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選手の技+スケート靴の進化 5回転ジャンプは可能?

2/13(火) 10:57配信

日経ウーマンオンライン(日経ウーマン)

 こんにちは、著述・翻訳家の上野陽子です。平昌オリンピックが開幕しました。スポーツ技術の進歩には目を見張ります。

【関連画像】5回転ジャンプも夢ではない? (C) PIXTA

 例えば、男子フィギュアでは「4回転は当たり前時代」に突入し、5回転も可能になるのではといわれます。日本女子では浅田真央さんの代名詞であり、伊藤みどりさん、中野友加里さんの3人だけが跳べたトリプルアクセルを、今では15歳の紀平梨花選手なども公式試合で成功。ジャンプ合戦が繰り広げられています。

 これはもちろん、選手たちが厳しい練習で技に磨きをかけてこそできること。それに加えて大切なのが……道具の進化です。

●体重の3倍の負荷を支えるスケート靴、その重さは?

 つまりスケートなら、スケート靴も大切。この靴全体の重さってご存じですか? 靴には牛革を使い、ブレード(刃の部分)に鉄を用いていた頃に比べ、最近では合成素材が主流。耐久性がありながら、軽量化されています。もちろん選手の足の大きさなどにもよりますが、それでもブレードも入れて片足およそ2kg前後だから、けっこう重そうですよね。

 羽生結弦選手をはじめとするトップ選手たちの靴のブレードは、氷が当たる部分に鉄、軸部分にカーボンという混合タイプが主流。これで普通より片足で50~100gほど軽くなるのに、強度はあまり変わらないのだそうです。

 ジャンプから着氷するときに足首にかかる負荷は、なんと体重のおよそ3倍。着氷時の衝撃も吸収できるようになるなど靴がより進化すれば、けがのリスクも抑えられます。よって、エレメンツ(採点評価される技術)が行いやすくなります。

 それほど大切な靴。誰が開発しているんでしょうか。

羽生選手の靴を作っているのは誰?

 スケート靴は、靴の部分とブレードの部分で別々のメーカーのものをこだわって使う選手も多いほど、大切なもの。羽生選手は、イタリアのEDEA社の最軽量スケート靴「ICE FLY」を愛用。多くの選手が使用する人気メーカーです。同社のサイトでは、こんなふうに羽生選手が紹介されています。

 彼は音楽に合わせて滑っているのではなく、自らが音楽を創造しているかのようだ。

 ブレードが優雅で伸びやかに銀盤を滑るパフォーマンスにおいて、結弦自身が音楽である。

 (EDEA社サイトYuzuru Hanyuより 私訳)

 この文章と合わせたかのように、今シーズンの公式練習ではEDEA社の「PIANO」を使用。この靴は、従来のものよりさらに着氷時のブーツの衝撃吸収力をアップさせ、膝や足首への負担を減らしてくれるんだそうです。

 こうした靴の改良に関して、小塚崇彦さんと中京大学の湯浅景元教授の共著として、スケート靴を解体した報告書(※)がありました。これは、小塚さんが大会で使用したスケート靴をタップダンスの靴職人が解体して、改善できる点を報告していた内容。

※出典:2016年中京大学体育研究所紀要「小塚選手の使用済フィギュアスケート靴の解体報告書」

 簡単に見ていくと、例えば靴ひもに関しては、(1)足首の靴ひもをダイヤル式に変えれば、毎回同じように縛ることができる、(2)フック強度の高い布を縫い付けて穴を通す方法に変えると、シューレースがフックによって切れる可能性が軽減され、軽量化も可能になる――といった報告がされていました。

 靴ひもの穴すら改良すれば、まだ軽量化する余地があるということ。

 こうした細やかな改良を経ていけば、果たして5回転ジャンプも可能になるのでしょうか。

●羽生選手の滞空時間で、5回転ジャンプは可能なのか?

 靴を改良しつつ、あとは跳び上がってからの滞空時間と、回転のスピードを計算すれば、およそ何回転を跳べるかは見えてきます。

 朝日新聞によると、「米ソルトレークシティー五輪での研究では、4回転の回転速度は平均毎秒4.8回、滞空時間は平均0.68秒」だそうです。選手たちは、1秒あれば、5回転近く回れるわけです。

 さらに中京大学の湯浅景元教授が、羽生選手と宇野昌磨選手の2016年~2017年のベスト4回転ジャンプを解析し、次のような発表をしています――「羽生選手の回転速度は毎秒5.71回、宇野選手は毎秒5.97回。別の解析では、中国の金博洋選手が滞空時間で0.76秒を記録した」

 現在の羽生選手の滞空時間は、ジャンプにもよりますが、およそ0.8秒程度といわれています。

 さまざまな解析から「5回転には0.9秒あれば十分」とすれば、あと「0.1秒」です。助走速度を上げて、エネルギーをうまく高さに変え、さらに靴も軽量化されるなどの条件がそろえば、この「0.1秒」が生み出せるかもしれません。

 現在のルールでは、4分の1回転未満なら回転が足りなくてもジャンプが成立と見なされます。つまり、空中での回転は4.75回できれば「5回転」。あとは着氷の精度を上げ、スケート靴がジャンプの衝撃に耐えて足を守れるようになれば、あくまでも数字的には……5回転も夢物語ではなさそうです。

文/上野陽子 写真/PIXTA

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