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一夜で300億円が消えた… “恐怖の金融商品”の後始末

4/23(月) 5:57配信

デイリー新潮

 株式市場が不安定になれば上昇し、落ち着けば下がる「恐怖指数(VIX)」という数値をご存じだろうか。投資家の心理がリアルタイムで分かることから使われるようになったが、その投資家を“恐怖のどん底”に陥れたのが、VIXを使った金融商品だ。

「私も20年以上いろんな被害を見てきましたが、これほど瞬時に大金が消えてしまったのは初めてです」

 そう呆れるのは、証券取引のトラブルに詳しい本杉明義弁護士だ。

 同弁護士が問題にしているのは、アメリカのVIXを対象にした「VIXベアETN」(以下、VIXベア)という金融商品だ。正確に言うと売買できたのは2月までで、4月から強制的に払い戻しが始まっている。どんなものなのか。

 経済部の記者が言う。

「VIXベアの “ベア”とは、VIXと逆の動きをするという意味です。つまり、VIXが上がると、逆に値下がりするように設計されている。野村ホールディングスの欧州子会社が発行し、日本では2015年3月に上場されています。直近では時価総額で320億円ほどに膨らんでいました」

 それが “突然死”したのは2月6日のこと。米ダウ平均株価が急落した翌日だった。

「VIXベアには、『早期償還条項』(別名・即死条項)というのが付いており、VIXが前日終値から20%上昇すると、運用そのものが終わりになる。当日は、恐怖指数が急騰したことから、VIXベアもそこで自動終了となってしまったのです」(同)

 何とも乱暴な金融商品なのだが驚くべきは損失率で、

「VIXベアの損失率は96%。償還されても顧客には4%しか戻ってきません」(同)

 時価総額でざっと300億円が消えたことになる。

虎の子が消えた

 かくして、朝起きてみたら“虎の子”が雲散霧消した顧客が続出。証券会社にもクレームが殺到した。

 先の本杉弁護士によると、

「私のところに駆け込んできた被害者の中には、一晩で8000万円以上の損失を出してしまった人や、信用取引で立替金が発生し、巨額の借金を抱え込んでしまった人もいます」

 もっとも、VIXベアの販売資料では、小さく早期償還条項のことに触れてある。リスクは説明済みというわけだ。

 が、実際にはそれも疑わしい、と同弁護士。

「調べてみると、営業マンでさえこの商品の仕組みを知らずにVIXベアを売っていたケースがかなりありました。それも、野村證券をはじめ大手証券会社の営業マンです。だから、早期償還条項についても説明していないケースが多くある。取引そのものが無効になる可能性があります」

 経済評論家の山崎元氏によると、

「元の指標と反対の値動きをする“ベア”の金融商品はカラ売りをするのでハイリスクなのです。大手証券がそんなものを作って一般投資家に売るのはそもそも問題ですよ」

 VIXベアを発行し、販売していた野村ホールディングスに聞くと、

「当社に(顧客から)問い合わせがあることについては把握しております。当社を通じて保有されているお客様に対しては、本件発生後、マーケットの状況や経緯についてご説明をしてまいりました」(グループ広報部)

 すでにアメリカでは同様の金融商品で損失を被った投資家が訴訟を起こしている。「恐怖の商品」を売りつけた代償やいかに。

「週刊新潮」2018年4月19日号 掲載

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最終更新:4/23(月) 5:57
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