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山中×ネリ戦の教訓。ふざけた体重超過ボクサーを、どう懲らしめるか

3/14(水) 11:36配信

webスポルティーバ

 3月1日に両国国技館で行なわれたルイス・ネリ(メキシコ)と山中慎介(帝拳)のWBC世界バンタム級タイトルマッチは、関わった多くの人たちが苦しい思いを味わう結果になった。

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 前日計量で王者のネリが規定体重を大幅にオーバーしながら、試合は強行。世界タイトルこそ剥奪されたものの、減量苦の少ないネリは2ラウンドで山中をあっさりとKOしてしまう。

 リング上で大喜びするネリを見て、日本のファンは「そもそも体重を落とす気がなかったのでは?」と憤慨したことだろう。前回2人が対戦した昨年8月の試合後には禁止薬物使用が発覚していた経緯もあり、ネリは日本リング史に残るダーティファイターとして記憶されることになった。

「引退試合」と心に決めて臨んだ一戦が”アンフェアな舞台”となってしまった山中は気の毒でならないが、似たようなケースはアメリカでも珍しくない。

 最も記憶に残っているのは、2012年7月に行なわれたエイドリアン・ブローナー(アメリカ)vsビセンテ・エスコベド(アメリカ)だ。ブローナーはスーパーフェザー級リミットを3.5ポンド(約1.6kg)上回ってWBO同級タイトルを剥奪されたが、エスコベドにボーナスを払うことでファイトは強行された。

 瑞々(みずみす)しい身体で現れたブローナーは、当然のように5回TKOで圧勝。エスコベドは「生まれたばかりの子供のために、この試合をキャンセルするわけにはいかなかった」と涙にくれ、後味の悪さだけが残った。

 世界タイトルの価値が下がり続ける昨今、確信犯的にオーバーウェイトの身体でファイトに臨む選手をしばしば目にする。たとえ王座獲得のチャンスを失い、罰金を科されても、テレビ中継される試合で元気な姿を見せれば将来のビッグマネーに繋がる。無理に体重を落としてタイトル戦にこだわるより、そのほうが「長い目で見ればベター」という判断なのだろう。

 対戦者が規定体重を守らなかった場合、試合を取りやめる選択はできる。筆者の記憶にある限り、2006年6月のホセ・ルイス・カスティーヨ(メキシコ)vsディエゴ・コラレス(アメリカ)の第3戦、2016年11月19日にコネチカットで開催予定だった岩佐亮佑(セレス)vsルイス・ロサ(プエルトリコ)などが、その数少ないケースだ。

 ただ、キャンセルしてしまえば報酬も手に入らない。その試合に向けたトレーニングも無駄なものになり、興行的にも大打撃となる。それゆえ、ブローナーvsエスコベド同様、多くのボクサーはボーナス、グローブハンデなどと引き換えに試合を行なうことを選ぶのだ。

 一昨年の岩佐の場合は、タイトルマッチではなく挑戦者決定戦だったこと、中止しても指名挑戦権は確保されることに加え、海外での試合で自前の興行ではなかったため、キャンセルの決断は難しくなかったのかもしれない。

 ただ、ネリへの雪辱を胸に母国での決戦に臨んだ今回の山中には、「試合中止」というオプションは存在しなかった。そんな場合は、体重制競技の概念が半ば無視された形で試合が行なわれ、見ている側も実に居心地の悪い思いをすることになる。

 非常に難しいこの問題に対して、ボクシング界の人間はどう対処すべきなのか。確信犯的に体重超過で臨んでくる選手はどう扱われるべきか。ニューヨークで2つの大興行が開催された3月上旬、筆者は複数の地元ボクシング記者に意見を求めた。

 すると、これは想像できたことだが、誰もが「オーバーウェイト選手に対してこれまでよりも厳しい罰則が必要」と口をそろえた。

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