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川崎フロンターレ 中村憲剛 独占インタビュー「37歳司令塔の流儀」

3/31(土) 7:21配信

FRIDAY

「長かった。長過ぎて、長過ぎて、このままタイトルを獲れずにサッカーを辞めるんじゃないかなと思っていた」

 ’17年12月2日、クラブ初となるリーグ優勝を決めた瞬間、川崎フロンターレ・中村憲剛(37)はピッチ場で大粒の涙を流し、その場に崩れ落ちた。

 一見すると、その華奢な身体からアスリートと連想する人は多くないかもしれない。だが、膨大な運動量が求められる現代サッカーにおいても、37歳の司令塔は円熟味を増したプレーで観客を魅了する。一昨年はリーグMVP、昨年はリーグ1位のアシスト数を記録し、ベストイレブンに選出。優勝の原動力になった男が、その想いを打ち明けてくれた。

「よく、年齢のことは言われるんですよ。スポーツ界って年齢で括(くく)られがちで、若い選手が出てくれば当然そっちに目がいく。でも俺は、こういう年齢だからこそできることもあると思うんです。自分がいる意義、この年齢で出ている意味。プレーだけでなく、生活習慣やロッカールームでの振る舞いも含めて、有意義な存在でないといけない。それを若い選手たちに伝えてきたつもりです」

 中村は昨シーズン、’07年から続いたキャプテンをチームのエースである小林悠(30)に託し、サポート役に徹した。

「’05年にJ2から昇格した翌年に2位になって、正直すぐ優勝できるだろうと思っていた。でも’09年にチャンスを逃(のが)し、数多(あまた)の苦汁を飲んできた。正直、俺の存在が無ければ……と思ったこともあります。“憲剛さんにタイトルを“という雰囲気も感じていたし。俺がキャプテンだと、チームの重荷になる。実際、イチ選手に戻ると、『こんなに肩の荷が降りるのか』と精神的にもラクになった。それが昨シーズンのパフォーマンスにつながった部分もあります」

 大ベテランでありながら、フランクに。それが中村のポリシーだ。

「俺ね、若手と積極的に絡むんです。だってジェネレーションギャップがあって面白いじゃないですか。5~6歳下の選手からは『おじいちゃん』と、いじられていますよ。『年なのによくやってるねー』と(笑)。でも、すごく良いことだと捉えてます。後輩から話しかけられない先輩って嫌じゃないですか」

 中村は中央大学を卒業してから、フロンターレ一筋。だが、一度だけ海外移籍に心揺れたこともある。

「’10年の南アフリカW杯後に、オランダやトルコなど、たくさんのオファーをいただいた。当時は30歳で、ラストチャンスという思いもあった。鄭大世(チョンテセ)(33・清水エスパルス)や、川島永嗣(34・FCメス)らチームメイトが海外挑戦し、『俺も行きてーな』と。ただ、練習生からフロンターレに拾ってもらい、クラブと一緒に成長してきた。そんなクラブに、何も残さずに出ていくのはナシじゃないか、と。ファンの中には、練習場に来て『残ってくれ』と直談判してくれた方もいましたし。国内でも成長できるということを証明してやろう、と考え直しました」

 中村は国内外、カテゴリーを問わず、一日3試合も試合観戦する“サッカー小僧“だ。海外は常に憧れの地でもあった。だが、結果的には残留という選択が、歓喜の瞬間につながった。

 今季からは、得点王の小林悠に加え、元日本代表の大久保嘉人(35)や齋藤学(27)もチームに加わる。リーグ最強の攻撃陣のタクトを振れるのは中村だけだ。

「大切にしているのは、対話を重ねること。それがすべてといっても過言ではない。イメージをいかに言語化して、信頼関係を作るか。そのスタンスはデビューから変わっていません。今季の攻撃陣は個性派が多いので、僕自身も楽しみです」

 現役生活の終わりは見えているのか。こんな質問をぶつけると、言葉を濁しながらも、自身の将来にも言及した。

「未来のことはわかりませんよ。入団した時に、まさかこの年齢まで選手を続けて、フライデーのインタビューを受けることになるとは思わなかった(笑)。だから、引退もまったく予想ができない。一つ言えることは、ベンチで仕方ないな、と思った時点でもう辞めたほうが良い。俺、たぶんそうなったらスパイクを脱ぐと思うんですね。まだまだトップでやれているという自負もあるし、そこはこだわってきた部分でもある。それに、俊さん(中村俊輔・39)や佑二さん(中澤佑二・39)より年下の俺が、先に辞めるわけにはいかないでしょ」

 悲願であった優勝を遂げた中村憲剛が見据える光景はどこにあるのか。

「優勝したら、もう良いと思うかな、と想像していたんですが、いまは昨シーズンに獲れなかったタイトルをすべて獲りたいとしか考えていない。自分でも驚いてます。人間って欲張りなもんですね」

 ミスターフロンターレが今シーズン標榜するのは、4冠の達成。愛してやまない川崎を、未だどのクラブもなし得ていない、未踏の地へと導く決意を固めている。

(取材・文/栗岡史明)

最終更新:3/31(土) 7:21
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