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世界中で研究“オオカミに育てられた子”の実記は嘘だった…(その1) 第4回<オオカミ少女に気をつけろ! ~欲望と世論とフェイクニュース>

4/11(水) 6:01配信

幻冬舎plus

オオカミ少女は、自閉症児だった?

 不自然な作り話が添えられ、重要な根拠となる資料が欠如したまま、カマラとアマラの話は世界中に定着してしまう。そして、1959年になって、ついに真実をその目で見極めるため、インドの現地まで足を運ぶ学者が現れた。

 野生児の研究をしていたシカゴ大学の社会学者オグバーンと精神分析医ベッテルハイムは、「カマラとアマラは現地で捨てられた自閉症児だったのではないか」という仮説を立てた。すでにシング牧師は亡くなっていたが、現地調査に出向いて一連の関係者にゆかりのある人々を徹底的に探し出し、聞き取り調査や証拠の探索を行ったのだ。その結果が、一冊の本にまとめられている。

 この本によると、調査の結果、まず、現地には、カマラが生まれたはずの「ゴダムリ村」という村が存在しないことが発覚。

 さらに、村人の証言から、カマラとアマラらしき少女はたしかにいたが、精神薄弱児で言葉数が少なく、反応がにぶい以外は、普通に2本足で歩いて人間らしく生活していたし、そもそも発見したのはシング牧師ではなく、村人であり、保護に困ったので孤児院に託したということも発覚。

 おまけに、シング牧師を知る人々を訪ねて話を聞いていくと「シング牧師は『嘘つき』で、まったく信頼できない」「おそらく基金を得るために仕組んだ『つくり話』」「まったくでたらめの話だ」「信頼できない男である」などの悪評が次々と飛び出す。

 シング牧師の孤児院に勤めていて、カマラを見たことがあるという男性教師によると、「シング牧師は彼女をほかの子供たちから引き離し、四つ足で歩かせようとし、しばしば殴ったりした」と、まさかの虐待証言。

 カマラとともに孤児院で暮らしていたという元孤児は、「彼女はふつうの人間みたいでした。ただ、上手にしゃべることだけができなかった」と話した。

 その他一連の現地調査を組み立てていくと、やはり仮説通り「カマラとアマラと呼ばれる少女は、たしかに存在したが、森のなかで迷子になっているところを保護され、孤児院に預けられた自閉症児だった」という結論が濃厚になっている。

 さらに、シング牧師の妻が金の無心をしていたという話もあり、「孤児院の経営に行き詰っていたシング牧師夫妻が、保護した自閉症児をオオカミ少女として宣伝利用するため、虐待し、ケモノのように振る舞うよう扱ったのでは?」――そんな黒い疑惑さえ浮上するのだ。

 この「狼に育てられた子」、これだけの調査をもってようやく「ウソ」と判定されるようになるのだが、もとの本をいま落ち着いて読み返してみると、“ありえへん”噴飯モノの記述満載のトンデモ本でもあった――。

 * * *

 ※なぜこんな壮大なフェイクが学問の顔をして広まったのか?  次回はその分析を含め、話題書『狼に育てられた子 カマラとアマラの養育日記』(J.A.L.シング著)から、抱腹絶倒の記録をお届けします。4月26日(木)公開です。お楽しみに! 


■泉美 木蘭
昭和52年三重県生まれ、作家、ライター。日々、愛しさと切なさと後ろめたさに苛まれている不道徳者。社交的と思わせて人見知り。日頃はシャッターをおろして新聞受けから世間を覗いている。趣味は合気道、ラテンDJ、三浦大知。

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最終更新:4/11(水) 11:11
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