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メジャー速球ランキングに異変。チャップマンの牙城破る21歳新星の登場か

4/21(土) 11:13配信

ベースボールチャンネル

 2018年シーズンが開幕して3週間が経過した。メジャーリーグ全球場に2015年に導入された高精度データ解析ツール「Statcast」において、これまでニューヨーク・ヤンキースのクローザーであるアロルディス・チャップマン投手の独壇場だった速球部門にある異変が起きている。

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■チャップマンを超える新星・ヒックスとは

 「Statcast」速球部門の今季最高速度の上位9位にはチャップマンではない、見慣れない名前が並ぶ。

 ――ジョーダン・ヒックス。

 4月20日(日本時間21日)現在、今シーズンの最高速度の1~9位がヒックス、10位にようやくチャップマンの名前が出てくる。投球平均速度でも1位はヒックスのシンカー、2位はヒックスのツーシーム、3位がチャップマンのフォーシームとなっている。

 2010年にはギネス認定の世界最速105.1マイル(169.1キロ)を記録したチャップマン。2015年から3年間、「Statcast」の投球最高速度、投球平均速度の両部門でトップを守ってきた。2017年では、シーズンを通して最も速かった50球のうち44球がチャップマンが投げた球。年間最高速度は9月1日に投じた104.3マイル(167.9キロ)、フォーシームの平均速度は99.7マイル(160.5キロ)だった。

 そんなチャップマンを上回るヒックスとは何者なのか。よほどの野球ファンでも今季が始まるまで耳にしたことはなかった名前だろう。ヒックスは今季初めてメジャーリーグに昇格したセントルイス・カージナルスのリリーフ投手だ。

 テキサス州出身の21歳で、2015年に高卒ルーキーとしてドラフト3位でカージナルス入り。18年のスプリングトレーニングには招待選手として参加し、開幕直前にロースター入りを果たした。開幕後は主に中継ぎ投手としてここまで8試合に出場。メジャー全体で最も速い100~101マイルを連発し、9.1イニングを投げて無失点の好投を続けている。

 2016年はルーキーリーグとショート1A、2017年は1Aと1Aアドバンスに所属。ヒックスは2A、3Aを経験せず、いわゆる「2階層飛び級」でメジャーに昇格したシンデレラ・ボーイと言えるだろう。

■1Aの成績は傑出せず、カージナルス首脳陣の先見の明

 驚くべきことは1Aでも特に傑出した成績を残したわけではない。2017年シーズン通算で8勝3敗、防御率2.82、105イニングで95奪三振。決して悪くはないが、2A、3Aを飛び越えて大抜擢するほどの成績ではない。しかし、ヒックスはオープン戦で7イニング8奪三振の好投を見せ、開幕25人の枠に入った。今のところ中継ぎとしての役目をしっかり果たしている。

 ヒックスは身長188センチ、体重84キロとメジャーリーグの投手としては小柄な方。チャップマンのような長い腕もなければ、ノア・シンダーガードのような筋肉質な身体でもない。大谷翔平、ダルビッシュ有、田中将大ら日本人メジャー投手より、体格は劣る。マイナーでの成績も体格も目立たないヒックスを抜擢したカージナルス首脳陣の判断は賞賛されるべきだろう。

 普段なら注目を集めることが少ない中継ぎ投手という立場にもかかわらず、ヒックスの存在にスポットライトをあてた「Statcast」。野球を観る上でファンに新しい楽しみを与えてくれている。

 最多勝投手や本塁打王などシーズンを通した個人成績が注目されるが、Statcastは「誰が一番速い速球を投げるか」、「誰が一番遠くにホームランを飛ばすか」、「誰が一番足が速いか」、などといった根源的とも言うべき興味をかきたててくれる。

 大谷翔平は4月20日現在、この「Statcast」投球最高速度部門と最長本塁打部門の両方でトップ50位に入っている。「Statcast」は比類のない投打二刀流としての存在を評価する新たな指標にもなるだろう。


文・角谷剛

ベースボールチャンネル編集部