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攻守で布陣を変える可変システム。実現の鍵は「時間のマネジメント」

3/14(水) 19:48配信

footballista

TACTICAL FRONTIER

サッカー戦術の最前線は近年急激なスピードで進化している。インターネットの発達で国境を越えた情報にアクセスできるようになり、指導者のキャリア形成や目指すサッカースタイルに明らかな変化が生まれた。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つのは、どんな未来なのか?すでに世界各国で起こり始めている“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代サッカーの新しい楽しみ方を提案したい。


文 結城康平


 アインシュタインは相対性理論においてX、Y、Zに続く4つ目の軸として「時間」を提唱した。フットボールにおいても時間という概念は、戦術を理解する上で1つの鍵となる。なぜなら、フットボールは90分間という「時間を奪い合う」スポーツだからだ。

ゾーン攻略→可変システム対策→マンツーマン

 「可変システム」を読み解くためには、戦術の歴史をさかのぼるべきだろう。1950年代にブラジルの名将ゼゼ・モレイラが伝統的なマンツーマンの代替案としてゾーンディフェンスを考案し、1960年代にはディナモ・キエフを率いたビクトル・マスロフが「相手にプレッシャーをかける」守備システムへと発展させ、80年代後半アリーゴ・サッキによって現代サッカーにおける守備戦術のプロトタイプが完成する。「ゾーンディフェンスには4つの基準点があり、それはボール・味方・敵・スペースである」というサッキの言葉通り、彼のゾーンディフェンスは「敵の位置によってポジションを変えるマンツーマン的な要素」を含む能動的な守備戦術だった。

 一方で、現在ゾーンディフェンスと一般的に総称される守備戦術は「ブロック」を作り上げる受動的なものが多い。主に相手が動かす「ボール」の位置に応じて移動した「味方」を基準点に、受動的にポジションが決定する。その攻略のために考案された手段が可変システムだ。堅牢なブロックは侵入者を迎撃することには優れていたが、敵がゾーンの隙間に入り込んだ際に誰が担当するのかという構造的な弱点を抱えている。試合中に攻撃するポイントを変化させる可変システムは、相手が準備したゾーンの合間に現れる「無風地帯」を攻略する策となった。加えて、ブロック型のゾーンは横へのスライドが容易で「左右」の揺さぶりに強い反面、「上下」の動きに弱い。この点も可変システムの狙いどころになっている。CFが中盤に下がる“偽9番”は、「左右」の移動に慣れた守備者たちを混乱させた。

 しかし、可変システムには大きなデメリットもある。切り替わる途中にアンバランスな陣形になり、その段階でボールを奪われると決定機に直結する。特に、最近流行してきたマンツーマンに近い形で相手を襲撃するハイプレスは「上下」の動きに強く、縦のポジション移動ではマークをはがしにくい。変形途中でボールを奪われる可能性が高まり、可変システムにとっての天敵になっている。

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最終更新:3/14(水) 19:48
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