示が必要。医療の考えがリハビリを通じて介護の現場に浸透していくことになる。

 次いで、排便・排尿の際に介助を要する人への「おむつ外し」を支援する取り組みにも医療職が必要とされる。「排泄支援加算」として、月1000円の加算を新しく設けた。「自立支援」につながるからだという。

 特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設(老健)などの施設でのことだ。居室内のベッド脇にポータブルトイレを置き、自分だけで排泄ができるようにすることなどが目指される。

 その条件として「医師、又は医師と連携した看護師が判断」するとある。これまで、医師の同意を得ないで「おむつ外し」を実践してきた施設は新たな対応を迫られる。

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