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現代型サイドバックの条件とは? ドイツ人現役コーチに聞く

3/9(金) 21:02配信

footballista

『アオアシ特別号』発売記念掲載

Interview with
FRANK STEINMETZ
フランク・シュタインメッツ(ダルムシュタット)


近年、サイドバックへの要求が高まっている背景には、選手のアスリート能力の向上も関係しているはずだ。ブンデス2部ダルムシュタットのフィジカルコーチを務めるフランク・シュタインメッツは、インタビュアーである中野氏のドイツA級ライセンス講習会の同期。監督としての目線も持つ新進気鋭のドイツ人に、現代サイドバックに求められる条件を聞いた。


インタビュー・文 中野吉之伴


最も重要な能力は、
あらゆることを包括した「スピード」


―― 今回はサイドバックがテーマなんだけど、このポジションにはどんな身体能力や特徴が必要だと思う?

 「まず絶対に必要なのが基礎持久力。その上で高いレベルのスピード、そして高負荷での持久力が大事だ。サイドバックは守備ブロックの一員としてディフェンスの役割を担いながら、同時に前線でアクセントをつけるプレーも行う。彼らはハイスピードでスプリントし、すぐにまた帰陣できなければならないんだ。それ以外に大事なのは高い戦術理解力。ボールが逆サイドにある時は中に絞ってCBを助けたり、ボールサイドでは周りの選手と連係しながら相手を追い込み、また攻撃への準備をしないといけない。非常に総合力を求められるポジションだと言える」


―― その中で一つを挙げるとしたら?

 「もし一つだけ挙げるとしたら……スピードだね」


―― それはどんな意味でのスピード? 瞬発力? それとも回復力? スピードと言ってもいろいろな側面があるよね?

 「その通りだ。まずはクラシカルなところで瞬発力だね。そして疲労回復スピードも非常に大事だ。何度も縦の動きを繰り返さなければならず、攻守の切り替え頻度が非常に高い。これは本質的な能力だと思う。それに反応スピードもだね。サイドバックは守備でも攻撃でも1対1の割合が凄く多いんだ。そうしたあらゆることを包括した意味で『スピード』が大切だと考えている」


―― フィジカル面から見て、1対1に重要なのは何だろう?

 「柔軟性、瞬発力、機敏性だ。状況に対応するためには素早い方向転換が必要だからね。必ずしも1対1=ドリブル対応ではない。ワンツーパスにも対応しなければならないし、くさびのパスが入った後に素早く次のポジションに移行できなければならないんだ」


―― ここ最近現場で気がついたことがあるんだけど、2、3年前まではまだ「1対1だと、とにかく飛び込んで奪いに行け!」が定説だった。でも今は状況に応じて距離を取り、相手の選択肢を狭める動きを要求する指導者が増えてきている。ドイツ伝統の“ツバイカンプフ”(1対1での競り合い)への考え方も変わってきたのかな?

 「それは私も感じている。相手の動きを捉え、奪いに行ける状況を作り出し、そこでガツンと当たる。そのためのポジショニングが非常に重要になってきている」


―― サイドバック用に特別なトレーニングをやっている?

 「ああ、やっているよ。特に距離のあるランニングトレーニングを取り入れている。他の選手は5~10mのダッシュを繰り返し行うけど、サイドバックは50mのダッシュもする。スピードを保ちながら長い距離を走るのはこのポジションの特徴の一つであり、そのためには十分なトレーニングが必要なんだ」


―― 疲労耐性や疲労回復能力というのは生まれつきのものだと思う?

 「いや、それも十分にトレーニングで伸ばせる分野だ。生まれついてのフィジカル能力というのは、選手それぞれが持つ瞬発力や最大速度といった基本的な走る速さに関してだ。しかし、疲労耐性や疲労回復能力はトレーニングで十分に鍛えられる。僕がよくやるのは負荷値や時間を変えながら行うインターバル走で、体内ですみやかに新陳代謝を行えるようにするのが目的だ」


―― スポーツ科学テクノロジーの発展に伴い、今日では様々なデータが取れるようになった。ダルムシュタットでもそうした装置を利用している?

 「もちろんだ。心拍数、乳酸値、瞬発力、ジャンプ力などは計測するし、データの数値から選手のどこにポテンシャルがあるかを探ることができる。例えば乳酸値のグラフを見ることで、どれだけの疲労耐性能力が身に付いたかがわかるし、選手にかける負荷の指針にもなる。選手には具体的な数字を見せることでよりわかりやすい目標を設定することもできるしね。瞬発力の数値が他の選手より低いとわかったら『そこを鍛えないと』と、意識するだろ?」


―― 数値はどのくらいの頻度で取っている?

 「いつも測っているわけではないけど、月一くらいかな。新加入選手が来たらまずは数値を取る。あるいはどこかにフィジカル的な欠如が感じられる時は特別に検査するよ。数字上で問題が発見されたら、その選手に合わせた特別なトレーニングメニューを組むんだ」

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最終更新:3/9(金) 21:02
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