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セラノスが目指した血液検査の革新は、不可能ではない

3/20(火) 21:03配信

WIRED.jp

血液検査プラットフォーム「Maverick Detection System」の開発には、10年の歳月がかかった。小型の冷蔵庫くらいの大きさの装置に、ほんの少しの血液(たった1滴というわけにはいかないが少量であることは確かだ)をセットすると、さまざまなことがわかる。

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Maverickは抗体を利用したバイオセンサーを埋め込んだカートリッジ式のシリコンチップにより、例えばセリアック病のような特定の疾患の有無を判別する。血液中に抗原があれば、抗体が結びついて赤外線の反射パターンが変化するため、これを検出すれば疾患にかかっているかどうかわかるという仕組みだ。

このシステムを開発したGenalyte(ジーナライト)の最高経営責任者(CEO)であるケイリー・ガンは、「現段階では1枚のチップで16種類までの検査ができます。将来的には128種類の検査を一度にできるものを開発する計画です」と話す。

つまり、0.01ml程度の血液で128種類の疾患や遺伝子マーカーの検査が可能になる。それも採血をしたその場で、リアルタイムで結果が出るのだ。素晴らしいの一言に尽きる。でもちょっと待ってほしい。前にもどこかで似たような話を聞いたような気がする。

そう。数年前にも、「血液1滴であらゆる種類の検査ができてしまう」と言っていた会社があった。Theranos(セラノス)という名前だったが、結局はダメだった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』が詐欺だと報じ、米証券取引委員会(SEC)は3月14日に同社のCEOであるエリザベス・ホームズを訴追すると明らかにしている。

「証明」された実績

一連の出来事は、医療診断ビジネスを手掛けるスタートアップにとっていい教訓になっただろう。必ず専門家による評価を受ける、投資家には嘘をつかないといった常識的なことだ。

しかし、セラノス騒動のあとも医療業界のスタートアップが活動を控えるようなことはない。このゲームは少なくとも2000年からずっと続いており、医師、患者、保険会社が揃って、正確で簡単な検査の実現を強く求めている。医療費の削減につながるというのが大きな理由だが、それ以上に早期診断とより適切な治療が可能になるからだ。

誤解のないように言っておくが、ジーナライトはセラノスとは違う。Maverickの性能は、これまでに公開された論文や各種テストによって証明されているし、サンディエゴの複数の医療機関で試験運用が行われている。

セラノスは例外というわけではないかもしれないし、結果を伴わない大げさな宣伝はシリコンヴァレーにとって、ラップトップ上のPowerPointファイルのように有害だ。しかしなかには、きちんと実績を出している診断技術スタートアップもある。

医療市場調査会社Kalorama Informationのブルース・カールソンは、「この業界と何のかかわりもない人間が、わたしたちに医療について語ってみせたのは、セラノスが初めてでした」と話す。「弊社のアナリストは誰も、あれをまともな会社とはみなしていませんでした」

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最終更新:3/20(火) 21:03
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