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北極圏の氷の下にある「軍事基地の廃墟」から、汚染物質が流れ出す

4/3(火) 12:19配信

WIRED.jp

グリーンランドの分厚い氷の下に、いまから60年近く前の冷戦時代につくられた米国の軍事基地が放棄されたままになっている。氷によって永遠に封印されるはずだった“秘密”の基地は、気候変動によって氷が溶け、有害物質が漏れ出すという「環境破壊ドミノ」の原因になろうとしている。その汚染の脅威と、解決する気配がない政治的な駆け引きの裏側をレポートする。

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キャンプ・センチュリーの建設は、そもそも無謀な計画だった。米軍は北極から800マイル(約1,300km)しか離れていないグリーンランドの分厚い氷の下に、トンネルを掘って基地を築いた。内部に全長2,500マイル(約4,000km)にも及ぶ鉄道網を敷き、600発の核ミサイルを氷の下に配備しようとしていたのだ。

基地の建設は1959年に始まった。表向きは科学的な調査プロジェクト用の施設だったが、氷床の下にはすぐに、小型原子炉を動力とする軍事基地が置かれた。

冷戦の真っただなかにあった当時、米国はグリーンランドを戦略的要衝ととらえていた。ソ連を狙うミサイルの発射基地になり得るということだ。分厚い氷が永久に基地を守ってくれると踏んで、軍事計画を立てたのだろう。

しかし、最初のトンネルを掘った時点で、米軍は思わぬ事態に直面した。想定していたよりも氷床が流動的だったのだ。氷が移動してトンネルが安定せず、10年も経たずに、キャンプ・センチュリーは放棄された。

基地は氷によって永遠に封印されるはずだった

グリーンランドに極秘基地を建設するにあたって米軍が選んだのは、乾いた雪が氷床の融解を阻止するような場所だった。基地を放棄するときも、氷によって永遠に封印されるだろうと考えていたのだ。

しかしその後、数十年が経過し、状況は一変した。2016年に『Geophysical Research Letters』に掲載されたある調査チームの報告書によると、氷床は融解しつつあり、基地に残された危険な汚染物質が氷から漏れ出す危険性があるという。

迫り来るこの危機は、新たなかたちの環境問題を示している。これまでは、10万年前の氷床の表面に付着した物質が水質汚染の要因になる恐れはまずなかった。ブラウン大学で政治学を研究するジェフ・D・コルガン教授は2月16日、『Global Environmental Politics』にキャンプ・センチュリーについて、気候変動がもたらす二次的な環境破壊と新たな政治的対立という2つの問題を提起しているとする記事を寄せた。

コルガン教授は言う。「気候変動がもたらす既知の問題については対処が進んでいます。ただ、これまでまったく予期していなかった問題が、今後は次々と明るみに出てくると思われます」

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最終更新:4/3(火) 12:19
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