2016年、南アフリカ、クルーガー国立公園に隣接するサビサンド私営動物保護区で、ライオンの子ども4頭が謎の病気にかかった。動きが鈍くなり、やせ細って衰弱し、まるで抜け殻のようだったと専門家は言う。後ろ脚が徐々に動かせなくなり、前脚だけで体を引きずるようにして歩かなければならなくなった。
【動画】謎の奇病にあえぐ子ライオン
その後も病気の進行は速く、あっという間に尻から下が完全に麻痺し、地面に横たわり自分で動くこともできなくなった。
獣医が診察したときには、すでに2頭が死んでいた。後でわかったことだが、ほぼ同時期におとなのメスライオン2頭も同様に、もうろうとして眠り続ける症状に陥っていた。同地域の他のライオンも病気にかかっていた可能性がある。
ライオンに何が起こったのか、獣医にもわからなかった。遊びまわっていたライオンの子どもが、明らかな原因もなく、次の日には麻痺して動けなくなるなんてことがなぜ起こったのか?
調査を進めると、白筋症という病気だったかもしれないことが明らかになった。この病気は通常、ヒツジ、ウシ、ヤギなどの家畜だけに見られる。筋肉を維持するミネラルの欠乏が原因で、麻痺や心不全を引き起こす。確かに、子ライオンの最終的な死因は心不全だった。
「病気になった過程がとても気になります」と、奇病にかかった子ライオンを検査した獣医ジョエル・アルベス氏は言う。「こんなことは私の国ではこれまで見たことがありませんでした」
2年経った現在でも、疑問は依然として残っている。そもそも、子ライオンが本当に白筋症だったのかを突き止めることが難しい。ライオンで最初の白筋症かもしれないからだ。白筋症は通常、家畜にのみ見られる病気なのにも関わらず、どうやってライオンがかかったのか? また、もし白筋症がサビサンドで再発した場合、どうやって治療するのか? そもそも治療法があるのか? こうした疑問に答えるのに、最近ナショナル ジオグラフィックが入手した映像や詳細な情報が役に立つかもしれない。
最終更新:4/17(火) 14:32
ナショナル ジオグラフィック日本版