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メジャーの大舞台で「ゴミ」を拾った大谷翔平

4/17(火) 7:00配信

東洋経済オンライン

 米・大リーグのエンゼルス大谷翔平の大活躍に、野球ファンのみならず、日米の多くの人々が驚嘆の声をあげている。スプリングトレーニングでの成績から、彼の開幕後の投打での活躍を予測した人は少なかったのではないか。

大谷翔平が今も大切にする、父の「3つの教え」とは?

 オープン戦、大谷翔平は投手としては0勝1敗、防御率27.00、打者としては32打数4安打0本塁打、打率.125だった。普通のマイナー契約の選手なら、即マイナー行きになる成績だ。

 大谷翔平自身は、オープン戦が不振でも動揺しなかったと語っている。そしてしっかりと問題点を把握し、それを解決しようとしていた。

 その精神の成長ぶりを感じさせる小さなシーンがあった。

■ベースを踏んだ大谷が拾った小さな白いゴミ

 現地時間4月11日のレンジャーズ戦、8回表、大谷は四球を選んだ。一塁に大谷を置いて、レンジャーズは投手をクリス・マーティンに交代した。昨年まで大谷と日本ハムで同僚だった投手だ。マウンドに上がるなり、マーティンは鋭い牽制球を投げた。慌てて一塁に戻る大谷。このとき大谷は一塁ベースに長い足をかけながら、手を伸ばしてファウルラインの内側に落ちていたゴミを拾ってファウルゾーンに投げたのだ。

 このあと、大谷はマーティンのピックオフプレー(走者をターゲットにしてアウトを奪うプレー)でアウトになった。

 そのことのほうが大きく報じられたが、メジャーの大舞台で、グラウンドに落ちていた小さなゴミに目が留まり、それを捨てた行為に、筆者はただならぬものを感じた。

 古い話で恐縮だが、1943年『姿三四郎』という映画が封切られた。巨匠黒澤明の監督デビュー作だ。姿三四郎という柔道家が師匠矢野正五郎の薫陶を受けて成長するストーリーだ。この映画で黒澤明は、三四郎の成長を、ほんの数カットで鮮やかに描いてみせた。

 道場で師匠に挨拶をするシーン、最初、名優藤田進が演じる三四郎はのっしのっしと強さを誇示するように入ってきて座った。次に三四郎は師匠の矢野に丁寧に一礼して座った。尊敬の念が表れている。最後のシーン、三四郎は少し笑みを浮かべ、ゆとりのある表情で師匠の前に立ち、座る直前に板の間に小さなゴミがあるのを見つけ、それを拾ってから座ったのだ。

 姿三四郎は、最初は相手を威嚇するこけおどしの勇者だったが、師匠に尊敬を抱くようになり、最後にはどんなときにも冷静沈着で、小さなことにも目が行き届く達人の域に達した。黒澤はそれを「道場で座る」という小さなシーンで鮮やかに描いた。「ゴミを拾う」という動作は、三四郎の進境を象徴的に表していたのだ。

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