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米朝首脳会談で金正恩氏が「最後の大勝負」に出る可能性

3/23(金) 12:11配信

Wedge

 北朝鮮の金正恩国務委員長が米韓両国に対話攻勢をかけている。韓国の文在寅大統領とは4月末、米国のトランプ大統領とは5月までに会談が開かれると発表された。ティラーソン国務長官の解任などトランプ政権の安定性に不安が持たれるものの、戦争の危機が語られた一時の危機感は遠のいた。この流れが北朝鮮核問題の平和的解決につながるのであれば、それは歓迎されるべきことである。

 ただし、「経済制裁を受けて苦しくなった北朝鮮が対話を求めてきた」というような単純な見方をしていると情勢判断を誤る。

 北朝鮮に対する経済制裁は核開発の進展を受けて一昨年(2016年)から格段と厳しいものになった。それ以前は核・ミサイル開発に関連する個人や団体を個別に対象としていたが、同年からは外貨収入源を直撃し、人々の生活にも影響を及ぼしうるような制裁に変わった。それだけに北朝鮮に一定の「痛み」を与えていることは確実だ。毎年元日に発表する「新年の辞」で、金委員長が昨年から制裁に言及するようになったことがそれを物語る。「制裁」という言葉は昨年2回、今年は3回使われた。

 しかし、それにもかかわらず核・ミサイル開発は進められ、北朝鮮は昨年11月29日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」発射を受けて、「核武力完成」を表明する政府声明を発表した。核抑止力を確保したという「勝利」宣言であり、それまでに北朝鮮の行動を止められなかったことからも制裁が決定打になりえなかったのは明らかだ。

「核武力完成」の自信が背景に

 今回の対話局面は、金委員長が今年の「新年の辞」で平昌冬季五輪への参加を表明したことに始まっているように見える。だが実際には、金委員長が2013年3月に打ち出した「経済建設と核武力建設の並進路線」という中長期的な戦略に基づいたものだと考えられる。

 「並進路線」は、経済建設と核開発を同時に進めるというものではない。まずは核開発を急ぎ、核抑止力を確保する。そうすれば米国から攻撃を受けることもなくなるから経済建設に集中できるようになる。そういった段階論的な考え方だ。

 昨年11月の「核武力完成」という政府声明は、とりあえず抑止力の確保にめどをつけたという政治的判断の反映だろう。核を保有して「戦略的地位が向上した」という自信を持ったからこそ対話に出てきたという構図になる。

 北朝鮮が何を重視しているかのバロメーターとなる金委員長の「現地指導(視察)」を見ても、6回目の核実験を行った後の昨年9月下旬からは軍部隊への現地指導がぱたりと止み、農場や工場への現地指導に集中するようになった。これからは経済建設を重視したいという考えが明確に出ていたということだ。

 北朝鮮では制裁に負けない経済建設を目指すということで「自力更生」「自給自足」「自強力」といった用語が多用される。ここ数年は実際にかなり高い成長率を記録したと見られているが、やはり制裁を受けたままでの経済成長には限界がある。そこで経済制裁解除への道筋をつけるため、米韓両国への対話攻勢に出てきたようだ。

 経済面では韓国との経済協力を必要とするが、その前提となる制裁の解除や緩和には米国から理解を得る必要がある。それに米国からは体制の安全の保証を取り付ける必要もある。南北関係と米朝関係は経済と非核化という別々の課題を掲げながら、密接にリンクしているのである。

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最終更新:3/23(金) 12:11
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