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セレッソの敗退が象徴するACL軽視の風潮。“カネ”に支配される現代サッカーとJリーグ

4/24(火) 12:54配信

フットボールチャンネル

 今季のAFCチャンピオンズリーグで、決勝トーナメントに進めたJリーグクラブは鹿島アントラーズのみだった。4クラブがグループリーグに挑戦しながら、ほとんど勝利を挙げることすらできず敗退に追い込まれた事実は重く受け止めなければいけない。大陸王者を争う大会に、Jリーグ勢は100%の力を注げていたと言えるのだろうか。(取材・文:ショーン・キャロル)

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●地に墜ちたJリーグ勢のアジアにおける価値

 浦和レッズがサウジアラビアのアル・ヒラルとの緊迫の一戦を制してAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝のトロフィーを掲げてから5ヶ月。Jリーグ勢は、今季のACLに出場した4チームがグループステージの計24試合でわずか5勝しか挙げられず、再び強烈に地表へと叩き落とされてしまった。

 J1の現王者であり、昨季ACLで準々決勝まで進んで浦和に敗れた川崎フロンターレは、1勝も挙げられないまま敗退。柏レイソルもわずか1勝にとどまり、最初のハードルを越えられずに大会を去った。

 鹿島アントラーズはグループリーグ突破を果たしたが、大岩剛監督のチームもホームでは未勝利。先週火曜日(17日)のグループリーグ最終戦で水原三星に0-1の敗戦を喫すると、ホームのサポーターからブーイングを浴びせられた。この結果によりグループ首位の座を失い、ベスト16では昨季準決勝まで進んだ上海上港との対戦を強いられることになった。

 だが、日本勢で最も残念な戦いぶりを見せてしまったのはセレッソ大阪だ。

 昨季のルヴァンカップおよび天皇杯王者であるセレッソは、自ら失敗を招き寄せてしまったも同然だ。次のラウンドに進めるかどうかを気にしてすらいなかったかのようだ。

「正直に言えば、前回我々がACLに出場した際には、クラブはJ2に降格してしまった。そのことが記憶に新しい状況で、今年はJリーグにより重点を置いているのは事実だ」

 先週火曜日のアウェイでの広州恒大戦でBチーム(Cチームとさえ言えるかもしれない)を起用して1-3の敗戦を喫し、グループGを3位の成績で終えたあと、ユン・ジョンファン監督はそう話していた。

「それでも、メンバー全員の力でグループステージを突破したいとは思っていた。そうならなかったのは残念だ」

「我々はACLでの戦いの経験が浅い。だから今日の試合を迎えるにあたっては、選手たちがプレッシャーに耐えられる力が重要であることを強調してきたが、残念ながら我々には十分にそういう力がなかった。グループステージ全体を見てみれば、突破できなかった最大の要因は経験不足だと思う」

●セレッソはACLを重視していたのか

 何食わぬ顔でそう言ってのけられたことは称賛に値するだろう。監督が必要だと感じたその「経験」をセレッソから奪ったのは、監督自身のメンバー選考だったからだ。

 グループリーグ最終節で、2度の大陸王者となったチームをアウェイで撃破するというのがもともと困難な任務であることは確かだ。だがチーム最高の11人を大阪に残してくれば、その任務達成は事実上不可能となってしまう。

 ワールドカップのためのシーズン中断が迫る中、J1各チームの日程が厳しくなっていることは否定できず、情状酌量の余地がある状況でもあった。

 セレッソの試合日程は、3月31日から5月5日までの35日間に11試合が詰め込まれている。この厳しい5週間を通して、1週間に2試合を同じ11人の選手で戦っていくのが不可能であることは明白だ。

 今後のリーグ戦の試合に向け、主力選手たちを温存するというギャンブルに出る価値はあったと考えることもできるかもしれない。ブリーラム・ユナイテッドがグループリーグ最終節の済州ユナイテッドとのアウェイゲームに勝てなければ、セレッソはいずれにしても勝ち進むことができていた。

 しかし、ユン監督がメンバー全員をローテーションすることを選んだのは今回が初めてではない。3月のアウェイでのブリーラム戦でもレギュラーの11人を休ませて0-2の敗戦を喫したことは、結果的には広州恒大戦の敗戦以上に決定的な意味を持つことになった。タイでの試合に引き分けてさえいれば、セレッソはブリーラムを抑えてグループを突破できていたはずだった。この事実は、ACLがクラブの重視する大会ではなかったことを明確に示している。

●“カネ”が象徴するサッカー界の現実

 金銭的な面では、計算をする必要すらない。セレッソはJ1で戦うだけでも年間3億5000万円(約320万ドル)を受け取ることができるが、ACLでこれを上回る賞金(約4億3000万円相当の400万ドル)を手に入れるためには優勝しなければならない。

 一方、J1で優勝すればさらに18億5000万円(約1720万ドル)がクラブの口座に入ってくることになる。2位でも8億2000万円(約760万ドル)、3位でも4億1000万円(約380万ドル)、4位でも1億8000万円(約170万ドル)。昨季に続いてルヴァンカップで優勝した場合にも1億5000万円(約140万ドル)が手に入る。ACLの準優勝賞金である200万ドル(約2億1500万円)と大差はない。

 サッカーの試合では名誉のために勝利を求めるものだという古き良き概念ではなく、金こそが現代サッカーの推進力になるという残念な現実がここでも叩きつけられた。

 ファンはクラブの収支が潤うこと以上に、応援するチームがトロフィーを追い求めて新たな歴史を作ろうとすることに興奮するものだ(そうであると願いたい)。だが、サッカーに関わる異常な金額が抑制されない限り状況が変わることはない。セレッソの敗退のような例は何度も何度も繰り返されることになるだろう。

(取材・文:ショーン・キャロル)

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