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ハリルが危惧する「最悪の事態」。屋台骨揺らぐ日本、目玉選手不在の可能性も【ロシアW杯全32チーム紹介】

2/2(金) 10:30配信

フットボールチャンネル

 6月14日に開幕する2018FIFAワールドカップロシア。グループリーグの組み合わせも決定し、本大会に向けて期待感は高まるばかりだ。4年に一度開催されるサッカーの祭典には各大陸予選を勝ち抜いた32チームが参加する。フットボールチャンネルでは、その全チームを紹介していきたい。最後はグループHの日本代表を取り上げる。(文:藤江直人)

【日本代表】試合日程・結果

●堅守速攻の戦い方が「日本にとって一番いいのでは」(長友佑都)

【日本代表】
FIFAランキング:57位(2017年12月)
監督: ヴァイッド・ハリルホジッチ(2015年~)
6大会連続6回目の出場
最高成績:ベスト16(2002年日韓大会、2010年南アフリカ大会)
アジア最終予選グループB1位通過

 2016年9月の初戦でUAE(アラブ首長国連邦)代表に逆転負けを喫し、その後の苦戦を強いられる序章となったワールドカップ・アジア最終予選を戦う過程で、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は戦い方における「最適解」を手にしたと言っていい。

 緊急登板の形で2015年3月に就任した指揮官は、日本が慣れ親しんできた、トップ下を置く「4‐2‐3‐1」で長く戦ってきた。もっとも、UAEに苦杯をなめ、その後にオーストラリア、サウジアラビア両代表戦も控える状況が指揮官の危機感を高めたのか。敵地でのオーストラリア戦(2016年10月)では本田圭佑を1トップに起用。ボールキープに長けた本田を起点に、堅守から速攻を仕掛ける形がより鮮明になり、ホームのサウジアラビア戦(同11月)では本田に代わり、待望論の強かった大迫勇也を復帰させた。

 年が明けた昨年3月のUAEとの再戦では、徹底した分析で相手を丸裸にする戦略家としての真骨頂を発揮。司令塔オマル・アブドゥルラフマンを封じるために中盤の形を逆三角形型に変更し、インサイドハーフに抜擢された今野泰幸がゴールなどで快勝した。

 迎えた同8月のオーストラリア戦。ポゼッション型に戦法を変えた相手のパス供給源を潰すために、インサイドハーフに猟犬を彷彿とさせる山口蛍と井手口陽介を起用。両サイドにはスピードに長けた乾貴士と浅野拓磨を配置する「4‐1‐4‐1」の布陣から、浅野と井手口がゴール。快勝とともに6大会連続6度目のワールドカップ出場を決めた。

 苦戦の末にたどり着いた「4‐1‐4‐1」は、ベスト16に進出した2010年の南アフリカ大会でも採用された。この大会で4試合を通じて躍動したDF長友佑都は、堅守速攻の戦い方が「日本にとって一番いいのでは」と語る。

「ハリルホジッチ監督が目指しているサッカーが唯一、いまの日本が世界で結果を出す可能性を高められるんじゃないかと感じている。相手にボールを持たれてもみんなで守って、泥臭くボールを奪って、カウンターを仕掛けていくスタイルが、僕たちに一番合っていると思う」

 勤勉さと規律正しさ、そして団結力という日本人の国民性を最も発揮できる戦い方と言ってもいい。ポゼッションが崇拝される傾向に異を唱えるハリルホジッチ監督は、ホームでのオーストラリア戦を「日本の今後の基準となる戦い方だ」と自信も寄せる。

 一方でワールドカップ切符を手にしてからの戦いでは大きな不安を残した。昨年11月のブラジル代表との国際親善試合では、指揮官をして「相手をリスペクトしすぎた」と言わしめた前半で立て続けに3点を失う惨敗とともに、歴然たる実力差を見せつけられた。

 相手の名前とプレッシャーに臆した前半の日本はあまりにナイーブすぎて、まさに大人と子どもと言っていい試合内容だった。続けて行われたベルギー代表戦ではメンタルこそ立て直したものの、ボールを奪った後の速攻で正確性とアイデアを欠いて0‐1で敗れた。

 極めつきは12月にホームで開催されたEAFF E-1サッカー選手権。国内組だけの編成で臨んだ日本は、引き分けでも優勝できた韓国代表との最終戦で1‐4と歴史的な惨敗を喫する。心技体のすべてで後塵を拝しただけでなく、試合後には指揮官の耳を疑う言葉が飛び出した。

「韓国が日本よりも強いことは、試合前からわかっていた。韓国のほうが格上だった」

 格上相手に戦略を駆使して勝利をもぎ取るはずが、2点のビハインドで迎えた後半開始の段階でも交代のカードを切らない無為無策。ベンチ前で“熱”を発することもない指揮官の姿を含めて、1年間のなかでも激しく乱高下した結果と内容に、大きな不安を抱えたままワールドカップイヤーを迎えた。

●目玉となる選手が不在となるかもしれない

目標:ベスト16
ノルマ:1勝

 2002年の日韓共催大会、2010年の南アフリカとベスト16に進出している日本だが、今大会も決勝トーナメント進出が第一目標となるだろう。

 もっとも、イタリア人のアルベルト・ザッケローニ監督のもと、ポゼッションを志向する「自分たちのサッカー」に絶対的な自信をもって臨んだ前回のブラジル大会は、ひとつの白星を挙げられずにグループリーグの最下位で敗退している。期待を大きく裏切った理由を、長友は「完全に力んでいました」と振り返る。

「先ばかりを見て、一気に高く飛んでいきたいくらいの気持ちでしたけど、物事はそんなに簡単にはいかない。自信が過信に変わって、そこを相手に突かれて足元をすくわれたというか。足元をしっかり固めないと、上手くいかなくなったときに崩れるのも早い」

 昨年末に自宅のあるフランスへ帰国したハリルホジッチ監督は、1月をグループリーグで対峙するコロンビア、セネガル、ポーランドの各代表を徹底的に分析する時間に充てると明言した。もっとも、映像を分析するだけではわからない部分もある。

 2月には何人かのヨーロッパ組を訪問する予定だが、たとえばセネガルで脅威となるFWサディオ・マネ(リバプール)とチームメイトだったサウサンプトンのDF吉田麻也、ポーランドのFWロベルト・レヴァンドフスキとボルシア・ドルトムントでともに戦ったMF香川真司から、性格や癖を含めた生きた情報を入手する作業も求められてくるだろう。

 日本にとって6回目のワールドカップは、初めて目玉となる選手が不在となるかもしれない。脱ポゼッション、堅守速攻路線をより鮮明にしているハリルホジッチ監督は、長く日本の屋台骨を背負ってきた本田圭佑、岡崎慎司、そして香川を昨秋から選外にしている。

 基本フォーメーション「4‐1‐4‐1」のなかで本田は右MFとしてスピード、岡崎は最前線でボールを収める術、香川はインサイドハーフを務める場合のインテンシティーが足りないと指揮官の目には映っているのだろう。

 あえて注目株を挙げれば、今冬にガンバ大阪からリーズ・ユナイテッドへ完全移籍し、レンタルでスペイン2部のクルトゥラル・レオネサに加入したインサイドハーフの井手口陽介か。

 昨年6月にA代表にデビューしたばかりの22歳は、衰えを知らない運動量でボールホルダーにアプローチし、激しい球際の競り合いを展開。ミドルレンジからのシュート力にも長けた、ハリルホジッチ監督の申し子的な存在となっている。

 一方で不動のキャプテンでもあるアンカーの長谷部誠は、昨年3月に手術した右ひざに爆弾を抱えていて、指揮官も「彼が出られないという、最悪の事態も想定して準備しなければならない」と危機感を募らせている。リスクマネジメントも大きなカギを握ってくる。

(文:藤江直人)

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