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長友佑都、急転トルコ移籍の舞台裏。数日も経ず決定、カギになった協力代理人の存在

2/5(月) 10:30配信

フットボールチャンネル

 7年間を過ごしたインテル・ミラノからガラタサライへの期限付き移籍が決まったDF長友佑都。日本代表不動の左サイドバックは、なぜ17/18シーズン冬の移籍市場が閉まる直前にトルコの強豪を新天地として選んだのだろうか。この決定の裏にある思惑とは。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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●インテルでは満足な出場機会を得られず

 2011年1月31日、長友佑都はアジアカップから当時所属のチェゼーナに戻ってくるや、一気に一気に移籍交渉が進み、ビッグクラブのインテルへの移籍することになった。それから7年、インテルを去る時もやはり早かった。

「ロシアW杯に向けた日本代表の招集に響くことを懸念し、長友は移籍をしたがっている」という報道がコリエレ・デロ・スポルトから出されたのが27日の朝。

 そして同日に行われたルチアーノ・スパレッティ監督の記者会見では、「私には、彼が出場機会が得られるところに移るべきかどうかを検討したがっているようにも感じられる。成熟した選手なのだから、彼の意向は何なのか我われに話して伝えるべきだと思う」と踏み込んだ発言も出てきた。

 そしてトルコ1部の強豪、ガラタサライへの移籍は数日も経たずに決定した。

 5ヶ月間のレンタルで、パス買取りのオプションは付帯されていないが、「今後についてはシーズン終了後にクラブと再度話し合う」と、代理人ロベルト佃氏の協力エージェントであるフェデリコ・パストレッロ氏はイタリアの地元メディアに語っている。

 長友はどういう背景のもとでインテルを去り、トルコのクラブを新たな戦場へと選んだのか。

 まず移籍そのものは急転直下ではあるが、出場機会に恵まれていない状況は続いていた。リーグ戦での先発は、11月7日のトリノ戦を最後に1試合もない。

 体格で勝るダビデ・サントンに左サイドバックのポジションを奪われ、また途中交代で呼ばれるのも2500万ユーロの移籍金を叩いて獲得されたダウベルトになっていた。ただ解せないのは、この二人も良いパフォーマンスを披露したわけでもなく、結局2人とも先発から陥ちる羽目になったということだ。

●当初打診があったのはベティスとフェネルバフチェ

 右サイドをやっていたダニーロ・ダンブロージオやジョアン・カンセロがこのポジションに回される始末。しかしそれでも、長友に声は掛からなかった。スパレッティ監督は「長友には限界がある」と公言し、サイズの小ささや攻撃面でのプレイの幅の少なさを問題視していた。

 しかしその代わり、別の選手を登用してもその部分の穴埋めができていたとは言い難い。何より今シーズンの長友のパフォーマンスは安定していたし、チームの好成績にも貢献していたのである。

 少なくとも、定位置から滑り落ちる理由となるようなミスを試合で犯していたわけではないのだ。「サントンやダウベルトよりも良いのに、なんで長友がいきなり使われなくなったのかは理解不能だ」という反応は地元ファンの中にも存在する。

「戦力外はピッチ上のパフォーマンスが理由ではないようだ。クラブ幹部はかなり前から、ユウトに対して『お前は5番手な』と言っていたらしい」とある地元記者は言った。

 ただいずれにせよ、国内カップ戦にも敗退したインテルでは、試合には出にくくなった。W杯イヤーにおいて出場機会を失うことになれば痛いのはやはり自明だ。そして長友は、移籍へと動くことになった。

 当初、クラブに対して打診があったのはベティスとフェネルバフチェだ。しかし、ベティスはインテルに対して問合せを行なった程度に留まり、あまり積極的ではなかったという。

 インテルは色気をだして、同チームの若手MFファビアン・ルイスとのトレードを成立させようとするが、将来が嘱望されるクラブ生え抜きの21歳は少なくともシーズン終了までの残留を希望し、そのまま進展はしなかった。なおファビアン・ルイスは、今冬の移籍市場終了後にクラブとの契約を延長している。

 一方のフェネルバフチェについては、長友サイドがあまり乗り気ではない。するとそこに、ガラタサライが参入してきた。国内で強いだけではなく、欧州カップ戦などにも頻繁に顔を出す名門である。

●話をまとめた協力代理人

 加えてガラタサライには、左サイドバックを熱望しているというチーム事情があった。現在チームに所属する本職の左サイドバックは、ルーマニア代表DFヤスミン・ラトフレビチのみ。しかしその彼も不安定で、ファンや地元メディアは「事実上このポジションには適任者がいないようなもの」と批判していた。

 ガラタサライは昨年の夏に、ユベントスからクワドゥ・アサモアの獲得に動き、選手からも合意を取り付けている。しかし後釜が見つからないことを理由にユーベが拒否。トルコの地元紙の報道では、少なくともユーベとの契約が切れる18年6月以降に来る確約は取り付けているとのことだが、半年早めて1月に連れて来ることもまた不可能だった。

 そのアサモアの代理人というのが、実は協力代理人であるパストレッロ氏だったのだ。アサモア獲得交渉にあたってクラブとの間にパイプを築いていた同氏は、長友の移籍話が出るや交渉の仲介役としてすぐに話をまとめた。

 長友からオファーの承諾が出ると、30日に先にイスタンブールへ飛んで段取りを整え、翌日には長友を呼んでメディカルチェック。そのままサインまでスムーズにことがまとまった。

 長友がガラタサライに移籍することは、インテルにとっても経営上のメリットがあった。長友の年俸分を節約できるのみならず、70万ユーロのレンタル料収入が入って来るからである。

 中国の家電小売業、ならびに通信販売で財を築いた蘇寧グループの資本下に入ったものの、中国政府から海外への投資をストップする通達が出たため、UEFAファイナンシャル・フェアプレー制の監視下にあるインテルは赤字を抑える経営努力をしなければならなくなっている。

 もっとも今冬には、選手の放出で移籍金収入を得ることも失敗。長友をはじめとした選手の放出は、さしあたりレンタル移籍だ。ピエロ・アウジリオSDは「年俸分を抑え、レンタル料を得たという点についても良かった」と地元メディアに語ったが、地元紙コリエレ・デッラ・セーラからは「はした金だ」と批判されていた。

●7年間にわたるインテルでの戦いにピリオド

 かくして長友は、7年間にわたるインテルでの戦いにピリオドを打つことになった。前述の通り、インテルには5ヶ月後に一旦戻って来ることになるが、その後については検討事項である。ただインテルでのサイドバック事情に変化がないのなら、再び出場機会を他に模索する、ということになるのかもしれない。

 そして長友は、SNS上に自分のユニフォームの写真を掲げ、惜別のメッセージを送った。それに対して、地元のインテルファンが次々と寄せたメッセージがなんと暖かく、いや熱かったことか。

「素晴らしいプロ」「君は素晴らしい人間だった」という多数の賛辞。これまでミスにも少なからず絡んだ選手だったから厳しい批判もされていたが、「僕は擁護してきてきたぞ」「みんな君のような気持ちで闘っていたらインテルはとっくに復興している」というメッセージも寄せられていた。

 無論、厳しいものもあったが、それすらも暖かい。

「こういう時に良い顔をするのは好きじゃない。お前はブレーメ(以前所属していた元ドイツ代表のアンドレアス・ブレーメ)にはなれないとオレは言ってた。でも自分の限界を知りながら、努力を惜しまず戦っていた長友という選手のことは忘れない」「ミスを取り返しに戻らず20mのランニングをサボる守銭奴を置くらいなら、ミスはするが頑張る長友を置いた方がはるかにましだ」と。

「クラブが最悪だった7年間、インテルのユニフォームを尊重してくれてありがとう」。多くのファンが書いていた。

●良好なコンディションは保証されている

 筆者自身、誤解をしていた不明を恥じなければならない。熱狂的に選手を支える南部クラブのファンとは違い、ミラノのファンは結果だけを見て掌を返す部分があると思っていた。厳密にはそうではないのだ。

 チームのために全力を尽くすという長友の本質をインテリスタたちは理解し、心から評価していた。その上で、結果も求めなければならないビッグクラブの現実を語っていただけなのだ。実際彼らは、長友が走る様については最後まで声援を惜しまなかった。

 個人練習を真面目にやり、食事から節制するようなエピソードは、地元メディアで積極的に紹介されていたことではない。地元のファンは純粋にサン・シーロで全力で走る姿を見て、長友という選手と人間の本質を感じ取っていたのである。実際この7年間で取材してきた試合での闘いぶりは、良いときも悪いときも全て含めて、濃密なものだった。

 イタリアの戦術的な守備は、若い時から叩き込まれるものだ。学生上がりの選手を腐していう訳では決してないが、長友はプロとしての下積みがあまりないというハンディを抱えながら、その最高峰にいきなり飛び込んだ。

 7年間よくここまで戦い抜いてきたし、この最後のシーズンはパフォーマンスにさらなる充実も見せていた。それだけに「コンディションはずっと良かった。僕の中では悪くて出れてない、って感覚じゃない」と本人が手応えを残した状態で、去らなければならなくなったのは悔しすぎる。

 ただその分、新天地に挑むにあたっての良好なコンディションは保証されているはずである。トルコ・テレコム・アリーナでも思い切り暴れて、熱狂的なガラタサライのファンの信頼を勝ち取り、ロシアW杯に繋げて欲しいものだ。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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