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「完全に不完全」につくられたダイヤモンドの秘密──その“レシピ”が量子物理学に革新をもたらす

3/14(水) 20:03配信

WIRED.jp

意図的に不純物を含ませ、特殊な量子力学的特性をもつ「合成ダイヤモンド」が活用され始めている。量子物理学だけでなく、センシングや神経科学への応用も期待されるダイヤモンドは、いかにつくられているのか。その可能性についても紹介する。

【掲載写真】そのダイアモンドを創り上げる機械

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2000年代半ば、物理学においてダイヤモンドが新たに注目を集めたことがあった。その理由は、宝石としての大きさや色、輝きではない。これらのダイヤモンドは必ずしも美しいものではなかった。研究者たちが数ミリメートル四方の平らな正方形にカットし、ガラスの薄い破片のようなものにして、レーザー光を透過させるためのものだからだ。

このような研究目的で使われるダイヤモンドとして最も価値のあったのは、ウラル山脈で採掘された小粒のダイヤモンドだった。「わたしたちはそれを『ロシアの魔法のサンプル』と呼んでいました」と、ワシントン大学で物理学を教えるカイ=メイ・フー准教授は語る。

このダイヤモンドは極めて純粋だが(ほとんどすべてが炭素というのは、物が混在するこの世界では珍しいことだ)、わずかに含まれる不純物によって不思議な量子力学的特性をもつようになったものだ。「複数の研究者グループがそれを小さく切り刻んで分け合っていました」というフー准教授自身も、そのひとつを使って研究したという。

「ノミを使って削り取るのです。それほど多くは必要ありません」。その特性は有望なものだったが、研究に使えるダイヤモンドは数が限られていたので、それほど多くの実験をすることはできなかった。

「量子グレード」の合成ダイヤモンドの誕生

だが、その問題が解消された。いまやフー准教授は実験のために、インターネットを通じて500ドルの「量子グレード(quantum grade)のダイヤモンド」を買えるようになったのだ。

販売しているのは、ダイヤモンドの採鉱や加工、販売を扱うデビアスグループ傘下にあるエレメントシックス(Element Six)という会社である。同社は、ドリルや機械加工に使われる合成ダイヤモンドの製造を長い間行ってきたが、2007年に欧州連合(EU)から資金援助を受け、物理学者たちのニーズにぴったり合わせたダイヤモンドの製造に着手した。いまでは「量子グレード」の合成ダイヤモンドが豊富に供給されるようになり、物理学だけでなくさまざまな分野で、その利用可能性が探求されている。

最初に恩恵を受けたのは量子コンピューティングだった。理論的には特定作業の計算が普通のコンピューターと比べて飛躍的に速い速度で可能になるとされる量子コンピューターは、「スピン」や「偏光」などの量子力学的特性を利用して情報を符号化する。

これらの特性は非常に不安定になりがちだが、レーザーで不純物を操作するでダイヤモンド内部に情報を符号化すると、ダイヤモンドの結晶構造によって情報が保護され、保存されるのだ。物理学者たちが現在取り組んでいるのは、制御可能な方法で相互作用する隣接不純物をつくり、初歩的なアルゴリズムを実行することである。

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最終更新:3/14(水) 20:03
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