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16歳久保、CM出演はまだ早い。過度の期待を背負わせる不安、注目すべきはピッチ上の姿【宮澤ミシェルの独り言】

4/26(木) 10:41配信

フットボールチャンネル

日本代表選出経験も持つ元Jリーガーで、現役引退後は解説者として活躍中の宮澤ミシェル氏の連載企画。第3回は、久保建英について。CM出演に関する報道が出た16歳のレフティーについて宮澤氏が持論を展開。さらに、久保のプレーヤーとしての魅力も語っている。(語り手:宮澤ミシェル)

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●デビュー当時のメッシは先輩たちに守られて、みんなの子どもみたいだった

 FC東京の久保建英が、清涼飲料水メーカーのCMに出演するという報道を見た。個人的には正直、まだ早いんじゃないかと思う。確かに、久保には『バルセロナ』というのがある。サッカーをよく知らない人には引っかかりやすいというか、仮に久保のことはわからなくても「バルセロナにいた子だ」となる。でも今、スター街道に乗せてしまうのは可哀想だなと。

(リオネル・)メッシは17歳でデビューしたけど、ロナウジーニョやエトーといった先輩たちに守られていて、みんなの子どもみたいだったよね。その年代ごとのやるべきことをしっかりやっているから、今があるわけで。若い頃から無理をさせちゃうと良くないし、もったいないよ。

 もちろん久保はいい選手だよ。ただ、プロの世界で継続的に結果を出しているわけではない。何と言うか、まだ隠しておいてじっくり育ててほしい。ちゃんと育てて18歳、19歳になったら露出を増やすようにすればいいと思う。

 ヨーロッパでは10代で出てくるような選手って、例えば(アレッサンドロ・)デル・ピエロもそうだったけど、その時点ですでにスーパースターだから。ネイマールだってそう。日本の10代とはちょっと違う。

 1999年のコパ・アメリカでブラジルの試合を解説していたんだけど、その大会でロナウジーニョが出てきた。彼がピッチに立ったらブラジル人の観客が沸いちゃって。「俺たちのロナウジーニョが出てきたぞ」みたいな。僕は「そんなにすごい選手なの?」って思ったんだ。でも、サポーターはロナウジーニョが次のスターになるというのをわかっている。彼らは物差しとして持っているんだよね。「次のペレはコイツだ」と。僕はそれに感動しちゃって。

 そこからパリ・サンジェルマンに行って、2002年の日韓ワールドカップで優勝。どんどん階段を上がっていって、バルサの時なんかハンパじゃなかった。ああ、スーパースターってこういう風になっていくんだなって思ったよ。ブラジルはその前に怪物の方のロナウドやリバウドもいて、そうやって続いているんだよ。

 僕はそれが言いたいんだ。日本もズバ抜けた選手が継続して出てくるというサイクルが続くようにならないといけない。だから今、久保と言われた時に、まだ早いだろうと思ってしまうんだ。久保本人が背負っちゃって、彼のためにならないんじゃないか。


●久保は賢い。だから背負わされてしまうかもしれない

 僕は高校時代、外国人として初めて国体に出場したんだけど、その時におかしくなりかけたことがあるんだ。日本のルールを変えていただいて、国体に出場できるようになったんだけど、それが決まった時からマスコミが毎日取材に来てね。でも、家から学校まで遠いし、練習があるから帰りも遅いから、取材を受けている時間がないわけ。

 それでどうするかと言ったら、行きと帰りの車の中で受けることになった。新聞社さんの社旗が付いているような車で。ハイヤーでの通学だよ。そうしたら3日目くらいに親父が僕に怒ってね。「何やってんだお前。ちゃんと自転車で行け!勘違いするな。テングになってんじゃねえぞ」と。

 勘違いしてしまうような環境だった。練習が終わったら車が待っている。ジュースだなんだと用意されていて、大人も丁寧な態度で接してきて。そうなると、こっちはどんどん偉そうになってくる。

 国体の本大会も宿舎までマスコミが来ていて、そうしたら対戦相手の選手に「お前か、チャラチャラしてんのは」って。試合中は削られたよ。でも、全国にすごい選手がたくさんいるのをそこで知ったんだよね。こんな奴らが全国にはいるんだと。俺がテレビで見ている、高校選手権の決勝に出るような奴らだ。俺、全然ダメだと思って。それで地元じゃなくて、国士舘大学に進学したんだよね。

 久保は勘違いするようなタイプじゃないだろうし、頭もいいから耐えられるんだと思う。コメントの仕方も上手で、親御さんがしっかりしているんだろうね。もしかしたら、そういう賢さがあるから背負わされちゃうのかもしれない。でも、スターとして注目されるのは、本当に試合でバリバリ活躍するようになってからでも遅くないよ。


●久保のプレー面における最大の特徴とは

 FC東京で、試合に使ってもらっているのはいいことだよね。いいプレーもしているし、選手としてじっくり育ててもらいたい。例えば、筋肉を急につけたりと慌てちゃいけないんだ。成長とともに伸ばしていってあげないと。スピードというのは天性だからプロの世界で出せるのはわかるけど、久保の場合は技術だから。そうすると、どうしても相手の当たりにも耐えなきゃいけない。そこが足りないと思ったらガンガン筋トレをやりたくなってしまう。でも、そうじゃない。今の久保の良さを出しながら、徐々に肉体を成長させていったら、僕らは長く久保のプレーを見られるよ。

 ちょっと、いきなりガッチリしすぎたんじゃないかなと思うね。足の筋肉のつき方を見ていたら、“真面目に”やっているなって。まだ、そんなにやらなくていいんじゃないかと思う。

 ポテンシャルは間違いないし、面白い選手だよ。トラップのフィーリングも、ボールの置き所が素晴らしい。インサイドキックひとつ取っても全然違う。それと頭の良さ、状況判断の良さ。大したもんだね。

 そして決定的な違いは、他の日本人選手が2回触るところを、久保は3回触るんだよ。是非、見てみてもらいたい。トラップしてクッと切り返して、そこまでだったら日本のディフェンダーは逆を突かれたとなって対応する。でも久保は、そこからもう一回触るからその瞬間、一気に剥がされる。そこで相手との間合いを50、60cm離すんだよね。だからディフェンスは行けないんだ。

 久保は他の選手とは感覚が違う。ゆくゆくはバルセロナでプレーしてもらいたいし、将来の日本代表を背負ってくれと言いたい。だからこそ、今はまだピッチ内のパフォーマンスだけが注目される環境であってほしいと思う。

▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。

フットボールチャンネル編集部

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