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バルサ逆転敗退の衝撃を生んだ要因とは? ローマが構築した完璧なプランと指揮官の英断

4/11(水) 12:59配信

フットボールチャンネル

 誰もがバルセロナのチャンピオンズリーグ準決勝進出を疑わなかった。4-1で終わった準々決勝1stレグを経て、10日の2ndレグを迎えるまでは。しかし、そんな絶望的な状況でも大逆転を信じ続けたのがローマのエウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督だった。シーズン中に地道に積み上げてきたものを、この一戦で全て解放し、攻撃的な采配で見事にバルセロナを打ち破った。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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●ローマが採用した奇策3バック

 戦前から絶対的な不利が予想され、下馬評どおりに1stレグでは1-4。バルセロナのチャンピオンズリーグ(CL)準決勝進出が事実上決まったと誰もが信じたであろう劣勢を、ローマはひっくり返した。

 リオネル・メッシやルイス・スアレスを擁する攻撃陣に1点も許さず、しかも3点を奪うという無理なミッションを完遂。相手に枠内シュートを2本しか許さない一方で、サイドを使った速攻とセンターFWエディン・ジェコの強さを軸にした攻撃でシュート16本を浴びせる。戦略が完璧に機能したことは、スタッツにもあらわれていた。

 グループリーグ第4戦でチェルシーをやり込めた試合も3-0。エウセビオ・ディ・フランチェスコ監督率いるローマは、またも戦術的な攻撃サッカーで格上を破った。

 まず勝利をもぎ取ったポイントの1つは、普段の4バックではなく3バックを用いた組織守備が機能したということにある。1stレグでは4失点を喫したが、そのうち3点はオウンゴール2つとエリア内でのミスを拾われたもの。センターラインの枚数を増やし、余裕を出すという発想は間違っていなかった。

 事実、フェデリコ・ファシオを右に、ファン・ジェズスを左に回し、対人とスペースの両方に強いコンスタンティノス・マノラスを中央で自由に動かす3枚のセンターバックは、バルサの攻撃陣に対し常に余裕のある対応を見せていた。

 しかし守備において決定的だったのは、相手のビルドアップを断ち切った前線のプレスだった。ローマのフォーメーションは表記上3-4-1-2となっていたが、実際のシステムは3-4-3だ。普段は中盤を務めるラジャ・ナインゴランは実質的な左ウィングとして、また先発に抜擢されたパトリック・シックは右ウィングとして、それぞれ前線の守備を受け持った。プレスで相手センターバックとサイドバックのパス交換を遮り、また守勢に回ればサイドをカバーするという役割が彼らには課せられていた。

●合理的だったローマの守備。攻撃ではエースが躍動

 ディ・フランチェスコ監督に言わせれば、彼らこそが守備においての最重要ポイントだったという。試合後「バルセロナには、攻撃の幅を取らせないことが最も重要だと考えた」と地元メディアに明かしたが、前線の攻撃を封じる根元はここにあると見たということだ。

 パスワークで相手の守備陣を横に拡げ、できたスペースをメッシやスアレス、またアンドレス・イニエスタに使わせるのがバルセロナのサッカー。その前提条件を作るサイドを介した組み立てを、ハイプレスで壊したのである。

 ナインゴランやシックのプレスに阻まれ、横にボールが展開できないバルサのセンターバック陣とセルヒオ・ブスケッツは、仕方なしに縦パスに逃げる。しかしメッシが中盤に落ちてボールを受けようとすると、ローマの3人のセンターバックのうち1人が飛び出してスペースを潰す。試合を通じバルサの枠内シュートをたったの2本に抑えていたのは、前線にボールが来る前に組織で遠ざけた結果だったのだ。

 次に攻撃。ハイプレスでパスコースを限定し、セカンドボールをことごとくものにしたローマは、サイドのスペースを使った縦への速攻でバルセロナを攻略した。サイドの守備を受け持ったナインゴランやシックは、攻勢に回るとサイドからやや内側に入ったスペースをフリーで確保。彼らを経由してアレクサンダル・コラロフとアレッサンドロ・フロレンツィの両翼が上がり、バルサの脆いサイドの守備を突いた。

 そして前線には、ジェコという強力なターゲットマンがいたことがローマの強みだった。DFを背にしても苦なくボールをキープする一方、サイドに流れて裏のスペースも突ける走力も備えるボスニア・ヘルツェゴビナ代表FWは、2ゴールをひねり出す上で決定的な存在となった。6分、裏に走ってダニエレ・デ・ロッシの縦パスを引き出して先取点。そして58分には、ピケをエリア内まで引きずったのちファウルを誘い、PKを獲得した。

●指揮官の綿密な準備。用意されていた「3点目」へのプラン

 さらに彼らは、3点目を奪うべく攻撃力を高めるプランもちゃんと用意していたのである。試合が残り20分を切ったところで、ウイングに急成長中のジェンギズ・ウンデルと、ステファン・エル・シャラーウィを投入。縦への突破力とシュートへの積極性を保証し、サイド攻撃にはさらにキレが増す。

 そして82分、ウンデルが右サイドから仕掛けた末にコーナーキックを獲得。前半からセットプレーでは惜しいチャンスを作り続けていたローマはこのチャンスをきっちりと活かし、マノラスがニアから頭で押し込んだ。

 ローマの攻撃は、この試合に限った秘策というわけではなかった。3トップにサイドを絡めた攻撃のシステムも、少ないパス交換で縦を破る連係も、シーズンを通して仕上げられていたのである。崖っぷちの大一番で出たのは、そういったものの成果だった。

 もちろんその力を引き出すことにつながった要因は、ディ・フランチェスコ監督による綿密な準備にある。直前のリーグ戦、フィオレンティーナ戦ではバルサ戦2ndレグを見据えて戦力を温存。その結果0-2で破れることになるのだが、「その日の夜は悔しくて眠れなかった」という彼は3バックの導入を着想したのだという。「選手たちはこうなることを信じて闘っていた」と試合後に語ったが、それを誰よりも信じ抜いていたのはこの人に他ならなかっただろう。

 それに引き換え、バルセロナのなんと淡白だったことか。セカンドボールを拾われてローマの速攻を喰らっていたのは、1stレグも同じだったのである。そのケアを軽視した上に、セットプレーの守備でも常にマークが外れるなど隙は多かった。中2日という条件はローマも一緒なので、コンディション調整は言い訳にならないだろう。

 間違いが起こる可能性をゼロに近づける努力を怠ったチームと、突破を信じ勝負を捨てず、最善の努力をしたチーム。2ndレグの結果は、なるべくしてなったものなのかもしれない。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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